26話、薬師ギルド
━━━カイトside━━━
カイトは今、冒険者ギルドへ来ていた。特に依頼を受けに来た訳ではない。
頼まれていたポーションを納品しに来ただけなのに、何故ギルドマスターのドランに呼ばれているんだ?
「カイトくん、わざわざ悪いね。本来なら広まるまで時間が掛かるはずだったのだが、何処かで聞き齧ったようでね」
何の事だか分からないカイトは、首を傾げ?を頭いっぱいに浮かべている。
「こちら薬師ギルドのギルドマスター:フリュール・リングランドだ。《低級ポーション+》の出所を探ってココに来た訳だ」
「お初にお目見え致します。ワタクシ、薬師ギルド…………ギルドマスター:フリュール・リングランドです。フリュールと呼んでください」
「か、カイトです」
耳が尖ってる。ルーシィと同じ森精族だろうか?ただし、肌が漆黒でルーシィよりも露出が激しい服装をしている。
「もしかして黒森精族は初めて?」
黒森精族!森精族と対を成す種族だ。カイトにとって初めて見る種族だ。
「すみません。ジロジロと見ちゃって」
「うふふふふっ、良いのよ。ワタクシ、可愛い子好きよ?」
ルーシィとは、また違った色気でカイトはタジタジだ。まともに顔が見れる気がしない。
「ゴホン、えぇ良いか?話を進めたいのだが?」
「あら、ごめんなさい。つい、可愛い子を見るとからかいたくなっちゃうの」
からかわれていたなか?!そうだようなぁ、明らかに年齢が離れているからな。
「冒険者ギルドに卸して貰ってる《低級ポーション+》、《低級ポーション+イチゴ味》、《低級マナポーション+》、《低級マナポーション+ブドウ味》が薬師ギルドに知られてしまったのだ」
「はぁ?」
「その言い方だと冒険者ギルドにスパイを送ったみたいではありませんか?」
「違うのか?」
バチバチとギルドマスター同士で火花が散ってる。早く帰りたい。居心地が悪くて、ココにいるの場違いではないか?
「あのぉー、俺帰っても良いですか?」
「「ダメだ(よ)」」
うぅ~、胃がキリキリと痛い。
「ワタクシのところにもカイト君のポーションを卸してくれないかしら?」
「薬師ギルドに?」
「お前のところで作れるだろうが」
「いいえ、+付きは作れない。今後の新人教育や研究のために」
「えぇ、良いですよ」
断る理由が見つからない。というより、もしも断ったら地の果てまで追い掛けるとフリュールの瞳が語り掛けてくる。
「やったぁー。ありがとう」
「ぐむっ」
フリュールに抱き着かれた。ムニュンと豊満なカイトの顔面を覆い尽くす。それに所々、露出してる肌が当たり下手に抵抗出来ない。
「おい、カイトくんの顔が蒼白くなってるぞ」
「あっ、ごめんなさい。ワタクシ歓喜極まると抱き着くクセがあるの」
「ゴホゴホ、いえ大丈夫です(むしろ、ご褒美でした)」
息苦しいかったが、カイトも男だ。見目麗しい女性に抱かれて死ねるのなら本望だ。
だけど、自分の年はまだ13歳でフリュールは見た目では20歳は越えているように見える。
ただ、森精族や黒森精族もそうだが、人間以外の種族は見た目と年齢が一致しない。
「そうか大丈夫なら良いか。と、それよりカイトくんのポーションは冒険者ギルドが先に卸してくれるよう頼んだんだ。薬師ギルドが出しゃばるんじゃねぇよ」
「良いじゃない。薬師ギルドは他に売る積もりは無いわよ。言ったじゃない。今後の新人教育や研究のために使うって。だから、そんなに量は必要じゃないのよ。たまにこちらにも卸してくれれば良いだけだから」
カイトは、どちらの考えにも共感出来る。冒険者ギルドに卸し、ただ単に冒険者達が買い、自分や仲間の傷を治すのも良し。
後進の育成や研究をするという薬師ギルドに卸し、カイトのポーションよりも優れたポーションの作製や技能の向上に励むのも良し。
カイト的には薬師ギルドの方が面白そうだ。自分が作製したポーションを解析してみろと挑戦してる気分となる。
「俺的には然程大変の仕事ではないので、先程言いましたが承りますよ」
「あんたより話が分かるじゃない」
「ぐぬぬぬぬぬ」
「さぁ、これが薬師ギルドのギルドカードよ」
「えっ?!」
急に目の前へ自分の名前と薬師ギルドと書いてあるカードを見せられる。
「ランクはCからね」
「えっ?!」
二度目のえっ?!である。ただ単にポーションの納品が決まっただけなのにCランクは破格である。
 




