第15話.1ヶ月が経ち、再び地上へ
模擬ダンジョンができてからは、遥斗の剣術訓練が始まった。
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「──……遥斗さん、遥斗さん! 紬さんも外に出る準備ができたみたいですよ!」
──と、そこまで思い出したところで遥斗の耳にサラの声が届く。
「ん、あぁ分かった。俺もすぐ向かうわ」
隠し部屋での特訓が始まってちょうど1ヶ月。
サラが集めた情報によると、アメリカがダンジョンに即座に対応し、それに続くように日本含め多くの国も次々と対応していったようだ。
さらに、世界規模のギルドも作られ、早くも職業選択肢に【冒険者】ができたらしい。
この1ヶ月で世界が集めた情報はこうだ。
まず、世界規模の大地震──今では世界地震、という名称がついたらしい──によって、大きなダンジョンが7つとそれと比べれば小さいダンジョンが無数に発見されたようだ。
すぐに調査に行った軍によると、その中にいた謎の生物、魔物には現代兵器がきかず、剣などの攻撃は効くことがわかった。そして、アメリカの研究チームにより、魔法が発見された。
最後には、無数にあるダンジョンを軍だけが調査するのには無理があると判断され、ギルドや冒険者が作られたようだ。
さらには、もうすでに冒険者としてダンジョンに潜り始めている者もいるらしい。
「……う〜ん、模擬ダンジョンではレベルが上げられませんでしたから、亜空間収納に武器しか入れられないのがもどかしいですねぇ……」
「ま、今はこれさえ持ってっとけばなんとかなるしいいだろ」
「それもそうですね! あっ! そういえば前にこの部屋を掃除していたら、こんなものがありましたよ!」
そう言って、サラが見せたのは遥斗の通帳だった。なぜかこれは消えなかったらしい。
「まっ、マジで?! こ、これがあれば、地上でまたアパートくらいなら住める……!」
「これでしばらく地上での生活も大丈夫だねっ!」
遥斗は通帳を大切に、大切に残り少ない容量の亜空間収納にしまう。
「最後に確認するけど、しばらくサラは思念会話できないんだよな?」
「えぇ。本来、1ヶ月も活動するように作られていない体なもので……。ここに来たらまた話せますので、余裕ができたらまた遊びに来て下さい!」
「隠し部屋に遊びに行くとか約束できるの、きっとわたしたちだけだよね……」
そう、この理由でしばらくサラと2人は地上で話せないのだ。しかし、2人とも既にこの話も聞いていたため、特に驚くことはなかった。
そして、別れのときがやってくる──。
「それじゃ、またな!」
「生活が安定してきたら、絶っっっ対、会いに来るからねっ!」
「はいっ! 楽しみに待っています! それでは遥斗さん、紬さん! また!」
──世界地震発生から1ヶ月後の午後2時。兄妹は地上での生活を始めるのだった。




