徒花と死の花の章「子虚烏有の物語」 その2
私はユカリちゃんを引き連れ簡単な依頼を受けた。
その依頼はごく普通の素材を採ってきて欲しいという絶対冒険者らしくない依頼だった。
「これ、ユイさんが頑なに断っていた依頼だよね?」
ユカリちゃんが見せたそれは人との会話を大事にする依頼。生きていた中で人とのコミニケーションは一番苦手で億劫になっていた。
「別のにしない?」
「私がいるから平気だよ」
なんかムカつく、ユカリちゃんって私と比較して言うからか言葉が冷たい。私の言葉虚しくその依頼を受けてしまった。
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「あーそれね!最近は肉が欲しくてね〜この近くにある生命の森にあるセイシシの肉とマンマルキノコを採れるだけ採って来て欲しいんだ〜」
その依頼主はフェルトさんという鍛冶屋を営んでいるお姉さんだった。中々気さくで話しやすいから依頼内容の詳細にはそこまで時間は有さなかった。
「・・・知りあい?」
依頼を受けてユカリちゃんは大きな麻袋を受け取ると鍛冶屋から離れるとすぐ近くに寄る。
「ううん、初対面だよ?」
「そう、あまりにも早かったからてっきり知人かと思ったわ」
この子は本当に誰とでも仲良くなれる気質があるみたい、話すのが苦手だから助かるわ。
「話しやすかったからかな?」
「いいわね、生徒だったから?」
「それは関係無いかな?私なんて落ちこぼれだし周りに馬鹿にされてもアスカちゃんとの夢の為に頑張ってたんだから、結局今はこっちの方が気が楽で冒険者になって良かったと思ってるけど」
「ふーん」
興味なさそうに踵を返すとちょっとだけ私について聞いてみた。
「私の存在って必要あったのかしら」
その言葉にユカリちゃんは素直に返した。
「うん、ばったりユイさんに出会い頭に殺されかけて身分全部焼かれてなかったらまだ落ちこぼれのままだったかもしれないね!その点においては私はユイさんに感謝してるしいつも“ドン底から助けてくれてありがとう”って言えるよ?」
「・・・変な子ね」
「ユイさん程じゃないよ?」
「わ、私も変な人?」
「うん?」
正直に言われると少しむず痒いわ、素直というか馬鹿正直というべきか。
「やっばりユカリちゃんが一番変な子よ」
「今から喧嘩する?」
その後少しだけ喧嘩することにしたが口では勝っても手が出たら一切躊躇無く謝って負けたユカリちゃんであった。




