30話、持続期間と消費期限が長い
「あれ?また俺やっちゃいました」
ポーションの他にも参考になると思いテーブルに並べた薬品だが、フリュールの反応から見るに薬師ギルドでも珍しい薬品であったか?
普段通りに作った物ばかりだから珍しいとは思わなかった。
「ギルマス、普通の品質ではありません。どれも+付きです」
「それは……………カイトくんだからね」
「ギルマス、どれも効果持続が一年となってます」
「えっ?はぁぁぁぁぁぁぁ!」
「それも消費期限が百年です」
「……………もう驚かないわ」
普通は使用した直後、効果持続する時間は続いても半日程度だ。それが一年となれば破格だ。
これらが月一で開催されるオークションに出品すれば金貨数百枚から数千枚は確実に取れる。これでも安い位だ。
「本当ね。これが市場に出回ったら大変な事になるわね。せめてオークションでの取引になるでしょうね」
「そんなに凄い物だったんですね」
「カイトくんが持って来たものでしょう!もちろん、これも作ったとは」
「はい、作りました」
「錬金術師最上位職業:黄昏が、ここまで規格外だとは思ってもみなかったわ」
フリュールから黄昏という言葉が出た時、生徒達に驚愕の声が上がった。
「先生は、〝黄昏〟なんですか?!」
「あっ…………そういえば、言ってなかったわね」
しまったぁとフリュールの瞳が泳いでる。カイトは、てっきり伝えていたと思っていた。
「カイトくんが黄昏だという事は機密事項よ。誰にも内密よ。良いわね」
「「「「「はひっ!」」」」」
「よろしい」
怒られてる訳ではないのに、カイトまで返事してしまう。それ位に怖かった。ガクブルものだった。
「カイトくん」
「はひっ!」
「これらまだあるかしら?」
「えぇ、あります」
「申し訳ないのだけれど、後一個ずつ売ってくれないかしら」
そうフリュールに頼まれ、カイトは【収納魔法】からもう一個ずつテーブルへ並べた。
「一つは研究用に、もう一つは一週間後に控えてるオークションに出しましょう。良いわね?」
「畏まりました」
一つ目は颯爽と研究用として持って行かれた。もう一つは厳重に金庫の中へと保管された。
「お金は、ちょっと待っててちょうだいね。オークションの結果で変わるから」
「それは構いません」
「最低でも金貨一万枚かしらね」
「へぇー、一万枚?一万枚!」
金貨一万枚があれば、宿屋から豪邸に住む事も夢じゃない。それか自分の店を持つのもアリじゃなかろうか?
「そのオークションって、誰でも参加可能なのかな?」
「はい、可能です。ですが、参加費として金貨一枚が必要です。それと、身分を隠すためにこちらのようなマスクが必要となりますね」
目元だけを隠す仮面をテーブルに置く。色々と呼び名はあるが、ベネチアマスクと呼ばれるものだ。見た目通り目元に取り付け身バレするのを防ぐ。
ただ、知り合い相手だとあんまり意味は無いように見えるが、そこは暗黙のルールという事で知り合いだとしても他人だと通す事になっている。
「確か似たような魔道具があったような」
【収納魔法】に手を突っ込み探す。数秒後、目的の品を見つけたようで手を引っこ抜いた。
見た目は、フリュールがテーブルに置いたベネチアマスクと似ている。
「あったあった。ふざけて作ったのが、ここで役に立つとは」
蝶をモチーフにした形で青を基色とし黄の線が入ってるそこそこ派手な色合いに仕上がってる。
だが、ただ派手なだけではない。これを作ったのは黄昏であるカイトだ。
何の効果もないはずがない。このベネチアマスクマスクには、【認識阻害】の魔法を【付与】されている。
【認識阻害】といっても種類があり、このベネチアマスクには、装着すると別人へ相手に見えるという効果がある。
装着するたけで他人に成り済ませるのは相当なレア魔道具である事をカイトは知らない。
「持ってるじゃない」
「昔に何となく変装出来たらなぁと思って作っただけです」
カイト的には遊びで作っただけなのだが、見た目は派手でタダのベネチアマスクしか見えないが【付与】により国宝に近いレベルの出来で仕上がってる。
《成り済ましメガネ》
別人に成り済ますメガネ。掛けると誰だか分からなくなる。
誰かが見ている中で装着しても効果はアリで、誰か認識出来なくなる優れもの。
ただし、派手なのは変わらず目立つ可能性もある。
「これは、またとんでもない物をお出しになられたこと」
「そ、そうかな」
また、やってしまったと、もう内心で笑うしかなかった。けして、わざとではない。
 




