15話、勇者、新しい仲間を募集する
━━━━勇者シャインside━━━━
カイトを追放してから3日程が経った。カイトと一緒に攻略を行った迷宮でのドロップ品を換金した金と遺物類を山分けしたところでカイトの抜けた穴を埋めるために新しいメンバーを募った。
「ようこそ。勇者パーティー金の竜へ」
「へへっ、よろしく頼みます。オレは、斥候の上位職:諜報員のカゲロウであります」
「あぁ、よろしく頼むよ。カゲロウ」
カイトが抜けた今、勇者パーティーに足りないのは探知能力だとシャインが判断した。
カイトは、いつもシャイン達が魔物や罠を感知するよりも早く気付いていた。そればかりはカイトには感謝している。
ただ、それだけで自分達と同じ割合でお金や道具を分配をしていたと馬鹿馬鹿しくなり、3日前にクビにした。
だけど、気が付いていない。カイトがいち速く探知出来ていたのは錬金術で作製した魔道具のおかげだと。
「さてと準備が整いたしダンジョンに潜ろうとするか」
勇者シャインのパーティーが今から潜ろうとするのはSランクダンジョンの1つである『ヤミノタンクツシャ』だ。
洞窟と遺跡が入り雑じったダンジョンで、暗闇の箇所が多く探知が難しいところから別名:斥候殺しと呼ばれている。
「到着だ。ルーフィン光を頼む」
「【光玉】、これでいくらかは視界が広げられます」
「カゲロウ、先に行けるか?」
「お任せくだせぇ。オレは、夜目が効きますので」
斥候職の特徴らしく軽い身のこなしで先を見に行く。【探知】という魔法があるが、どういう訳か『闇の採掘者』では効き難い。
だから、誰かが1人先導を切って見に行く必要が出て来る。今回ここを選んだのはカゲロウ感知能力の実力を量るためで、問題がないようならこのまま攻略を進める積もりだ。
「ただいま戻りました。この先、およそ100m先に大コウモリが数匹がおりますぜ」
「トラップの類いは?」
「ありませんぜ」
「よし、進もう」
カゲロウを先頭にシャイン→ルーフィン→シャルロット→ギルの隊列で歩いていく。
(あれですぜ)
カゲロウが指差す方に暗くてわかり難いが、大コウモリが天井にぶら下がってる様子が見て取れる。
コウモリ系の魔物は、音に敏感で足音にさえ反応する程だ。
一回反応しちゃうと一斉に飛び回り討伐に時間が掛かる要因となる。だから、こういう時は【念話】を使う。
小声で話していても反応してしまうからだ。
(よし、みんな準備を良いか?)
(えぇ良いわよ)
(何時でも良いぜ)
(勇者シャイン様の御心に)
(シャインの旦那に任せますぜ)
コウモリ系の魔物は、音に敏感だが光にも敏感だ。
急激の光を直視させると視界を防げるのと同時に一時的に麻痺に似た状態となる。
(行きます。【光玉】出力最大)
照明として使っていた【光玉】よりも数倍強い明るさを放った。
これにより天井にぶら下がっていた大コウモリは、あまりの光により地面へ落下する。そこを狙い勇者シャイン達は攻撃を仕掛けた。
「喰らえぇぇぇぇ【断罪の剣】」
「引き裂きなさい【風の刃】」
「どりゃぁぁぁぁ【グランドクラッシュ】」
「貫きたまえ【閃光線】」
ものの数分で大コウモリは沈黙した。換金出来るであろう牙、羽根の膜、魔石を解体し取り出した。
「流石はSランクだぜ」
「よし、回収は済んだな。先に進もう」
暗闇のせいで他の迷宮よりも進む速度は遅いが順調に進んでると言っても過言ではないだろう。
先程のようにカゲロウが先陣を切り、先方を探知して戻って来るのを繰り返しながら進んでいく。
この連携で進んでからおよそ一時間、二層に降りる階段を発見した。だが、降りる前に休憩を取る事にする。
「ここら片で休むとしよう」
次のエリアに続く階段付近はセーフティーエリアとして魔物は寄って来ない。
「カゲロウ、ポーションを配ってくれ」
「了解だぜ」
カゲロウから配給されるポーション。シャルロットとルーフィンは魔法職なので、マナポーションも追加で配る。
「「「「ゴクン…………うっ」」」」
カゲロウを除く勇者パーティーメンバーは、今にでも吐きそうな顔をしている。
「ポーションって、こんな味だったか?!」
「何を言ってるんすか?昔からこんな味ですぜ」
慣れた様子でカゲロウはポーションを飲み干した。空になった小瓶をその場で投げ捨てた。
「カイトから配られたポーションは、もっと果物の味がして飲み易かった気がする」
 




