第31話.巨体の男
午前8時。長旅の疲れもかなり癒えてきた遥斗は、紬を起こさないように朝食を買いに行こうと部屋を出る。すると、いた。
巨体の男が腕を組み、視線を下に向けながら、壁に寄りかかっていた。扉が開いたことに気づいた男は顔を上げる。当然、目が合う。
「「……」」
遥斗は寝起きの頭を全力で働かせているための無言だが、巨体の男──ガルムはニコッと歯を見せて笑いながらの無言だ。
巨体の笑顔を見て頭が冴えてきた遥斗は、同じく満面の笑みを浮かべる。
そして、体を90度右に向けて歩き出す。見なかったことにした。明らかに面倒なことになりそうだったからだ。
もちろん、それをガルムが見送るわけもなく、遥斗の肩に手を置く。
自分の体がびくとも動かなくなった遥斗は、後ろを振り向きまた満面の笑みを向ける。ガルムもそれに笑みを返す。
──遥斗は”アストラル隠し部屋に踏み入りし者”の恩恵を受けた534レベルの筋力値が許す限りの力をすべて使い突破しようとする。
勝算はあった。肩を掴まれた瞬間、ほんの少しだけギアを上げてみたところ、かすかにだが動けたからだ。
遥斗が全力を出したところ、大分楽に前へ動くことができた。
──だが、ガルムが常時発動している特殊スキルもまだ全力ではなかった。遥斗の異変に気づいたガルムはすぐにスキルの出力を上げる。
またしても動けなくなった遥斗は、肩をガックリと落とし全身から力を抜いていく。
そして、もう一度ガルムを見てニコっと笑う。
「おはようございます、ガルムさん! どうしたんですか?」
「いやなかったことにはできねえからな?!」
「まぁまぁ、それは一旦置いておきまして。本当にどうしたんですか? こんな朝っぱらから」
「俺らのパーティーのストラ攻略を始める日程が決まったんだが、それまでの1週間くらいが暇なんだよ」
遥斗の嫌な予感は見事に的中していた。
「今日このあと、一緒にダンジョン行こうぜ!」
本日、異世界恋愛の短編を投稿しました。
題名は、
『恋する』って、なんですか? 〜感情をなくした王女サマと幼馴染イケメン貴族サマが送る余命1週間の恋物語〜
です!
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