46話、奴隷を落札する
『レディィィィィス・アァァァァァンド・ジェントルメェェェェンの皆様方、長い間お待ちしました。この度のメインイベント、奴隷達の登場デェェェス』
「始まるわ」
道具や武器のオークションとは打って変わってド派手にライトアップや演奏が始まる。
『No1.元A級冒険者…………彗星のドレーナーだぁぁぁぁ。えぇ情報によりますと…………借金の返済のため、ドラゴン討伐クエストに挑み失敗。借金奴隷となった訳であります。運良く逃げ延びたお陰で傷はありません。金貨100枚からスタート』
どんどん値がつり上がって行く。見た目だけは、そこら辺の娼婦よりも良い身体付きで顔も良いときてる。
だが、それはオークション主催者の罠だ。わざと身体のラインを出すように露出が多いボロ服を着せている。
そんな事とは露知らず、ピンクな煩悩に支配された男共は我先にと落とそうとする。
「金貨1000枚」
『金貨1000枚…………他にいませんか?』
パンパン
『金貨1000枚で決まりましたぁぁぁぁぁ』
落札が決まると、次の奴隷が来る。次々と落札が決まる。どれも魅力的な奴隷に映ったが、カイトはどれも見送った。
こう、ピンと来る者がいないからだ。【鑑定】を出来るカイトから見ても素晴らしい奴隷達だと思う。だが、カイトが求めてるものは違う。
確かに素晴らしい奴隷達だったが、抜きん出て素晴らしいとは言えない。平均でCランク良くてもAランク止まり。
それではダメなのだ。やはり、どれか1つでもSランクに匹敵するような技能があればと思うが、どの奴隷もダメだ。
『次で最後になります。No15ノーアのイレイヤでございます』
「ノーア?」
「耳を切り落とされた森精族ね。森を追放されたり、戦争奴隷になった森精族が耳を落とされるのよ」
「酷い!」
「えぇ酷いと思うわ」
思わず自分の耳を押さえてしまった。フリュールも耳が長い黒森精族であるからしてノーアには嫌悪感を抱いている。
『こちらがNo15ノーアのイレイヤでございます』
「何だあれ?!」
奴隷本人が歩いて来たのではなく、車椅子に乗せられて運ばれて来た。それも手足が動かない以前の問題であり、両足両腕の膝下と肘下が欠損しており、両目は失明・ノドは潰され、ほぼ包帯でグルグル状態である。
本来ならアレを見て吐くなと言う方が無理であるが、周囲の客は気にせずに盛り上がっている。俺は、それらの客達が内心からイカれてると憤慨していた。
「カイト君、抑えてちょうだい。怒りたい気持ちは分かるけど、ここは我慢よ」
「俺は大丈夫だ。それよりも俺はアレを買うつもりだ」
「本気なの?!」
【鑑定】で見て分かったが、HP・攻撃・防御はDと低いものの、MP・魔攻・魔防がSSで典型的な大魔法使いのステータスだ。それに使える魔法に精霊がある。これは精霊魔法使いの証明だ。
技能には、錬金術に加え、超速計算・読解・家事とか商人に必要とされるものも持っている。優良物件じゃないか!
『ご説明は不要でございますね。では、金貨10枚からでございます』
15→20→25と上がっていき、80で止まったところで俺は100を提示した。
『110』
「150」
『160』
「200」
俺は、ポーションで入った臨時収入によりまだ余裕である。一騎打ちなら望むところだ。
『ぐっ…………250』
「500」
俺と競り合ってるのは何処かの貴族らしいヒゲが立派なご老人。見てた限り、何品か落札してたようだし余裕はないのだろう。
とても苦しい表情なのは仮面からでも見て取れる。それに、あのノーアである奴隷の少女は、このオークションで有名な奴隷らしい。
その理由は、何回も売られ悪い意味でのココの常連という事と買われた客に口では言えない違法な事をさせられてる事に起因する。
まぁ俺は、もちろんそんな事はしない。
俺が、これから建てる店の看板娘として働いて貰う。その対価として、あれらの傷を全て治し、掛けられてる呪いも解呪する。
奴隷に必ず付与される【隷属】は、違法な事には逆らえる。ただし、【隷属】の上位互換といえる魔法付与がある。それが【服従】だ。
これは違法関係無しに命令には逆らえない。だだし、死ねとか自殺しろとかの命に関わる事は命令出来ない。
俺が解呪するのは、この【服従】の方だ。何故か【隷属】じゃなく、【服従】が付与されている。この国では、もちろん違法に当たる。見つかれば、一発死刑だ。
 




