22話、付与
《契約のスクロール》は内容をお互いに確認し合わないと大変な事になる。
内容に穴があると、契約の抜け道になり片方が得をしたり損をしたりする。
最悪の場合だと死ぬ事もあり得る。ただ、死ぬ場合は希だ。
「これで問題ないようだな」
「えぇありがとうございます。早速ですけど、俺の作った武器を見てくれませんか?」
カイトが【収納魔法】に腕を突っ込み取り出した。刃部分だけでもカイトの背丈程ある大剣で、シャルルと比べると二倍は大きい。
「これが俺の作った武器です」
「おぉ素晴らしい出来だな」
流石は土精族だ。【鑑定】を使わなくても武器関連なら見ただけで良い物だと判別出来るらしい。
《鉄の大剣・斬・重》
鉄で出来た両刃の大剣。重く相当腕力に自信がないと持てない。
ただし、重の付与によって魔力を流すと【重量変化】により重さが自由自在に変化させられ、軽くなったり重くなったり出来る。
「なっ!【二重付与】じゃと!【付与】だけでもオークションで金貨1000枚は軽く越えるというのに、これは国宝及だ」
あれっ?もしかして、何かやってしまいました?
流石のカイトでも十個や二十個以上の【付与】なら難しいが、一個や二個程度の【付与】なら黄昏であるカイトなら朝飯前である。
「すみません。これは忘れてください」
「あっ!」
鉄の大剣を取り上げ【収納魔法】に仕舞った。その代わりに他の武器をシャルルの目の前にゴトンと置いた。
「代わりにこれを」
「おっ!これも素晴らしい逸品」
先程の大剣よりも子供のように目を輝き騒いでいる。武器の目利きに疎いカイトでも今出した武器は美しいと思う。
「これは東方の国から伝われし武器…………カタナと言うそうです」
カタナを作った当時、職業の声により初めて知ったはずだが、職業の声で知る前から知っていたような感覚に陥った。所謂、既視感というものだ。
「抜いても良いか?」
「はい、どうぞ」
鞘から抜いたカタナは光に反射し、波紋が浮き出て美しい。これは実用というより芸術の域まで達していると言っても過言ではない。
「これは……………美しい。オレが欲しいくらいだ」
ウットリと最愛の恋人と会えたみたいに蕩けてる。これはカイトでも引く。
《カタナ・飛》
片刃で細身の刃物。刃身に映る波紋は、同じ物は存在はしないと言われる。
刀匠の腕によっては芸術の域まで高められ、何世代にも引き継ぎられて来た物もあるという。
飛の付与によってカタナを鞘から抜く際、瞬間的に魔力を込めると斬撃が飛ぶ【居合・飛燕】が使える。
「性能も凄ぇぇぇぇな」
「他にもあります」
「ほぇ?」
【収納魔法】から次から次へとテーブルに並べた。
鉄の片手斧、鉄の戦鎚、青銅の両手斧、青銅の長剣、竜の髭と心臓の杖まで並べたところでストップが掛かった。
「ちょっぉぉぉぉぉとストップぅぅぅぅぅ」
「はい?」
「まだ斧や剣までは分かるが、この杖は何だ?!」
思わず出してしまったが、カイトが並べた杖は最高級の杖の1つで魔導師系職業の最上位職である賢者が愛用されても可笑しくないレベルの代物だ。
「それは……………《竜の髭と心臓の杖+・魔》ですかな?」
「目を反らせるな!これは、どうしたんだ?!」
下手したら国宝として宝物庫にあっても可笑しくない。そういう物を誤ってポンっと出してしまった。
竜は魔物の中で頂点に位置する最強な生き物の総称である。
そんな素材の一部を使って作製した杖が、シャルルが今手に持ってる杖となる。
「あぁぁぁぁ、俺が作りましたぁ」
もう自棄となり、自白した。もう【二重付与】をした武器を見せたのだから、そんなに変わらないだろう。
「やっぱりかぁぁぁぁぁ」
シャルルが壊れた。
「なぁ他にもないよな。無いと言ってくれぇぇぇぇ」
「……………」
本当は、まだある。あるが、無いとウソを付けば、この場は治まる。
だけど、自ら作った物でウソを付きたくない。それがカイトのポリシーであり、信念だ。
「まだあります」
「……………そうか、あるのか。見せてくれるか?」
予想外に見せて欲しいと頼んで来た。おそらくは土精族の意地みたいなものだろう。
「では、これなんかどうですか?」
【収納魔法】から取り出したのは、硝子に似た半透明な鉱石で出来ている片手剣だ。




