2話、錬金術師ギルド
窓から日の光が射し込んで来た。どうやら朝になったようだ。ギシギシと唸るベッドから這い出ると大欠伸と背伸びを同時にした。
昨日、ようやく安宿を見つけると、そのまま寝入ってしまったようだ。
安宿なだけにベッドは固く身体中が所々痛い。まぁ安宿だから仕方ない。
俺の職業による技能で野宿でも良かったが、街から出る正門が閉まる時間帯であったため仕方なく安宿に泊まった。
「さぁてと、これからどうしようかな」
ソロでも戦える。勇者シャイン・ディスカバリーよりも強いと自負している。
普通なら強いとは思わない。俺の職業:錬金術師は普通ではないと、この三年間自覚した。
だから、敢えて再度内心で言う。俺は勇者よりも強いと。だけど、いくら強くても今だにランクEのは変わらない。
そんな現実に黄昏ながら街を探索していたら、とある建物を発見した。はて?こんな建物あったけ?
「なになに、錬金術師ギルド?」
ギルドは、何も冒険者だけではない。商人、薬師、鍛治士等々複数あるものだ。
だけど、錬金術師ギルドは聞いた事がない。名前の通りなら錬金術師のためのギルドという事になる。
「ゴクリ…………入ってみるか」
辞める積もりはないが、このまま冒険者を続けても結果は見えてる。
錬金術師ギルドに入るのも一興だろう。そう思い、俺は錬金術師ギルドの扉を開いて入った。
建物の中は薄暗く不気味な雰囲気を醸し出している。何に使うか分からない怪しげな道具や材料が棚に陳列してる事も一因してる。
「キッヒヒヒヒ、いっらしゃい。どんなご用かね?」
受付らしきテーブルにローブを被った猫背の老婆がいる。子供がいたら泣き出してる。
「俺、錬金術師なんですけど」
「ギルド登録かね?何時振りだろうね。こんな若い錬金術師が登録するのは。キッヒヒヒヒ」
うっ……………やはり、止めようかな?そう思ってる矢崎、受付の奥から足音がしてくる。
「ギルマス、お客様ですか?」
ホワッツ?!奥から出て来たのは、このギルドの内装から想像出来ない程に美しい女性であった。
良く見ると耳が尖ってる。人間ではなく、森精族だと推測出来る。
それにしても美しい。この一言に尽きる。顔はもちろんの事、出るところはボンと出て引っ込んでるところはキュッと引っ込んでる。
「キッヒヒヒヒ、ギルドの登録に来たそうじゃよ」
「まぁ何年振りでしょう。さぁさぁ、奥で試験をやりましょう」
森精族の女性にドキドキしながら奥に引っ張られていく。
受付の奥に入ると、そこは様々な材料と道具が陳列してある。大釜から炉まで一通り揃っており、錬金術師から見ると興奮してくる道具と材料が、ズラリと並んでいる。
建物の外見からでは想像出来ない程に内装は広いようで十二分に作業スペースが確保されている。
キョロキョロ
「そうですね、ここを使ってください」
誰も使ってない作業台を宛がわれた。理科の実験で使うようなフラスコやシリンダー、アルコールランプ等々の道具が置いてある。
「ポーションは作れますか?」
「はい、作れます」
ポーションは、生命力を回復してくれる薬品だ。低級・中級・上級・最上級の四種類があり、錬金術師は低級…………作れても中級の劣化版までとされている。
因みに薬師だと上級まで作れて一人前だ。最上級で上位貴族や王族に支える事を約束される。
「それでは材料のキュルル草から低級ポーションを作ってください。その品質で、合格不合格を決めます」
「分かりました。えーっと」
「あっ、まだ名前を言ってなかったですね。ワタクシ、ルーシィと言います」
「俺はカイト━━━カイト・ハイデンバーグです。カイトと呼んでくれれば」
さてと試験に集中するか。キュルル草を材料に低級ポーションを作れば良いんだな?
・キュルル草
ポーションの材料になる一般的な薬草。低級1本、中級3本、上級10本、最上級20本が必要になる。
一応【鑑定】をしてみたが間違いないようだ。似たような毒草があるから要注意だ。
俺は、キュルル草を1本手に取り【抽出】という錬金術師の技能を使用する。
普通なら目の前にあるビーカーやフラスコで、じっくりと薬効成分を取り出す作業が必要になるが、【抽出】を使うとそれらの作業を一気にスルー出来る。
ただ、集中力が必要で少しの油断が命取り、失敗する可能性がある。
だが、今までに何回もやってきた作業なだけに慣れた手つきで、ものの数秒で1本分の低級ポーションが出来上がった。後は小瓶に積めれば完成だ。
「ルーシィさん出来ました」
「えっ?!は、早くないですか!」
立ち去ろうとした瞬間に声を掛けられれば誰だって驚く。カイトが手に持ってる小瓶を渡され、シーラは【鑑定】をする。