第26話.魔宝石
「ふ〜っ! やっぱり魔法撃つのが楽しいね!」
「おっ、魔法陣が出てきたってことは、このダンジョンは攻略ってことでいいのか」
ダンジョンに入りわずか30分。公にされている中では、ファスト攻略パーティー8組目の誕生だった。
「これ攻略くらいがFランク卒業レベルなのかな?」
「多分そうなんじゃね?」
しかし、そんな事実を知らない2人は大きく勘違いしていることに気づかないのであった。さらに言うと、2人は隠し部屋で学んだ技術を普通の冒険者よりちょっと強い程度にしか考えていなかった。
そうして魔法陣に入ると、光に包まれ、収まるとファストに入ってすぐのところについていた。もともと人が少ないため、周りに他の冒険者はいなかった。
そして、次にダンジョンから出るための魔法陣をくぐり、外に出てくる。
「あれ、さっき行った兄ちゃんたちじゃねえか!」
すると、ダンジョンに入る前にも話した人が声をかけてくる。
「えらく早いじゃねえか!」
「えぇ、まぁ。(このダンジョンを攻略するのは)そこまで難しく無かったですからね」
「(スライムを倒すのが)難しくなかったのか?! お前らビギナーにしてはやるようだな! ちなみに魔宝石は落ちたか? あるなら買い取ってやるが」
「「魔宝石?」」
2人はサラからも聞いていない情報に首を傾げる。
「あぁ、魔宝石ってのは魔物を冒険者が倒したら、一定確率でドロップするらしいぜ。だから自然死とかだと何も落とさねえけどな。ここのスライムは50%くらいの確率で落ちるらしくて、1個1000円で買い取ってやるよ。ちなみに、ボスになったらもっと確率は上がるらしいぜ」
「え、そうなんですか? (ボスを)3体ほど倒したんですけど、何も落ちなかったですよ?」
「へぇ! お前らこの短い時間で(スライムを)3体も倒したのか! ま、確定じゃないからどんまいとしか言えねえな」
「そうですか……」
仕事を失った今、遥斗は貴重な収入がほしい状況だったため、さらに落ち込む。
(ボス以外も大量に倒したのにな……偶然かな)
そう思った遥斗だったが、これは偶然ではなく必然だった。
魔物を蹂躙したあの技。ダンジョンにある魔素を集めて打ったものなため、魔宝石のドロップ条件である冒険者を満たしてなかったのだ。




