「墜ちた心」 その5
「えっ―――― 私――― 何やって?」
あんなに憎悪が湧き出ていたのに炎が鎮火したように消えると私の怒りはどこにもなかったかのように正常に戻った?
何で私ユイさんに憎悪を?何で私ユイさんを殴ったの?何で好きな人を罵ったの??私はそんな生活が好きだったのに??
「ゆ、ユイちゃん」
私は馬乗した身体を起こして近くに座り込んでユイさんの顔を膝に乗せる。
「・・・・」
顔は大きく腫れて顔面が凹んでいる、頭は恐らく割れて・・・死んでいる?
と思ったがユイちゃんは顔を回復魔法を使ってグロい見た目からマシになった。
「良かった、いつものユカリちゃんよね?」
ユイちゃんの声に私を恐れていない、軽蔑も憎悪も感じない。ただただ優しい顔をしてズタボロにした血まみれの手で頭を撫でた。
「私・・・・私!!」
もう何もかも遅い、私は狂い火を再発したんだ。きっと神様が私の日頃の素行や日和見を嫌って呪いをかけたんだ。
私はそう思っている、だけどユイちゃんはそんな私を赦したんだ。
「良かった、狂い火が再発した時、どうしたらいいか分からなかったから・・・もう一度確認するけどユカリちゃんよね?」
ユイちゃんは優しかった、私は・・・今度は目が熱くなる、やっぱり私はリーダーに向いてないや。
「ユカリちゃんは私達のリーダーなんだから泣かないで」
「・・・ぐす、リーダーになんてなれないよ」
私はリーダーになれない、私なんかリーダーなれるはずない、ユイちゃんの方がまだリーダーの素質があるよ。
「ううん、君じゃなきゃ無理よ」
「私・・・皆に迷惑しかかけられないし、能力だって素質だって・・・ユイちゃんを殴ったみたいに狂いがまた再発するかもしれないんだよ!?」
視界がどんどん熱くなり手を覆うとポタポタと泣きじゃ崩れる、そしてまた胸が熱くなる。私、泣く事が出来ないのに・・・これが涙?私、泣いてる?
また再発しちゃう、また攻撃しちゃう。
「ユカリちゃん・・・」
狂い火がまた燃え上がる、でも何故かそれは憎悪を感じず、悲しみや私に対する自己卑下や怒りが混じったものが一気に込み上げる。
狂い火になった私は恐らくもう元の私に戻れない、このまま死ぬまで燃え続けて死ぬんだろう。
私は失意や後悔、虚無が纏まり生きることすらどうでも良くなってしまった。
狂い火には喜怒哀楽によって過激になるものでもあるのだろうか?
「バカ」
訳の分からない感情に振り回されててんてこ舞いの心は最早私の意思と乖離する。
今度は自殺しようとした私に一気に温もりがそれを塞ぐ。
「ほら、そんな寒そうにしないの、私が君を何度でも生き返らせてあげるから」
えっ?そう言えば何だか体温が急激に下がったような?
「ユイちゃん、私・・・熱かったのに寒いよ」
「うん、ならいっぱい抱き締めるね」
やめて、こんな茶番に付き合わないで、きっと頭がおかしくなったんだ、私が変な人間だから。
でも死にたくてもそれ以上に温もりが嬉しくて泣いても雨のように止まない。
「ユイちゃん・・・もう私のあい―――― 」
「うるさい」
「えっ!?」
「ユカリちゃんはそんな事言わない、狂い火なんて知らない。ユカリちゃんを悲しませる奴は私が消す、ユカリちゃんを返して、あの朗らかで優しい笑顔をしたアホでバカでマヌケで脳味噌が足りない無駄に夢の理想値が高い最高に可愛くて私を変えてくれた嫁を返して」
ちょっとユイちゃんディスりが酷くない!?私結構ナイーブになってるのにネガティブが加速しちゃうよ!?
「返して」
「いや返ってるから!ユイちゃん私の事そんな風に思ってたの!?」
「やだ、まだ収まってない!」
「いや本当に!本当に戻ってるから!!?」
苦しい苦しい!!?ただでさえ巨乳だから苦しいのに殺す気かこの人!?
「お、お願いだからし、死ぬぅ」
「ほら!やっぱりまだ戻ってないのね」
「そんな訳ないじゃん!!早く助けてこのお馬鹿!」
ある意味半殺しに遭った私はいつの間にか狂い火は消えてなくなり抱き締めという新たな殺害方法に耐え切れずユイちゃんのおっぱいを揉むと可愛い声をあげて解放してくれた・・・いや・・・疲れもあって気を失ったからある意味では良かったのかもしれない。
「ありがとう、ユイちゃん」




