39話、意志を持つ武器
「本当に土人形なのかい?!土人形にしちゃぁ、動きがスムーズで連携取れてる。それに、こんな一気に作れるなんて、儂でも出来やしないよ」
「ワタクシでも無理です」
「ここでは材料は事欠きませんから」
土人形の核である魔石は、ここなら魔石の元となるマナが、そこら中の土に含まれてる。そのマナを結晶化させたのが魔石。属性が含まれない無属性の魔石なら簡単に作れる。
そこに属性を含ませるなら、各々の属性が強く働いてる場所で無属性の魔石に、各々の属性を付与すれば良い。それが人工的に属性が付与されてる魔石を作成方法だ。
火属性なら火山、水属性なら海や湖、土属性なら鉱山、風属性なら空に近づく程に高くなる傾向がある。
雷属性だけは不明で、低確率で運良く無属性の魔石に付与出来るとか。因みに、光属性は日光に数日当てる。闇属性は、光が一切ない暗闇で数日放置となる。
「御主人様、聖玉の修復が完了しました」
「サクラ報告ありがとう」
「もう出来たのかい?!」
「いくら何でも早いような気が…………それに聖玉って?聖剣を修復してたんじゃ?」
「それは俺の工房に行ったら分かります」
サクラが先導するように工房に向かう。俺も始めて聖玉を修復したから上手く直っているか不安は少なからずある。
「到着致しました」
修復する前に聖剣を置いた場所に黄金に輝く拳大の玉が、フヨフヨと浮いている。【鑑定】したところ、100%上手く修理出来てるようだ。
『あなた様が、ワレを修復した者か?』
「…………?!」
突然声が聞こえた。明らかに目の前に浮いてる聖玉から聞こえた。一瞬、顔だけ振り向くが2人には、この声が聞こえてないようだ。
『あなた様の頭に直接声を届けておる』
『驚いた。まさか意思疎通が出来るとは思いもしなかった』
急に頭の中に声が響いたら誰だって驚く。聖玉について、黄昏になってから得た知識がある。
黄昏になるまで聖玉の言葉すら知らなかった。聖玉についての情報は3つある。
1つ目、聖剣という武器は存在せず聖玉が勇者にあった武器の形状となっていただけ。
2つ目、聖玉を修理又は製作出来る職業は黄昏のみ。
3つ目、職業全て神々によって決められているというのが絶対不変な常識だが、勇者だけ例外だ。勇者は神々ではなく、聖玉が決める。
俺的には、3つ目の説明が最初理解出来てなかったが聖玉と話す事が出来て納得した。聖玉には意志があるなだと。意志があれば、誰を勇者にするか決められる。
そして、俺には1つだけ意志を持つ武器に心当たりがあった。
「聖玉は、意志を持つ武器なのか」
「なに?その聖玉とやらが意志を持つ武器じゃと!」
「信じられません。本当に存在するとは」
たまにダンジョンにて意志を持つ武器らしき武器は度々発掘されるが、そのどれもが偽物とされる。
ただ単に振動するだけだとか、鍔が動いたりとか様々聞くが、どれも玩具ぽい仕掛けだ。
だから、もし本物が売りに出されても二束三文な値段で並んでいる事が屡々あるらしい。
『2人にも声を聞かせられるか?』
『黄昏様の頼みとあれば、やってしんぜよう』
聖玉が、不規則に回転したり上下したりする事数分後、ビクッと俺の背後で待機している錬金術師ギルマスとルーシィの2人の肩が震えた。
「こ、これは?!」
「何これ?頭の中に声が…………聞こえる?!」
「それが、聖玉の声です。聖玉に頼んでお2人にも聞こえるようにしました」
物凄く驚いてる様子。流石は神が作りし武器である聖玉。その聖玉を修理する事が出来る職業:黄昏。とある地方では、黄昏を神の使徒と呼ぶ地域があるとか。
「ウッヒヒヒヒ、まごう事無き本物であるのぉ」
「まさか、生きてる内に出会えるなんて、錬金術師をやってて良かったわ」
錬金術師が数ある到達点の1つで、あんまり知られてないが、意志を持つ武器である。
人工人間や賢者の石が有名過ぎて埋もれてしまっているが。
「これで依頼は完了な訳だが…………」
「何か問題あり?」
「ほら、頼まれたのは聖剣の修理だ。今は聖玉、丸い玉になっているから」
『それなら問題ないぞ』
黄金に輝く玉が、みるみる内に勇者シャインが渡して来た聖剣先の姿へと変貌していた。
 




