20話、鍛冶師ギルド長にご馳走する
「もっと誇って良いのによ」
「そうなんですかね」
誇る気持ちは当初はあった。だが、作ってはいけないものを作ってしまったという罪悪感の方が現在勝ってる。
だけど、作らなければサクラと出会う事はなかった。罪悪感がサクラの出会いで中和されている気持ちになっている。
「これを王国に報告はしたのか?」
「いいえ、してません」
「勿体ねぇな。絶対に英雄として語られるぜ」
報告するという事はレシピを渡さなければならない。そうなれば、おそらく世界の破滅になりかねない。
まぁ素材がどれも希少過ぎて集めるのが一苦労であり、錬成も黄昏でなければ難易度が数段跳ね上がる。
「それよりもお茶にしましょう。冷めてしまいますし」
「勿体ねぇと思うけどな」
ずずぅぅぅぅ
うん、サクラが淹れてくれたお茶は旨い。それにお茶請けのクッキーもサクサクでお茶に合う。
「旨ぇぇぇぇぇ。こんなに旨いもの初めて食ったぜ」
何の躊躇いもなく、シャルルはお茶とクッキーを飲み食いしてる。ウチのギルマスは直ぐに異変に気付いたけど、錬金術師と徒士の差か?
「パクパク?!」
シャルルの手が止まった。
「お前、何か盛ったか?」
気付くの遅っ!
「すみません。ここを秘密にしてもらいたいので盛りました。別に命に別状はありません」
「あぁそれは分かってる。オレも【鑑定】を使えるからな」
「では、効果の方も」
【鑑定】にも個人差があり、大抵の者は自分以外なら【鑑定】出来るが、希に自分も【鑑定】出来たりする者がいる。
それと【鑑定】の内容も千差万別で、武器関連や食べ物関連等に特化してる事もある。
「もちのろん。オレは自分のステータスも見れる」
因みにカイトは自分のステータスは見れない。だから、今まで黄昏だとは知らなかった。
「成る程、それで」
「自分の秘密を守るのは当たり前だ。気に病む必要なんかねぇよ。それよりも気になった事があるだけだよ。あれは畑か?」
ログハウスより数十m離れた場所に立派な畑があった。近寄ると、その広さは果樹園と思わせる程に大きいものであった。
「これもカイトが?!」
「えぇ、錬金術の応用で作りました」
作物の種類が豊富で柑橘類から始め、ブドウや桃等のフルーツ系、トマト・キュウリ・ジャガイモ・ニンジン等の野菜系が、ズラリ実ってる。
「錬金術で?」
「種を錬成しまして、埋めました」
そしたらスクスクと育ち、ほんの一週間程で収穫出来るまでになった。
「食べて見ます?」
「良いのか?」
「えぇ、感想が頂けたら嬉しいです」
先ずはトマトから。ポキッとトマトを収穫するとガブッとそのままかぶり付く。
「うまぁぁぁぁぁぁい。こんな旨いトマトは初めてだ。瑞々しく、それで果物みたいに甘い。最早、野菜を越えてフルーツだ」
俺もそう思う。
何故か錬金術で作った種から育つ作物は、どれも最高品質で、一度食べたら外で食べたくなくなる。
「それらを使った料理も出来ますが、食べます?」
「食べる!」
ログハウスの中に入り料理の支度に入る。キッチンも完備で全部錬金術で作製した。
「御主人様手伝います」
「助かる」
素材を掛け合わせて違う物を作る錬金術と様々な食材や調味料を計算して作る料理と何処か似ているところがあるとカイトは思ってる。
というより、何故か錬金術の技能の中に【調理】がある。
「今日は何を作りますか?」
「そうだな。カレーにしようか」
畑で収穫したトマト・ジャガイモ・玉ねぎ・ニンジンを適度な大きさに切ると寸胴鍋に水と一緒に全部入れる。
「ここにカレースパイスを入れれば完成だ」
スパイスは、野菜を収穫した畑とは別の畑で数種類栽培してる。何故か他の植物と育てると枯れてしまう。
数種類のスパイスを錬金術によってカレースパイスを配合した。一回、錬金術を使用せずに作ろうと試してみたが失敗してしまった。
「良い匂いだ」
【調理】の効果なのか?普通に作るよりも短時間で作る事が出来、圧倒的な美味しさで自分で言うのも恥ずかしいが、頬が落ちるような美味しさとなる。
「カレーをご飯の上に掛ければ、カレーライスの出来上がりだ」
錬金術で作製した炊飯器を開けると、モクモクと蒸気が立ち上ぼり米一つ一つが艶々と立ってる。
カイト自身も何故か分からないが、米を立ってる様子を見ると自然と微笑んでしまう。
 




