第5話 リザードマン強襲
朝早くエルフの里の広場に多くのエルフが集まっていた。かつて無い程大掛
かりなリザードマンの討伐隊が組織されて各地からエルフが来ていたのだ。
「凄いな。この森にこんなにもエルフが住んでいたとはな」
「ここにいるのはうちの里の者だけじゃない。例えばあそこに見えるのはマイ
ンツの森の者で隣は東のエクスター、その隣は南のブリュンタークだ」
「かなりいるけど討伐隊は何人位になるんだ?」
「4マンセルで12隊だから50人程かしら」
「ふぉおまんせる?」
「4マンセルというのは・・・」
4マンセルとは、エルフ族の伝統的な小隊編成だ。剣と盾で前線を維持する
エルブンナイトと罠スキルを駆使し敵の動きを封じるフォールン、潜伏しつつ
周辺を偵察し、遠くから敵を射抜くスカウトそしてヒーラーのエルダーセイン
トの4人編成の事だ。
(なんかファンタジーRPGゲームの設定まんまだな)
「で、お前はどこの隊所属なんだ?」
「私は誇り高き守護者だからな小隊には属さない」
「ふ~ん、という事はお前ボッチなんだな」
「ボッチとはどういう意味だ」
スレインには言葉の意味が分からなかった
「ボッチっていうのはな、孤独って事だよ」
「なんだと!私は孤独なんかじゃないぞ」
「まあ落ち着け。実はその4マンセルとやらに、一人足りない小隊が有るらしい
んだが、どうだお前入ってみないか」
「え?そんな小隊聞いてないぞ」
スレインは周りを見回しメンバーを確認し始めた。だがそんな小隊は見当たら
ない。スレインは再び京矢に向かって掴みかかろうとする。
「キョーヤ、適当な事言うな!そんな小隊ないぞ!」
「いやいやいや。スレインさんよ、あんた一つだけ見落としてるよ。それは俺達
の事だ!」
スレインはキョトンとして固まった。京矢はニヤニヤしながらスレインの周り
を廻り始める。
「まあ聞けよ。俺たちは基本カタリナと俺しかいない上にアタッカーは子供のピ
ッポだ」
「ピッポは子供だけど戦士よ」
ピッポがムキになって京矢に詰め寄る。それを京矢は片手でいなす。
「そこにエルフの中でも最強と言われるスレイン様がさ、仲間になってくれれば
どれだけ頼もしいか」
「そ、それは・・・」
スレインは京矢に初めて褒められた気がしてとても嬉しかった。なんだか分か
らないが京矢にそんな風に言われるとその気になって来る。
「ま、まあ良いだろう。私がその最弱パーティに入ってあげようじゃないの」
(ちょろい)京矢はニヤリとした。(なんせ初めての戦場で女子供と一緒のパー
ティじゃあ、どう考えても死ぬだろこれ。誰か盾役を引き込まないとって思った
けど良い肉壁役が余ってたもんだよ。これで楽できるな。)
「それでは出発するぞ!」
スレインの父カレインが号令をかけるとエルフ達が馬に騎乗し始め、リザード
マンの住処が有るドーラ渓谷に向け出発した。エルフの一行はラーディッシュの
森を出ると街道沿いに順調に歩を進める。夕方にはベルデの森の手前辺りにまで
来た頃、今夜の野営地の偵察に出ていたスカウトが帰ってきた。
「皆聞いてくれ。今日の予定はジョーヌの森までだったが今夜はあのベルデの森
で野営する。」
「やっと行軍終わりかよ。全くとんでもない位進ませるぜ。おかげで尻が焼け付
くように痛いよ。」
「キョーヤは馬に乗るのは初めてだったのよね。でもうまく乗れていたじゃない
私が初めて乗った時なんか1刻も乗っていられなかったわよ。ほら傷薬貸してあ
げるから塗りなさいよ」
「おお、それは助かるぜカタリナ」
「あたしが塗ってあげてもいいのよ。キョーヤ」
「いいよ自分で塗るから」
スレインは寂しそうな顔で京矢を覗き込んだが無視されたので仕方なく隊長の
カレインの所に戻って行った。
「父上、なぜ今夜はベルデの森なのですか。予定だとこの先のジューヌの森まで
だったのに」
「それがな偵察に出たエンブリオが、ジューヌ川の橋が崩れかかっていたと報
告してな、夕方にその橋を渡るのは危険だと思ってここにしたのだ」
「エンブリオが・・・成程。それにしても橋が崩れかかっているとは不吉な」
遅れを取り戻す為に明日は朝早く出立する事となり、夕餉を早めに終わらせ
て就寝した。皆が寝静まった頃、見張りの灯火が消えた。続いて全ての見張り
の灯火が消えてゆく。それと共に周辺から一斉に咆哮が響き渡る。
「かかれー!」
暗闇の中からリザードマンが一斉に襲い掛かる。エルフは何が起きたか分か
らず飛び起きて逃げ惑う。リザードマンはそれをただ狩りつくすだけだった。
「何が起きてるんだ」
「キョーヤこちらよ。こちらに逃げて」
京矢は暗闇で何も見えなくて方向も分からなかった。しかしカテリナが声を
掛けてくれたお蔭で自分の位置が理解できた。取り合えずまず自分のパーティ
と合流する事にした。
「カタリナ、ピッポそれにスレインはいるか?」
「スレインは前戦でリザードマンを足止めしてくれているわ。ピッポはここ」
そう言うと後ろに向き直って背中を見せた。ピッポはカタリナの背中で鼾をか
いて寝ていた。
「ピッポ起きろ!お前は1人前の戦士じゃあなかったのか」
「ん?キョーヤおはよう」
するとピッポはすかざず京矢の背中乗り移った。
「しょうがねえな。じゃあスレインを援護しながら撤退戦始めるか」
「どうするの?」
「この辺りに洞窟のような・・・そうだな出来ればトンネルみたいな場所はある
か?」
カタリナは周りを見回しながら少し思案した。(この辺りはあんまり良く知
らないのよね)
「確か山の方に炭鉱跡が有ったと思うけど」
「炭鉱跡かそれは良いな、じゃあ皆をまずそこに移動させよう。それとお前、
聞いてなかったけど何が出来るの?」
「私はアークウィザードだからヒールと水魔法が得意よ」
「おおそれは良いな。俺が合図したら、リザードマンの足元めがけて水魔法
を打てるだけ打ってくれ」
それから京矢は前線に向かい奮闘していたスレインに合流した。装備に多
くの傷が付いているが大きな傷は負ってはいないようだ。
「大丈夫か、スレイン」
「こんなの大した事は無い、それより前線がかなり押されている。」
前方に眼を向けると確かにかなり押されていて今にも崩壊しそうだった。
「スレイン、たぶんこの戦はもう負けだ。だからここからは撤退戦に移った方
が良いと思うんだが」
「確かに私もそう思う、だが撤退となると父上がどう仰るか」
「そこはお前が何とかしてくれよ」
「何か策はあるのか」
スレインには何故か分からなかったが京矢には期待出来るの何かを感じた。
「何とかするしかないじゃん」
そう言って京矢は微笑んだ。