第39話.レイジ 6
「結局19階層まではCランク止まりだったから、Bランクダンジョンってのは合ってそうですね」
「だな。どこのダンジョンも最後で一気に2ランクも上がるなんて聞いたことないからな」
ガルムはここまで本当に何もせず、すべてのフロアボスを遥斗に任せていた。遥斗はガルムが何が楽しいのかさっぱり理解できないままであった。
「最後のフロアボスは、っと。おっ、ケンタウロスですね」
「やっぱBランクだったな」
──Bランクのケンタウロス。高さ3m、長さは4mにもなる巨体ながらも圧倒的素早さ。その勢いのまま振り下ろされる片手剣。当たりどころが悪ければかなり危険だろう。
こいつもリザードマンと同じような戦い方がおすすめされている。
「ちなみに倒せるか?」
「うーん……倒せはしますけど、魔法を組み立てるのにちょっと時間がかかりますね……」
「いや倒せるのかよ……こいつはBランク、遥斗はFランクだぞ……? ……うん、もう触れなくていっか。つまりはちょっと足止めしろってことか?」
「えぇ。いいですか?」
「今回は俺のわがままでついてきてもらったし、いいだろう!」
「なんで上からなんですか……」
レイジ最終階層にしてやっとガルムが動き出す。背中に抱えていた斧──世界でもトップクラスの攻撃力を誇るカイザーアックスを構える。構えるだけでどうせ何もしないだろうが。
その様子を横目に、遥斗は準備を始める。
と言っても、その工程は突風とそこまで変わりない。その量が増えるだけだ。
数十秒後。
「ガルムさん! 準備できました! 下がってきて下さい!」
「おう! って、すごい魔力量だな!?」
ガルムはすぐに戦線離脱する。ガルムが攻撃範囲外まで移動したことを確認してから、遥斗は魔法を放つ。
「上級魔法・風皇衝撃ッ!」
唱えると同時に、ケンタウロスの上から強風が吹く。その力は凄まじく、圧力となり襲いかかる。
およそ、10万hPa。
Bランクの魔物でこれを耐えるのはかなり厳しい。
ということで──。
「よしっ! レイジ、完全攻略ですねっ!」
「もう、なんも触れねえからな……」
ガルムは呆れながらも、出現した魔法陣をくぐり、外に帰ってくる。




