第105話.アナスターシャ 7
ホリーは【11人で挑みますか?】となっているのを確認した後、【YES】の文字に触れる。
すると、足元にあった魔法陣がさらに強く光出し、全員の視界を奪う。
光が落ち着き、少しづつ目を開くと、目の前には草原が広がっていた。しかし、上を見上げてみると石造りであることから、草原というよりもただ地面に草が生えただけ、という表現の方が正しそうだ。
左右に視線を向けると全員揃っていることから、ホリーが言っていたようにデクシアみたくバラバラになることはなかったようだ。
「ここの部屋はたしか──」
遥斗が事前に言われたホリーの言葉を思い出そうとそう口にすると、突然風が吹き始める。
それと同時に光の粒も前方に集まってくる。一際強く光ると、そこには先程も見たばかりであるクイーン・ビーブラッドと通常種の群れがいた。
それだけならデクシアと何ら変わりない。だが、決定的に違うことがあった。
近くの何もいない草むらから、小さくカサッと音が鳴る。
「──アリステラとデクシアの合成みたいな部屋、でしたっけ?」
草と草の僅かな隙間から、キラリと光るスターラビットの姿が見えた。
『あぁ。これがまた厄介なんだよな……』
「でも、逃げ回るだけじゃないの?」
『いや、あいつ単体なら何もできないから逃げてるだけで、本当の能力は──』
そんなことを話していると、一匹のビーブラッドが11人の下へ突撃を始めた。それぞれの間にはかなりの距離があったため、まだ詳しい能力を聞いていないブライト以外の6人は余裕で避けられると──油断していた。
気づいたときには、目の前にビーブラッドの針があった。
「「「な……ッ!!」」」
遥斗とスーザはギリギリで回避が間に合う。紬とミュウは目の前の一点重視で魔力障壁を展開すれば防げるだろう。
しかし、重量級であるガルムとサポーターであるリアはおそらく避けられない。
6人全員がそれに気づき、遥斗、スーザはそれぞれ現時点で出せる最大火力で跳ね返そうとし、紬、ミュウは最硬度の魔力障壁を2人の前に届くように展開しようとする。
が、その行動を嘲笑うかのように、突撃が炸裂する。
──と思われたその瞬間、謎の重力で押しつぶされたかのように、突撃よりも先に地面に叩きつけられる。
その衝撃で辺りに大きな振動と砂埃が舞った。
砂埃が晴れると、ビーブラッドは光の粒となって消えていっていた。
先程までビーブラッドがいた場所には、大剣が突き刺さっていた。
『──おいおい、油断しすぎじゃねえか?』
ホリーはそう言いながら、大剣を地面から抜き取る。
──大剣使い、ホリー。大剣を使っているとは思わせないほど機敏に動き回り、重い一撃を相手に食らわせる。
「……すまない。助かったよ」
『ま、初見だししょうがないぜ』
「それにしても、あの速さはいったい……?」
デクシアとは天と地ほどの差がある速さに、遥斗は疑問をぶつける。
『あれこそがスターラビットの本職だ。あいつはいわゆる──バッファーだ』
リアのように、攻撃力や素早さをサポートするスキル──バフを使う者たちを、バッファーという。
さらにホリーは、衝撃の事実を述べる。
『先にスターラビットを倒さない限り、プリンの攻略──クイーン・ビーブラッドの討伐は厳しいと思ってもらっていいぜ』




