31話、勇者、聖剣の修理を決意する
━━━━勇者シャインside━━━━
カイトが薬師ギルドに出向いている頃、勇者シャイン一行は、冒険者ギルドに出向いていた。
『闇の採掘者』五層のボスをどうにか倒す事が出来、ボスのドロップ品とボス討伐に出現する宝を回収し、地上に繋がる【転移魔法陣】に乗り脱出したのだ。
クリアした階層は自然とダンジョンに登録され、ダンジョンの入り口付近にある水晶に触れば、クリア済みかその一つ先までの任意の階層を選択して転移する事が出来る。
だから、今度は何時でも『ヤミノタンサクシャ』五層から降りた六層まで行ける事になる。
だけど、直ぐには出発出来ない。何故なら五層ボスであるキングコウモリを討伐したと同時に勇者シャインのメイン武器である聖剣が壊れてしまったのだ。
聖剣の刀身がちょうど真ん中でポキリとキレイに割れた。【鑑定】を持たない者が見ても明らかに壊れてると認識出来る。
そこで聖剣が壊れた事は内密にし、冒険者ギルドへ戻って来た訳だ。
冒険者ギルドで、ボスのドロップ品と宝の回収品を売って聖剣の修理と他消耗品の買い付け諸々をしなくてはならない。
今回のボス戦までにポーションは使い切ってしまった。相当な出費になると思われるが、ドロップ品と宝により黒字になるだろうと高を括っていた。
「これらの買い取りを頼む」
「はい、受け溜まりました」
買い取り専用の受付にキングコウモリのドロップ品と宝箱の回収品を並べた。
「お待たせ致しました。支払金はこちらになります」
両方合わせて合計金貨30枚となった。詰められてる袋からジャラジャラと音が手に持つと鳴り響く。
「五層ならこんなものか」
「もっといくと思ったぜ」
「そろよりも流行の服が欲しいわ」
「これも神の思し召しです」
「……………(もう抜けた方が良い気がする)」
金貨30枚だと贅沢をしなければ、余裕で10年は働なくても生きていける金額だ。
だけど、多くのお金を持ってると金銭感覚は狂う訳で勇者シャイン達一行にとって金貨30枚は、ほんの3日長くても一週間程度だという認識だ。
「先ずは、俺の剣の修理が先だ」
聖剣がないと勇者シャインは戦えない。そもそも勇者という職業は、聖剣以外の武器を上手く扱えない。
聖剣以外の武器を使うと最悪ステータスにマイナス補正が掛かり逆に弱体化してしまう。
その事は、【鑑定】が使えない勇シャインでも何となく理解していた。だから、いち速く聖剣を修理したい気持ちがあった。
「鍛冶師ギルドは、ここか?」
鍛冶師ギルド内からカンカンと金属音が外まで鳴り響いて来る。いつもはカイトに武器の手入れを頼んでいた分、入るのに躊躇してしまう。
他のメンバーは疲れたという事で、拠点してる宿屋に帰って貰ってる。
「よし、失礼する」
冒険者ギルドと同じく受付カウンターがある。そこで武器の製造や修理を頼むのだろう。
「鍛冶師ギルドに何のご用でしょうか?」
「修理を頼みたい」
「では、修理する品物は」
「こちらだ」
カウンターに折れた聖剣を並べる。これを見た受付嬢は、直ぐ様奥へ引っ込み一人の土精族の女を連れて来た。
「こちらですが」
「ふむ、間違いね。あんた勇者かい?」
「あぁそうだ。俺は、勇者のシャインだ。どうして俺が勇者だと?」
この土精族とは初対面のはずだ。なにせ受付嬢にも勇者だと言ってないのだから。
「奥で話した方が良い。ここだと人の目がありすぎる」
指摘され初めて気付いた。俺らに向けてチラホラ視線が向けられている事に。
「ここで良いだろう。あの壊れた剣は、聖剣だろ?勇者しか聖剣は扱えないし、勇者もまた聖剣しか扱えないのが道理だ」
聖剣だけではない、防具に至ってもそうだ。防具も聖剣と同じとある鉱石で作られており、聖剣と同じ聖具と呼ばれる勇者専用の防具となる。
「それで直せるのか?直せないのか?どっちなんだ?」
「ハッキリ言って無理だ。断言しよう。鍛冶に精通してる土精族の一流の鍛冶師でも聖剣━━━いや、聖具は作れないし直せない。もしも、直せると言ったら一人しかいないだろうね?」
「それは誰なんだ?」
誰の名前を出されても驚く気は勇者シャインには無かった。100%知らない名前だろうだから。
だが、予想は見事に外してしまい良く知ってる名前であった。それもそのはず、ほんの数日前まで一緒のパーティーにいたのだから。
「それはカイトだ」




