50話、幽霊屋敷
俺の工房兼店舗候補の物件に入る。扉の金具が錆び付いるのか、ギィィっと音が鳴り響く。
外見もそうだったが内装もボロボロで、これはリフォームのしがいがある。
「これでは幽霊以前の問題じゃないか?ここまでボロボロだと」
「すみません。管理しようにも幽霊騒動で誰もしたがらず……………そのぉ…………私もその1人です」
セシリーが申し訳ございませんと頭を下げようとしたがカイトはそれを止めた。
「いや、ここが見たいと言ったのは俺だ。それに俺は錬金術師だ。この程度どうとでもなる」
それに、その幽霊とやらにも興味あったし。上手く行けば、新しい従業員ゲット出来るかもしれない。
~出ていけぇぇ~
「うん?セシリーさん、何か言いました?」
「いいえ、私は何も」
~出てき行けぇぇぇ~
「聞き間違いじゃないみたいだ」
「はひっ!こ、この声です」
~出て行けぇぇぇ~
「悪いな。この物件を買う予定なんでな。出て行く事は出来ない」
~ならば、呪いに掛かるぞぉぉぉ~
「それも悪いな。俺には、ありとあらゆるデバフは効かないんだ。そのお陰で今まで病気知らずさ」
~それならば、これならどうだ?~
周囲の家具・食器が浮遊しだした。これは、俗に言う念力やテレキネシスと呼ばれる能力だ。それをポルターガイストに見せてるだけだ。
「ふむ、これは素晴らしい力だ」
~素晴らしいだぞ?!何を言ってる?~
ガクガクブルブル
「カ、カイト様ぁ、一体何が起こってるのですか?」
どうやら、俺にしか声は聞こえてないらしい。セシリーが、俺の裾を掴んで震えてる。
「物を浮かせ移動させる力は、使いようによっては便利だと俺は考えた訳だ。それで、俺のところで働かないか?」
~お前のところだと?!ふざけてるのか?怖くないのか?~
「怖いって?いや、全然そう思わない。だって、可愛らしい姿じゃないか」
~なっ!妾…………ワタシの姿が見えていると言うのか?!~
「見えてるとも」
「カイト様、一体何と喋っているので!」
そうか。セシリーには何も聞こえないし、見えない。カイトは【素材の次元鞄】から何の変哲もない片眼鏡を取り出し、セシリーに手渡した。
「これを掛けて見ると良い」
カイトの言う通りに掛けて見ると、一瞬で世界が変わった。カイトの目の前に向こうが透けて見える可愛らしい10代半ばの女の子がいた。
「これは一体?」
「【真実の片眼鏡】本来はウソを見抜くための魔道具なのだが、応用すれば見えざる物の姿も浮き彫りにしてくれる。例えば、彼女のように幽霊の存在も見えるという訳です」
実はというと、カイト自身も顔に出さないたけで驚いている。魂の魔物でレイスがいるが、それも目に見える存在だ。
魂がレイスじゃなく、幽霊として存在してる事は稀有な現象だ。【真実の片眼鏡】にて見える事が判明したのも偶々だ。
俺の【神眼】に偶々反応しただけのこと。
「それで君の名前は何と言うんだい?」
~ワタシはカーラ、お母さんとお父さんを待ってるの~
カーラの【テレキネシス】で1枚の写真が浮遊して目の前に運ばれて来る。そこには、両側に笑顔の男女がいて、その間には生前のカーラが写っている。
「この人達は、記録によりますと最初の所有者らしいです。ですが、商人だった夫婦は行商の途中で盗賊に……………」
言葉の続きは容易に想像出来る。おそらく、盗賊に殺されたのだろう。
そして、留守をしていたこの子だけが助かったと。可哀想だが、この世界では良く日常。
「残念だけど、君のお母さんとお父さんはもう」
~ウソよ、お兄ちゃんは嘘つきよ~
治まっていた家具の浮遊が再び再開され、カイトに向かって来るが、【神眼】により見切り【分解】により全てチリへと変えてしまう。
「本当だ。だから、俺が今後一緒にいてあげるよ。そして、君の父と母を探してあげよう」
~えっ?~
「えっ?」
セシリーと幽霊の少女がハモった。まぁ気持ちは分かる。死んだとされる幽霊の少女のは母親と父親を探すなんて、無理だと2人は思ったのだろう。
「絶対とは言えないが、君のように幽霊や魂の状態になったとしても俺なら見えるからな」
~あっ…………本当に探してくれるの?~
「あぁ約束する」
誰でも彼女を観る事が出来ていたら、泣き声が建物中に響いていた事だろう。




