27話、薬師ギルドマスター
俺は今、薬師ギルドに来ている。昨日、冒険者ギルドにて薬師ギルドのギルドカードを受け取った。
そこから話は進み、今日ポーションの納品が急遽決まった。まぁ数は少ない分、手間隙はカイトにとって無いに等しい。
それに冒険者ギルドに卸すよりも懐が温かくなる予定だ。
「あのぉ、すみません」
「はい、何でしょう?」
薬師ギルドだからか、病院みたいな薬ぽい独特な匂いが充満している。
それでいて受付嬢は、みな看護師みたいな服装を着用しており、ここが病院で入院出来るならわざとケガをしたいと思う程に美形が揃っている。
「ぽ、ポーションを納品しに来たのですけど」
「お名前とギルドカードを拝見させても」
「はい、どうぞ」
カイトは、薬師ギルドのギルドカードを受付嬢に手渡した。そうすると、ギルドカードとカイトの顔を交互に数回見渡した後、ギルドカードを返してくれた。
「少々お待ち下さい。確認して参ります」
「あっ、はい」
また何かやらかしてしまったのかと不安になる。そう考えてる内に受付嬢が戻って来た。
「お待たせ致しました。ギルド長室へとご案内致しますので、着いて来てください」
「はい、分かりました」
昨日の今日で会うとは思わなかった。ヤバい、ドキドキしてきた。
「マスター、カイト様がご到着なさいました」
『入ってちょうだい』
部屋に通らされると、昨日会ったフリュールがいた。だが、カイトの瞳がキョロキョロと泳ぎフリュールに目線を合わせようとしない。
何故なら、フリュールの容姿が原因だ。昨日はまだ露出が激しい服装だと感じていたが、今回は下着姿で目のやり場に困る。
「いらっしゃい」
「あのぉ、せめて何か服を」
「あら?これがワタクシの部屋着なのだけれど」
しょうがないわねぇと近くにあった白衣を羽織った。だが、羽織っただけで前を締めないままである。
「前も閉めてください」
「我が儘ね」
パチンっパチンっ
ボタンを閉めてくれたが、それでも二個だけである。まだパンティ辺りが見えているのだが、これでも譲歩して上げたのよと目線が語っている。
「これで良いでしょ?」
「まぁもう良いです」
もう諦めた。でも、カイトも男の子である。内心では、喜んでる様子が見て取れる。
「今日は来てくれて、お姉さん嬉しいわ」
「誰がお姉さんですか!」
ここには仕事で来たのだ。けして疚しい事ではない。けしてないのだ。
「うふふふふっ、本当に可愛いわね」
「それよりも、これが頼まれた品物です」
ゴトンとテーブルに木箱を置いた。中身は低級から高級までのポーション、もちろん+付きだ。
然程、量は多くなかったので1日で済んだ。
「本当に作れるのね。お姉さんでも無理だわ」
「そうなんですか?」
ギルドマスターになる実力があるなら薬師の上位か最上位だと推測出来る。そんな人が出来ない訳が……………。
「中級なら兎も角、《高級ポーション+》なんて初めて見ましたのよ」
フリュールによると自分は、薬師の最上位職業である宮廷薬師という職業だのだそうだ。
宮廷薬師でも《最上級ポーション+》は作る事は出来ず、《中級ポーション+》で成功率は低く3割程度、《上級ポーション+》だと1割だという。
だから、+無しのポーションを薬師ギルドでは作製している。それでも貴族には売れるのだから作る意味がない。
「それどころか、味付きなんて聞いた事がありませわよ」
うーん、やり方を覚えれば出来ると思う。フリュールなら直ぐにマスター出来るだろう。因みに+付きでなくても味は付け加えられる。
「教えてあげましょうか?」
「本当か?!」
「これ位なら何ともないですよ」
錬金術師の到達点の一つ《賢者の石》や薬師の到達点の一つ《エリクサー》と比べたら痛くも痒くもない。
「その前に一つお聞きします。道具無しで【調合】出来ます?」
「道具無しで?出来る訳ありませんわ」
何を当たり前の事を言ってる風な視線を向けられる。そんな痛い視線を向けないでくれ。出来てしまうものは出来てしまうのだから。
「まさか、道具無しで出来るというの?!」
「はい、正確には配合が簡単な物はです。配合が難しい物は、道具があった方が安定します」
カイトの言葉にブルッと体が震える。まるで最強種と名高いドラゴンを相対してる様な感覚だ。
フリュールの目の前にいるのは一種のバケモノだ。生産職ならではのバケモノだ。
「そうか、なら手解きをお願いするわ。何人か腕の良いギルドメンバーを選出するから待ってちょうだい」
「はい、分かりました」
他人に教える事は無かったから、今からワクワクしてしょうがない。




