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幻影道R 第八巻   作者: SAKI
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「それでも私は前を向く」 その5

「・・・」


 ユイさんに久し振りに殴られた、出会った時は早すぎて見えなかったけど今度ははっきりと見えた。


 痛い、でもこの前の痛いは腹が潰れるほど痛かったのにどうして平手打ちされた方がもっと痛い。


 胸が締め付けられ、大切な人の前で情けない態度を見せてユイさんの視線が痛い。


「・・・殴られないと判らない?」

  

 無表情なユイさん、でもその瞳の奥にはつまらないなくて下らないと言っている。ついにはユイさんにまで嫌われちゃったか。  


「・・・・・・・・ごめん」


 愛想笑いも空元気も湧かない。ユイさんは初めて会った時の冷酷な眼差しで見つめている。


「・・・呆れた」


 ユイさんは軽蔑した目でもう二度と会いたくないと言いたげな顔で病室から去って行った。


「私・・・何やってんだろ?」


 病室でぽつり頭を悩ませる。 


 ・・・・何も思いつかない・・・私は不甲斐無い自分に嫌気が差して自分を傷つけようとしたが間違って左手の力を誤って暇な時に読んでいた本をひっくり返して叩き落としてしまった。


「あっ、嘘・・・!!」


 花瓶も近くに置いてあったのが叩いた時に本に被せるように落としてしまった。


 幸いにも花瓶は下に置いておいた服が枕になり無事だったが零れた水が本全体に濡れてしまった。


 今日水を上げた本人がエミちゃんだったからか水分がたっぷりにしていたのを思い出して必死でととある本の探した・・・だがそれも全滅していた。


「最悪・・・乾かせば使えるやつあるかな?」


 ユイさんが最初の頃に頭が悪いから本でも読めと差し出されて一度も見たこと無い本だからこの機に読破してやろうと持って来て貰ったのに、今日はツイてないや。


 だが案の定本は全部全滅していた。私は更に落ち込みが増して胸の中が少し熱くなってしまった。


「・・・ぐす・・・・」


 私、本当に駄目だ。ちょっとツイてないだけなのに・・・こんなんでリーダー名乗っていたんだ。


「・・・ん?何これ?」


 やっぱり涙が出ない、仕方無く項垂れた身体を鞭打って本を回収していると一冊だけ本が無事なのを見つけた・・・が厚みにしては薄いような?


 どちらかと言うと日記?みたいなのかな?


 私はその場に座り込み誰か知らない人の物語を盗み見ることにした。

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