21話、カレーライス
「お待たせしました。庭で収穫した食材で作ったカレーライスという料理です」
「ずいぶんと早くねぇか?」
職業:料理人以外の者には、料理に関して大抵疎いが、それでもカイトが作るスピードが異常なのはシャルルでも分かる。
サラダならまだしも、カレーみたいな煮込み料理をほんの数分で作れるのは明らかにおかしい。普通なら数十分は掛かるものだ。
「まさか作り置き?」
「いえ、今さっき作りました」
カタッとシャルルの前にスプーンを添えて置いた。
「お水もどうぞ」
「透き通ってる?!」
水よりも注がれてるグラスに目がいった。こんな透き通ってるガラスは、ガラス職人でも作れない。少なくともシャルルは見た事はない。
ゴクン
「水旨ぇぇぇぇぇそれに冷てぇぇぇぇぇ」
水も錬金術で産み出したものだ。空気中に含まれる水分を【圧縮】をし、水を集めた。よっぽど乾燥した場所でない限り、これで十分に補える。
それに【圧縮】を続ければ氷を作る事も可能だ。
「さぁ冷めない内にどうぞ」
「あぁ」
スパイスの食欲を祖剃る匂いはするが、色合いが下半身から出るアレに似ている。
だけど、この香しい匂いには逆らえない。スプーンを片手にシャルルは一口含んだ。
パクっ
「モグモグ……………?!バクバクモグモグ」
無言で無我夢中に食べ続けるシャルル。その様子を見てカイトを食べ始める。
うん、美味しい。今回はシンプルにベジタブルカレーにしたが、他のカレーレシピも職業の声によって知ってる。
「……………お、お代わりあるか?」
「はい、ありますよ」
「お待たせしました」
サクラが代わりに持って来てくれた。
「ハグッパクパク…………んっうぐっ!」
「み、水を飲んでください」
飲み物を飲むようにカレーを食べていたシャルルが、ノドを詰まらす。
「ゴクゴク……………プハァー…………ハァハァ、死ぬかと思った」
「焦り過ぎですよ」
まぁ気持ちは分かる。
「こんな旨ぇ飯は初めてだ。嗅いだ事のない香りだが、これは何の香りだ?」
「これは香辛料です」
カイトの答えにシャルルがスプーンをガシャーンと落とし、驚愕した顔でカイトを見る。
「香辛料って、胡椒や唐辛子とかの?」
「えぇそうです」
他にも八角やニンニクだったり、花椒やカルダモン等がある。
カイトでさえ全部は把握していない。
「それじゃぁ、これだけで金貨……………いや、白金貨10枚はくだらないじゃないか!」
あわわわわっとシャルルの額から凄い冷や汗が溢れ出ている。
「大丈夫です。俺のオゴリです。見せていませんが、香辛料を数種類栽培してたりもします」
「なっ!エリュン王国で香辛料の栽培が成功したと聞いたことはない」
だから、香辛料は高い。金と同等な価値があってもおかしくはない。
海を渡った大陸から輸入されており、その量も多くない。大陸でも100%の確率で栽培が成功してる訳ではないからだ。
「内緒に…………あぁ鞄の外では話せませんか」
「カイトは香辛料を外で売る気はないのか?」
「外で?売りませんよ。興奮して頭が回ってないようですよ」
少量ならまだしも大量に売るとしたは出所を疑われる。外国からの輸入しかないのだから。
対応を間違えると最悪戦争にも発展しかねない。だから、カイトはけして売らない。
「済まない。そうだな、外で売ったらヤバいな」
「分かってくれて良かったです。でも、よろしかったら……………たまに食べに来ますか?ご馳走しますので」
「良いのか?!」
「えぇ、因みにココを知ってるのは錬金術師ギルドのギルマスだけですから」
まだルーシィには話していない。
「そうか、なら遠慮なく来させて貰おう。それでこちらから何を出せば良い?」
シャルルは分かってらっしゃる。
「簡単な事です。俺が作った武器・防具をそちらで置いて貰えませんか?売上の1割を納めます」
「カイトは武器も作れんのかい!まぁあれだけのインゴットを作れるのだから作れるか。良いだろう」
「ありがとうございます」
これで商談成立だ。
「これを書くかい?」
「これは?」
《契約スクロール》
契約を交わす時に書くスクロール。ここに書かれた内容を破れなくする魔道具。その強制力は、内容によって様々だが、少なからず破った方は痛い目に合うのは確実だ。
「その顔は初めてだね」
「はい、初めてです」
「これは《契約スクロール》と言って重要な商談の時には必ずといって使うものだ。リスクもまぁあるが、それよりも安心だからね」
商売には少なからずリスクは付き物だ。リスクがない商売はない。




