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【3章完結】自宅が最難関ダンジョンの隠し部屋になった件〜隠し部屋で最低限学んだスキルは、どうやら地上では強すぎるらしい〜  作者: もかの
第2章.万物を焼き尽くす翼

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第112話.アナスターシャ 14

「え……アンデッドになったウィザード……?」


 スーザがここまで驚いているのにはちゃんと理由があった。


『特異種』と一口に言っても、その種類は数え切れないほどある。羽が生えたゴブリンや足の早い兎、巨大化した蜂などがいるように、それぞれバラバラの特徴を持っている。


 そのうちの1つがこのアンデッドだ。


 一般的にアンデッドへと変化した魔物は、身体能力の大幅な上昇や再生能力の獲得といったさまざまな強化が入る。何より厄介なのはやはり、異次元の再生能力だろう。


 腕を切られ、足を切られ、首を切られても、なんどでも再生する。再生するたびに能力が弱くなるといった弱体化はなしに、だ。再生速度はそこまで早くないというのが、せめてもの救いである。


 アンデッド化した魔物は超高火力の魔法で消し炭にするか、近距離なら再生される前にさらに切り刻むことで倒すことができる。


 しかし、身体能力等ステータスが大幅に強化されているアンデッドに近距離に近づき切り刻んでいると、魔物を倒す前に攻撃者が死んでしまう。

 そのため、魔法で倒すのが一般的である。


 ──相手がウィザードでなければ。


 魔法使いが役に立たなくなるウィザード。そんなやつがアンデッド化なんてすれば、いくらスーザでも絶望のあまり声が漏れるだろう。


「……どうやって倒せばいい、のッ!」


 飛んできた3つの上級魔法と思われる火球を切り裂きながら、スーザはホリーに問う。


『さぁ?』

「さぁ!?」

『それが分かってたら俺らも前回負けてねえしな』

「それもそうだね……」

『まあただ、今回はこいつの狙いがあの兄妹にいかなければいいだけの持久戦だろ? それなら俺たちでなんとかなるだ、ろッ!』


 全員の頭上にせまっていた巨大な水の塊を、その大剣で一刀両断し、7人の横にその水が落ちる。落ちた水で足が浸る前に、ミュウから漏れ出ている魔力に火属性を練り込み、水を蒸発させる。


 スーザたちの話も一段落つき、またお互いが睨み合う形になった。どちらも魔力を練る様子は無いが、隙もない。スーザやホリー、ガルムやブライトのタンクなど、近接担当が動けばすぐにられる。そんな空気が漂っている。


 だが、そんな状態が長く続くことはなく、ウィザードの魔法で闘いが再開された。


 ウィザードが右腕を前に出したかと思うと、中級スキル・炎矢ファイアーアローが無数に現れる。そして、一斉にスーザたちのもとに降り注ぐ。


 だが、スーザたちもなすすべなくこの攻撃を受けるはずもない。ブライトのタンクが7人の前に立ち、挑発系統スキルを使いながら大盾を構える。


 ブライトレベルの挑発系統スキルともなれば、敵の攻撃を全て引き寄せられるものだが、ウィザードの攻撃がそんな簡単に防がれるわけがなかった。


 半分ほどの炎矢ファイアーアローはタンクに引き寄せられたが、残りの半分はまるで意思を持ったかのようにうねり、他の6人に向けて飛んでくる。


 ブライトの魔法使い2人とミュウはそれらをすべて撃ち落としつつ、隙を見つけてはウィザードに攻撃魔法を撃つ。

 しかし、それらの魔法は例外なくウィザードの魔力障壁に弾かれてしまう。上級魔法も、だ。


 高レベルな魔法の撃ち合いの最中、ガルムによる妨害を挟みつつ、スーザとホリーを含めた3人は近距離での攻撃を試みてみる。

 だが、ある程度の距離まで近づくと、水魔法による質量攻撃が繰り出され、これ以上近づくことができなかった。

 アンデッド化したことで魔力総量だけでなく、魔力操作の技術も上がっているようだ。


「……やっぱり、倒すのは無理か……」

『だな……魔法使いのおかげで耐えることはできてるが、その魔力もいつまで続くか……』


 スーザはちらりとミュウに視線を向ける。しかめているその顔に汗が流れていた。


「あいつの魔法、一つひとつが重たくてッ! 相殺するのにも結構強めのを撃たないといけないんだよねッ! 魔力ももう半分くらい使っちゃってる」

「……だよね」


 ──スーザには、数日前に実践レベルにまで使えるようになった必殺技がある。しかし、一度でその魔力のほとんどを消費し、二刀流スキルも強制解除させられるほどの代償からまだ使うのをためらっている。

 ウィザードを倒したところで、また現れないとは限らないのだ。その時に二刀流スキルがなければ、おそらく一瞬で壊滅させられてしまうだろう。


(……でも、使う覚悟はしておいたほうがよさそうだね……)


 遥斗くん、紬ちゃん──ッ! 頑張ってくれッ!


 そう願いつつスーザが視線を上に向けると、フェニックスの上に電気を纏った巨大な水が浮かび上がっていた。それがだんだんと下に落ちてくる。

 フェニックスはさすがの速さでその攻撃を避けるが、水は止まることを知らずに速度を増して落ちてきていた。


「……ホリー。あれは僕の幻覚じゃないよね?」

『安心しろ。俺にも見える』

「『…………』」


「『全力で走れええええええ!!!!』」


 上空を指さしながらホリーとスーザはそう叫んだ。突然のその声に驚き、5人は2人の方を見る。そして、指の指す方向に視線を向け──。


「「『『『んぇ?!』』』」」


 と声を漏らしつつ、ウィザードと距離を取るように全力で走り始めた。

 ウィザードは3人の魔法使いからの魔法がやんだことで、にやりと笑いながら一撃必殺の魔法を撃つための魔力を練り始めた。


 ──その途中で、上から落ちてきた水の塊に押しつぶされた。


「……あ、ウィザードの魔力反応消えたよ」


 いかなる魔法も受け付けなかったウィザードの魔力障壁は、たった一回の水魔法──おそらく紬が撃ったであろう魔法の前では無に等しかった。


「『ばけもんかよぉ……!』」


 地上ではスーザとホリーの、弱々しい勝利の声が響いたのだった。

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