第14話.模擬ダンジョン
「では、遥斗さんはそろそろ剣術に入りますか!」
「え、魔法の特訓まだちょっとしかしてないけどいいのか?」
「えぇ、そもそも遥斗さんは剣術メインにしようとしてますし、魔法の成長速度が化けもn……すごかったので!」
「今化け物って言ったよな?」
「それにですね!!! 実は剣術スキルはレベルを上げる方法が魔法と少し違いまして、こちらの方が時間がかかるんですよね」
遥斗は強引に話をそらされる。
一旦その話は置いておき、どうやら剣術スキルは魔法より難しいらしい。
「難しい、というよりは、この場所だから厳しいというのが正しいですね」
「つまり……剣術スキルは経験を重ねることが必要、ってことか?」
「理解が早くて助かります!」
つまりはこういうことだ。
魔法はイメージ力を高める──要は反復練習して感覚を掴んでいけばいいが、剣術は素振りなどではだめで、実際に魔物を倒すことでしかレベルを上げれないということだ。
そしてここは、隠し部屋。魔物など湧くわけがないのだ。
「ってことは、レベル上げ不可能、なのか?」
「チッチッチー! 遥斗さんはどうやって剣術スキルを手に入れたかもう忘れたんですかー?」
「どうって……サラに急に引き寄せられて、何がどうなっているか理解できない状態で体が動けなくなって、理魔法とかいうヤバそうな魔法で殺そうとしたスライムを俺が倒して……あっ! この方法ならいけるってことか!」
「悪意のある説明じゃなかったですか?! 否定する場所はないですけど……。っと、話がそれましたね。遥斗さんの思いつきは半分正解です!」
サラが引き寄せた魔物を遥斗が倒す、というので半分正解らしい。
「そんなのサラがめんど……大変じゃないですか!」
「本音が漏れてたが、まぁそうだな」
「ですので、結論から言うと遥斗さんにしてもらうのは《《模擬ダンジョン》》です!」
「「模擬ダンジョン?」」
魔法の練習を頑張っていた紬も、模擬ダンジョンという言葉が気になったらしく、こちらに来る。
「そうです! サラが別のところにあるダンジョンをコピーして、そこにいる魔物を倒すことで剣術スキルのレベルを上げてもらいます! 魔物もコピーなので自身のレベルを上げることはできませんが。かわりと言ってはなんですが、遥斗さんが死ぬこともないです!」
もちろん、こんな芸当は普通の人にはできない。
「へぇ。ってことは、剣術レベルを上げつつ実戦経験もつめるのか」
「そうです!」
「なにそれ! わたしもあとでやってみたい!」
「では紬さんも魔法の特訓の息抜きがてらにやってみて下さい!」
「うんっ!」
それだけ言うと、サラは両手を前に向け、目を閉じる。おそらく、コピーを始めているのだろう。さすがのサラでもかなりの集中がいるようだ。
「あ、すいません。もしかしたらコピーの工程でうるさいかもしないので、一応耳をふさいでおいて下さい」
「ん」
「はーい!」
──《《嘘である》》。
ダンジョンのコピーともなると、さすがに無詠唱ではできないのだが、この魔法を2人に聞かれてはいけないからである。
サラは細心の注意を払うべく、遥斗たちに背を向ける。そして──。
「──……システムスキル・不可能複製」
限界まで小さくした声で呟く。
ちらっと後ろを確認したり、心を読んだりしてみるが、気づいたようすはなかった。
なので、あとはコピーに専念する。実際に大きい音を鳴らしてカモフラージュしながら。
そして数分後。
「……できました。もう大丈夫ですよ!」
「実際にあんな音なるんだな」
「それ思った! わたし、サラちゃんが何か隠すためなんじゃないのかなーって思ってたら、ほんとにあんな音なるんだねっ!」
サラは紬の言葉にかなりドキッとすると同時に、バレてなかったことに安堵する。
「最後にこうして……よしっ! では出入り口を隠し部屋への入り口の隣に作りますね!」
そう言って入り口の左側に右手を向ける。と、そこに黒いモヤができる。
「これが入り口か……」
「では遥斗さん! これから剣術スキルの練習がんばってくださいね!」
「おう!」




