第53話.真のストラ 6
そこから2人は少しずつだが、確実にダメージを与えていく。1度見られた手はもう通用しないため、あの手この手と手段を変えながら攻撃を続ける。
何回目か分からなくなってきたころ。
「ハァッ!」
「がああああああああああ!!!」
そして小さな爆発。だが、今回の爆発は300m近いノックバックを食らった。
「おっと……やっとピンチになってきたってところか……?」
「タフすぎるよ……さすが主要ダンジョンのボスだね」
また次の作戦を考えようとしたその時。
「が、がああああああああああああ!!!!!!」
覇王が一際大きな雄叫びを上げる。そして滲み出る魔力の量が更に増加する。
「これってまさか……ゲームである、HP半分削ったら強くなる系のやつか?!」
「そんなのあるの?! ちょっと待って……」
紬は再び魔力を目に集め魔力眼を使う。
「で、でも……今のところは魔力が増えただけっぽいよ……?」
「その強化が魔力だけってことなら、このまま攻めきれば倒せるんじゃねえか?」
「そういうことなの──あっ! お兄ちゃん! 漏れ出てる魔力が全部角に集まっていってるよ!! それも無属性のまま」
「マジか? 俺からは特に何も……いや、濃さが薄くなってる?」
「そうか……! お兄ちゃん、身体能力強化だ!」
「! そういうことか……!」
覇王は角に集めた大量の魔力をすべて身体強化に使った。
「まだその力が完全に馴染む前に攻めたほうがいいんじゃねえか?」
「そう……だね! わたしも魔法を──」
溜めもない、ただ先程までのようにノータイムで300mを突進をしてきただけ。これほどの距離があれば、2人はすぐに対応できる──はずだった。
──気づいた時には、覇王は遥斗たちの後ろにいた。
今のは覇王がどれくらいの速度で走れるようになったか試しただけ。もし今のが直接2人を狙っていたら、かなり危ういことになっていただろう。
(はっ……? いつの間に……?! 少しは油断していたとはいえ、目はそらしてなかった……! 剣術スキルで動体視力も上がっている……。その状態で……まったく分からなかった……?! そんなの、一番最初の突進の速さ超えてんだろ……!)
今の状況をそうまとめた遥斗は紬と顔を合わせ、絶望を分かち合う──などということはなく。
「はっ、面白いじゃねえか……! 1年以上振りの本気モードだ……ッ!」
遥斗は笑みを浮かべた。




