第47話.ストラ 6
兄妹2人は少しだけ離れた位置に移動する。ファイトブルはこちらに目もくれず4人と正対する。4人が高位の冒険者と悟ったのか、機を伺っているようだ。
「そういうことならこっちから行かせてもらうよ。ガルム!」
「はいよ! どっこいしょぉ!」
スーザに名前を呼ばれたガルムは背中に背負っていた斧を手に持ち、遠心力と自慢の筋肉を使い斧を振り上げ、地面に叩きつける。
「中級斧スキル・振動ッ!」
すると、辺り一帯に凄まじい地震が起こる。
「おっと……」
まさかの攻撃方法で想像もしていなかった2人は思わず膝をついてしまう。そしてそれはファイトブルも同じだった。立つことに必死でとてもお得意の素早さを活かした攻撃はできそうにない。
するとファイトブルは少しでも戦いづらくさせるためか、周囲に霧を発生させた。
「リア! 補助魔法頼む!」
「分かりました!」
すかさず次にスーザはリアに声をかける。
「補助魔法・速度強化、鋭利強化、筋力強化!」
「うぅっわ」
遥斗は思わず声が漏れる。そうなるのも頷けるほどの量だ。同時に強化魔法をかけるのにはかなりのイメージ力がいるため、リアは相当賢いのだろう。
スーザは剣を抜き、一瞬にも見える速さで200m近くあった距離を詰める。間合いに入るとすぐに攻撃はしなかった。動けないことは分かっているため、丁寧な動きを挟む。
そして高く跳ね上がる。遠心力、落下速度を攻撃にプラスするためだ。
「中級剣術スキル・刺突、10連撃ッ!」
やりを投げるように剣を構え、そのままの勢いでファイトブルに──結界に刺しまくる。ちょうど10回目の攻撃が当たったとき、パリンと音がなった。
ファイトブルを覆っていた結界が砕け、粒子となっていく。
「いけッ! ミュウ!」
「上級魔法・黒雷!」
ファイトブルの真上に暗雲が出てくる。数回バチッと音がなったかと思うと、特大の黒い雷が落ちてくる。ファイトブルに直撃した。
土煙が消えると、ファイトブルが粒子となって消えていった。
倒せたのを確認して、2人は4人のもとに駆け寄る。
「途中ちょっと見れなかったですけど、ガルムさんがサボり過ぎじゃないですか?」
「いやいや、立派な仕事だろ?!」
「それは僕たちも最近思ってることなんだよね」
「だけど、あの足止め技が強いから責めれないんだよねぇ」
リアも頷きで同意を示す。
「それより、途中見れなかったって何かあったの?」
「実はファイトブルの大群が攻めてきてまして……。おそらくあいつが仲間を呼んだんだと思いますけど、さすがに量が多かったんで俺たちで処理しちゃいました」
「ちなみに何体くらいですか?」
「えーっと……詳しくは数えてないですけど、100はいたかと……」
「え、えぇ……?」
「Cランク100体をあたしたちが戦っている間に……」
「あ、ジェネラルも何体かいたよね!」
「詮索したらいけないのは分かってるけど、ちょっともうきついかもしれません……」
「このタイミングで大量のファイトブル……なるほどね。あの霧は動きを阻害するものじゃなくて、大量のファイトブルに奇襲をさせるためだったのか」
「あいつを相手にしながら大量のファイトブルか……俺の足止めでも多分全員は止めれねえだろうし、確かに選別に相応しい難易度だったわけか」
そんなことを話していると、懐かしのあの声が頭に響いてきた。
『よくぞ選別を突破しました。6人の冒険者に真のストラへの挑戦権を与えます。挑戦しますか?』
「よし! 無事挑戦権ゲットだね!」




