41話、勇者、温泉に入る
「ここが『マグマダマリ』か」
火山の麓に出来たダンジョン。それが『マグマダマリ』、ほぼ炎属性の魔物しかおらず、ちゃんと準備してれば底ランクな冒険者でも浅い層なら充分に対応出来る。
それにダンジョン周辺と一層目は観光地として一般人にも開放されおり、小さな街中と化している。
火山という事は温泉も湧き出てるという事で湯治や疲労回復などで来てる客も多い。
そして、鉱石を求める冒険者も多く、そこら中に《火避けの水着》を着用してる冒険者を見掛ける。
魔物からも炎属性の魔石や各々の討伐品が取れ、どれも高く売れる。
「一層目は、安全地帯。魔物が出るのは2層目からだ」
その2層目に続く階段も珍しく案内看板がある。普通なら自分らで探すしかない。
「よし、降りるぞ」
階段を降りた先は、まるで別世界。流れるマグマが露出し見るだけで熱そうを通り過ぎて溶けそうだ。いくら《火避けの水着》を着ていても落ちたら一環の終わり。
「ギル、鉱石は何処にあるか分かるか?」
「ちょっと待ってろ。久々に使うから集中する」
ギルには、鉱石限定となるが探知魔法が使える。どうやら血筋らしく、元々は土精族の血を色濃く受け継いだ一族らしい。
「あっちに反応あるぜ」
「よし、行こう」
ギルが指差した方角に進む。進む先々でランクが低い冒険者も所々いるが、ギルが探知した場所は穴場らしく誰もいない。
「ここか?」
「あぁそこだ」
「面倒臭いわね」
「神の面し召しです」
ザクザク
ツルハシを手に掘る。鉱石の鑑定は、ギルがある程度出来る。金欠でなければ、一層にある温泉にでも浸かりたいところだ。
慣れない鉱石発掘に汗だくとなっていく。『マグマダマリ』の2層以降の風物詩と化してる風景だ。
「これは鉄、こっちは銅、おぉ金がある」
土精族の血が騒ぐのか?鉱石を見ると子供のようにはしゃぐ。俺らには分からない思考だ。
「ねぇ、もっと深くに潜らない?2層だけじゃつまらないわ」
「ふむ、そうだな」
もっと深く潜れば、それだけ貴重な貴金属や宝石が見つかるかもしれない。
ダンジョンとは、そういうものだ。『マグマダマリ』なら鉱石が一番の収穫源だが、他のダンジョンでも深く潜れば潜る程に貴重なお宝が見つかる確率がグーンと上がるものだ。
ただ、その代わりに比例して魔物が強くなる傾向がある。
「聞いた話では5層毎に温泉が湧き出るポイントあるって話だ」
「温泉!」
一層にも温泉や宿泊施設はあるが、それは5層から汲み上げてるという話だ。
だから、お金を賭けずに温泉へ入るには最低でも5層まで行くしかない。それに深くある温泉程に効能が上昇していく。
「それに噂だが、最終層の温泉には不治の病や体の欠損まで治すという話がある」
流石に、それは噂の域を出ないデマだと思われるが、その温泉を汲み金持ちの貴族に売り付ければ、一気に金が入る可能性がある。
だが、『マグマダマリ』の最終層は50層という話だ。Bランクのダンジョンの中では、そこそこ深いダンジョンの部類となる。
「行きましょ。さぁ早く行くわよ」
「目的が変わってないか?」
「タダなんだし、良いじゃん」
お風呂自体中々入れるものではない。身体をキレイにするには、宿屋でお湯を貰い布で拭くか野宿なら水場を見付けて入るしかない。
お風呂なんて貴族が嗜むものだと常識だ。たまに商売に成功した商人が家に取り付けるという話もたまに聞く。だが、それは少数だ。
「ここが5層だ」
『マグマダマリ』の魔物は大抵マグマの中に潜んでいるため、こっちから仕掛けない限り中々戦う機会はない。
「1層もそうだったけど、何か変な匂いしない?」
クンクン、確かに嗅ぎ慣れない匂いがする。これは毒か?
「これは温泉の匂いだな。硫黄というヤツだ。別に毒じゃないぜ」
「「イオウ?」」
「温泉に含まれる成分だ」
鉱石じゃないからギルも扱った事ないが、名前と温泉の匂いの元という事は知っている。
「ギル、掘った鉱石で何か武器作れないか?」
「土精族の血は流れてるけどよ、武器は作った事ないぜ」
「そうか(チッ、使えないヤツだ)」
自分らで武器が作れれば、態々武器を買う事もないし鉱石単体よりは高く売れるのにと、シャインの頭を過ぎったが、その考えは直ぐに崩壊した。
 




