28話、ポーション作りの先生
「お待たせ。この子らがカイトくんにご教授して貰う生徒達よ」
「「「「お願いします」」」」
うわぉ、元気が良い。カイトも錬金術の事になると、口上手になり何時間も話してる事がある。
それと同じで新しいポーションの作り方を覚えられる喜びが、こちらまで伝わって来る。
「先ずは、いつものやり方でポーションを作ってください」
「「「「はい、先生」」」」
鍋に火を着け、ゴトゴトとキュルル草を規定の本数を入れ煮出していく。
煮出したキュルル草の煮汁を濾過し、ポーションの成分を抽出し、専用の小瓶に移せば出来上がりとなる。
これが一般的なポーションの作り方だ。
一見、失敗しようのない工程だが、薬師の技能を持ってないと失敗する。
「うん、出来たようだね。それじゃぁ、ポーションに味を付けたい果物を煮詰めていこうか」
キュルル草と同じ要領で煮詰めていく。だけど、今回は果物の原型が残らない程に煮詰める。時間は掛かるが、それだけでも付加価値がつき値が上昇しやすい。
「それくらいで良いだろう」
グツグツと煮汁が少なくなり、成分が凝縮されたところを見極め火を止めた。
「よし、作製したポーションに注ぎ込むんだ」
既に完成してるポーションに注ぎ込むと淡い光が数秒間発生し収まった。
色合いも味付けに使用した果物に似た色合いになっており、どうやら成功したようだ。
《中級ポーション・リンゴ味》
低級ポーションより2倍回復力があるポーション。甘味と酸味が融合したような味がして飲み易い。
子供でも吐き出さずに飲み干せる事だろう。
「飲んで見て良いですか?」
「自分で作ったものだ」
各自、自分で作った味付きのポーションを飲んだ。その美味しさと鼻に抜ける風味に飲んだ全員の頬が緩んでる。
「これがポーション」
「前までのは泥水だ」
「これを飲んだら」
「もう他の飲めない」
喜んで何よりだ。この四人の腕は確かで、味付けの技能は確実に後進のため、他の者にも間違いなく伝えてくれる事を祈ってる。
「流石だな。もう覚えさせるとは」
「皆さんが物覚えが良かったのと、既に修得している技能の応用ですから」
カイトは感心している。今日集められた生徒は本当に優秀だ。おそらく技能アリでも一週間そこらは掛かってるはずだ。
「先生、先生のポーション作りを見てみたいです」
「あっ、俺も見てみたい」
「私も」
「ワタクシも」
「それは良いですね。カイトくんお願い出来ますか?」
フリュールまでもカイトの技能を見てみたいとお願いという名の命令を下した。
一見、優しい笑顔で頼んで来てるが、見せるまで帰さないという圧力を感じる。そういえば、フリュールさんにも、まだ見せてなかった。
「えぇ良いですよ」
カイトは、その場で見せた。キュルル草を掴み【抽出】でポーションの成分だけを取り出し小瓶に入れる。皆にならい中級を作製した。もちろん+が付いている。
そこにリンゴ味の元となるアップルを片手に【抽出】を行い、《中級ポーション+》が入ってる小瓶に注ぎ込む。
「よし、完成だ」
生徒達が作製したポーションよりも果物の色合いが濃く出ている。それに蓋を閉めてないと果物の仄かな香りが小瓶の外へ溢れ良い香りが鼻に付く。
「ルーの自慢話として適当に聞き流していましたが、こうも簡単にやってのけるとは素晴らしい」
「ゴクン、道具無しで俺らにも出来るのか?」
「む、無理よ。あんな繊細な作業をやるなんて」
「まるで息をするようにやってた」
「常識が崩れていく」
カイトの技能を直接見て、如何に自分の技能が幼稚なのか思い知ったようだ。
カイト的には普通にやった積もりだが、道具有り無しだと成功率が天と地程に違う。
おそらく道具を使用しないでやると、生徒達やギルドマスターであるフリュールの成功率は1%未満だろう。
「ねぇ、カイトくん。カイトくんにお願いがあるのだけれど」
「は、はい、何でしょう?」
か、顔が近い!それに色気と匂いが5割増に増している。両手も掴まれ逃げ道がない。
「ねぇ、ウチに来ない?」
「や、薬師ギルドには入りましたけど」
「そうじゃないのよ」
益々、顔が近寄ってる気がする。吐息の音がダイレクトに伝わってくる。
「ルーのところじゃなくて、ココで直接働かない?」
えっ?錬金術師ギルドじゃなくて、薬師ギルドで?!それは考えてもみなかった。普通の人なら錬金術師ギルドと薬師ギルドなら薬師ギルドを選ぶだろう。
何故なら、最低辺な職業と揶揄される錬金術師よりも貴族とも取引がある薬師の方が未来がある。子供でも分かる事だ。
 




