第54話.真のストラ 7
「おい! なんだ今の速さは?!」
「さすがにきつくありませんか……?」
「遥斗くんたち! 引く判断も大事……!」
「はるくん、つむつむ……!」
4人を囲っている結界から心配の声が聞こえてくる。それに応じるように遥斗はそちらに視線を移し。
「大丈夫です。ただ……ちょっと本気を出させてもらいますけど」
それだけ伝え、遥斗は再び戦いに集中する。
(撤退……? いや、自分の力を試せる楽しい時間だろ!)
「紬! 俺にも魔力眼頼む!」
「オッケー!」
紬はあの技で指先に集めた魔力を遥斗の目に向けて放つ。完璧な調整がされた量で、自分の力ではできなかった魔力眼を使えるようになる。
魔力眼にはただ単に魔力が見えるだけでなく、目の性能──今回で言う動体視力も上昇する。
「お兄ちゃんが魔力眼を使うってことはもしかして制限は……?」
「もちろん無しだ!」
その瞬間、紬から膨大な魔力が溢れ出す。今まで体内に隠し持っていた魔力の全開放だ。その逆に遥斗は魔力反応がほとんどなくなる。本職の剣士に集中するため、魔力をすべて身体能力系統に費やしたからだ。
さらに──。
「そういえばガルムさんたちにはまだ言ってませんでしたっけ。俺の──俺たちの職業について」
「え? いや、剣士と魔法使いだろ?」
「んー、おおもとは同じですけどね。俺の本当の職業は剣聖、剣士の1つ上の職業ですね。紬も職業は魔道士、こちらも魔法使いの1つ上です」
レベルアップ時の上昇幅を上げる”アストラル隠し部屋に踏み入りし者”。
剣術に関連するステータス値を上げる”世界初の剣術使い”。
そして3つ目の称号──”世界初の剣術使い”よりも関連ステータス値を上げる”世界初の剣聖職”。
「魔道士のわたしだってナメたらだめだよ! 魔導領域、失いの間!」
紬が魔道士になると同時に獲得した固有領域。人によって領域の効果が変わるものだ。発動者から最大半径500mまで展開できる。紬の領域効果は──。
「任意のステータス値の半減……もちろん、素早さを下げさせてもらうよ♪」
これがこの兄妹の制限解除状態。
「さぁさぁ覇王さん。まだ狼煙は上がったばっかだぜ?」
兄妹による反撃が始まった。




