第102話.アナスターシャ 4
兄妹が特異種を倒した後、1時間もたたない内に強靭な刃・ブライトの2チームも討伐を終える。
ホリーたちブライトは、何度も戦ったことのある敵だったのもあり、兄妹のすぐ後に討伐を完了した。
強靭な刃は、完全初見ではあったが、そこはさすがは日本最強パーティーである。すぐにコツを掴んで突破した。
そうして11人は中央の部屋に戻ってきた。そして、そのまま右の部屋──デクシアへと向かう。
事前にホリーに聞いた話によると、この部屋ではスターラビットとはまた一風違った魔物が出てくるらしい。
「たしか……でっかい蜂、でしたっけ?」
『ああ、ビーブラッドっていうBランクの魔物の特異種版だ』
「移動がはやくなるの?」
『まあちょっとははやくなってるとは思うが、それよりも火力がバグってるんだよな』
「あれ、でも序盤の方は無傷でいったんじゃなかったんだっけ?」
そう、驚くことにホリーはアナスターシャのボスとその1つ前の特異種以外、一切の攻撃を喰らわなかったという。
逆に言えば、そんなホリーですら片腕を失うような魔物がいるとも言えるが……。
『まぁ……見たらすぐ分かると思うぞ』
「「「?」」」
ホリー詳しくは語らないまま、11人はデクシアへと転移した。
☆
草原だった。そこに、ポツンと光る蜂がいた。
遥斗が周りを見渡すと、紬以外にいなかった。なるほど。ここはパーティー戦、ということか。
兄妹はさらに注意深く周囲を確認する。そして、他9人がいないことを確認すると、再度ビーブラッドに向き直る。
「そういえば紬」
「ん?」
「俺も新しい魔法使えるようになったんだよな」
「え、そうなの!? なんか剣術スキルはどんどん増えてるなぁって思ってたけど、魔法も手に入れてたの!?」
「ま、魔導剣をさらに強くするためにも開発した魔法なんだけどな」
そんな話をのんびりとしているが、もちろんビーブラッドは待ってくれない。持ち前の速さを活かして、兄弟のもとに突っ込んでくる。
そして、兄弟の下に届いたのは、木っ端微塵に切り裂かれたビーブラッド、と思われるものだった。そのものも、光の粒となって霧散する。
「それが俺の新しい魔法。上級魔法・風皇空斬だ」
「すっご……どうなってるのこれ……。空気を固めて尖らせてる……? そのとげとげが大量に設置してあって……だからあんな感じに切り裂かれるの?」
「くそうドヤ顔で解説してやろうと思ったのに」
魔法はイメージの世界とよく言われるが、今遥斗がやってのけたこの魔法は、常人には理解しても再現することは不可能であろう。
誰が、『空気の形を変える』などと想像できるであろうか。
しかし、まだ戦いは終わったわけではない。
先程切り裂いたビーブラッドの光の粒が消え去ると、少し離れたところで光の粒が発生する。今消えたビーブラッドの光の粒よりも、格段と多くなっている。
少し時間が経ち、その光の粒が集まると、ビーブラッドが複数体とそれらよりも少し大きなビーブラッドが出現する。
クイーン・ビーブラッド、女王蜂である。このデクシアで達成する条件は、あいつの討伐だ。
「あっ! あの語呂悪いヤツだ!」
「言ってやるなって。そんなんご本人サマが1番理解してるって」
「いやだって、クイーン・ビーブラッドはさすがに呼びづらい……ぷぷ」
女王蜂もランク的にはBランクであるが、ほかのビーブラッドを統率してくるため、一気に難易度は跳ね上がる。
そんな相手を前にして、紬は全力で笑いをこらえているのだ。堪えられてない気もする。
『〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!』
……明らかに、クイーン・ビーブラッドが怒っている。そして、仲間と意思疎通をしたのか、ビーブラッドが一斉に襲いかかってくる。
しかし、風皇空斬に気づいたクイーン・ビーブラッドは仲間の進行をやめさせる。
「うーん、やっぱ魔法として使うには、まだ魔力の揺らぎが大きすぎるかぁ」
「あ、そっか。魔導剣のため〜とか言ってたね」
「そうなんだよなぁ……。魔導剣として使ったらほら」
──遥斗の姿が一瞬にして消え、それとほぼ同時に全てのビーブラッドも光の粒となって消えていた。
「──こんな感じに切れ味抜群なんだよな」
「ま、お兄ちゃんは剣術が専門だから、それでも十分すぎるんじゃない?」
「それもそうだな」
こうして兄妹は、雑談の延長線上のような形でデクシアの条件を達成した。




