17話、インゴットの鑑定
口をアングリと呆然しながらインゴットを見詰める鍛治師ギルド:ギルドマスター。正気に戻るまで数分を要した。
「はっ!オレは一体?」
「これを見て気絶してたのよ」
目の前に積まれてるインゴットの山を再び目にする鍛治師ギルド:ギルドマスター。今度は気絶せずに耐えきった。
「ハァハァ、こんな量は聞いてない」
「言いましたよ?」
うん、確かに言ってた。
「ルーシィさん、本来なら後どれくらいの予定でしたか?」
「そうですねぇ。残り二週間はあったと記憶してます」
俺は早目に自分の分を終わらせたので余裕のある作業であった。だけど、みんなは作り終えた頃には、その場で気絶していた。
「それで勝負の約束はどうします?ニタァー」
「くっ!」
ルーシィの口角が上がり、錬金術師ギルドでは見せない悪い顔をしている。
「勝負は勝負だ。オレの負けだ。何でも言うと良い」
「それでは、ワタクシは帰りますのでカイトさんを鍛治師ギルドを案内出来ますか?」
「それだけで良いのか?」
「ワタクシを何だと思ってるのですか?キティーちゃんとワタクシの仲ではありませんか?」
「だから、その名前で呼ぶなぁぁぁぁぁ」
鍛治師ギルド:ギルドマスター改めキティーの声が倉庫内に響き渡る。
「うふふふふ、彼女の名前はシャルル・キティー・ウィンダー、鍛治師ギルド:ギルドマスターよ、ワタクシはキティーと呼んでるわ」
「シャルルさん、宜しくお願いします」
あんなに嫌がってるのに、俺にはルーシィのように呼ぶ勇気はない。呼んだら殺される。
「つまらないわね。まぁ良いわ。ワタクシは錬金術師ギルドに帰ってるから後宜しくね」
「はい、分かりました」
インゴットの品質を【鑑定】終わるまで待っていなくてはならない。
「カイトと言ったか?お前さんも大変だな」
何か同情された?!
「いいえ、俺は新人ですので」
「約束は約束だ。ちょっと待ってろ。おい、誰か来てくれ。これの【鑑定】を頼む」
他の土精族が倉庫に入って来た。シャルルなら区別付くが、男の土精族は顔や体つきが同じに見え誰が誰だか区別付かない。
「へい、ギルマスお任せくだせい」
「お前ら、早く済ますぞ」
一気に汗臭くなった気がする。
「おい、こっちだ」
シャルルに腕を引っ張られ倉庫を後にする。背は小さく小柄ながら腕力はあり、まるで大型犬に引っ張られるような感覚がある。
「ここが主にオレらが作業してる場所だな」
炉がずらりと並んでおり、見た限りだと十数基はあるだろうか?
錬金術師ギルドよりも断然こちらの方が多い。それに金属を叩く音が耳の奥底まで響く。
やはり武器を作る作業を直接見ると、カイトも男だ。何処か格好良いと思ってしまう節がある。
「これはスゴいですね。感激します」
「そうかそうか分かってくれるか?!ルーに言っても分かってくれなくてな」
ルーシィは、どちらかと言うと現場よりも研究をしてる方がしっくり来る。
「もっと近くで見学しても良いですか?」
「あぁ、良いともよ。武器作りが分かるヤツには悪い人はいねぇ」
「ありがとうございます」
近くに寄ってみると、職人という威圧と言うべきか?圧倒されてしまう。錬金術師ギルドには、ここまでの威圧感はなかった。
「やはり、そうか。シャルルさん、すみません」
「シャルルって良いって」
「それじゃぁ、シャルル。炉の火炎石が少ないのでは?」
「なっ?!ただ見ただけで分かるのかい!」
「まぁ違和感程度には」
カイトが見たところ、あれでは持って数日の内に炉から火が失くなる。よっぽど火炎石が需要に対して供給が追い付いてない。
「俺がやりましょうか?」
「やるって何を?」
「もちろん火炎石の補充ですよ。ちょうど、ここに火炎石があります」
「えっ?!マジで火炎石?」
シャルルに火炎石を手渡し、穴が開きそうな程見ている。火炎石を凝視するシャルル、見ててめっちゃ怖い。
「でも、ウチには補充出来るもんがいねぇしよ」
「俺が出来ます」
「えっ?マジ」
「えぇマジです」
「うぉぉぉぉぉ、目の前に神様がいらした」
カイトの腕をガシッと鷲掴みし、涙を流した。端から見たら少女を泣かしてるオッサンに見える。
嬉し涙だろうけど、周りからの視線が痛い。チクチクと心に突き刺さる。
 




