第4話 ラーディッシュの森
京矢達はスレインに案内されてエルフの里に着いた。スレインは里の広場に
京矢達を待たせて、ひと際風格のある家の中に入っていった。周りを見渡すと
里のエルフ達が、京矢達を冷ややかに見ている。
「う~ん、何か針のムシロだな俺達」
「何かあったのかしら」
京矢とピッポは理解出来ないと言った表情で言った。
「それは私の事を見ているからなの・・・」
「カタリナ大丈夫さ。俺達は分かっているからさ」
京矢はそう言うとカタリナの肩に手を置いた。
「私はこの村で生まれたんだけど、はみ出し者だったから住んでいたのは村の
中ではなく森の端だったの。だからこの村のエルフには殆ど面識ないんだけど
ハーフエルフだからはぐれとして見られているの」
「お前結構ハードな人生歩んでるんだな、もっと話してくれても良かったのに」
「話すタイミングがね。キョーヤの事の時、言おうと思ったけど、あの時はス
レインが帰って来ちゃったから・・・」
その時、スレインが家の中から出てきた。後ろには明らかに風格の違う老いた
エルフが続いてその後ろにも何人かのエルフがぞろぞろと出て来た。
「カタリナ、あれが里の長か?」
「そうよ。あれがラーディッシュの森のエルフの長、アルケイン様。齢200歳
と言われてるわ、伝説的なエルフで私もあの人が居たから、ここまで生きて来ら
れたの」
「200歳はさすがに言いすぎだろ。どう見たって50そこそこだぜ」
「エルフは長命なの平均寿命なんて130歳位なのよ」
「そんなに長生きなのかよ。すごいな」
エルフの長はゆっくりとこちらに向かって歩いてきた。そして、カタリナの前
に立ち、おもむろにカタリナを抱きしめた。
「ちょっ!!!」
「何をしてるんですか。おじい様!」
カタリナは身構え、スレインが長を引きはがす。
「ああ間違えちゃった。耄碌したなあもう。えへへ」
「まあた始まった、このエロじじい」
エルフの長は悪びれずニヤニヤしている。
「ごめんなさいね、びっくりしたでしょ。最近こんななの」
「ちょっと驚いたけど、気にしてないわ。アルケイン様、お懐かしゅうござい
ます」
カタリナはエルフの正式な挨拶の仕方でアルケインに膝まづいた。
「おお、お主か。懐かしいのう母君は息災か?」
「母は10年前に亡くなりました。村に居た頃は何かとお世話になりました」
「そうか。お主らには苦労を掛けたな。しかし、こんなに育っていたとは」
というや否や今度はカタリナのお尻を触ろうとする。
「おじい様!」
「まあまあ。スレインよ、只のスキンシップじゃ、気にするでない」
京矢はそれを見て合点した。スレインが京矢と出会った時、体を触ってきた
事を思い出したのだ。(なるほど、あれは遺伝なんだな。そっくりじゃないか)
続いてアルケインは京矢の方に向き直り話し始めた。
「さて、ヒューマンのお方。リザードマンをこの村から退けてくださったとか。
礼を言いますぞ」
「いや、俺はただ目の前の危機に無我夢中で」
京矢はそう言いながら、つい帽子を取ってしまった。その瞬間、周りがざわめ
く。明らかに何かおかしい。その場に座り込む者さえいた。
「おおおおおおおおお。その頭、あなた様はまさか・・・」
「そう言えば話して無かったわね、おじいちゃん。あの方はそうなのよ」
「そうだったのか。そういう事なら早く言いなさいスレイン」
アルケインはそう言ってひれ伏した。それを見て里の者が一斉にひれ伏す。
「何が起きたんだこれは」
「その頭こそ、我がラーディッシュの森のエルフに伝わる勇者の証」
「俺は勇者なんかじゃねえ。この頭は代々遺伝のもので俺は戦う事なんて出来
ないし、それに勇者って何すれば良いんだよ?」
「言い伝えでは、頭が光り輝く勇者が現れたら従えとなっておりまして、魔王
討伐の時はお手伝いをせよという事らしいですじゃ」
「魔王討伐って、まあ俺がその勇者かは判らないけど、その時が来たらエルフ
族は俺をバックアップしてくれるって事で良いのかな?」
「バックアップの意味は解りませぬが、お言いつけに従います」
「ほう、それは良い事聞いたな」
京矢はニヤリとしてスレインをみた。
「それで申し上げ憎いのですが・・・」
「ん?他に何か用あるのか?」
アルケインは話した。最近ラーディッシュの森でリザードマンがエルフを攫
っては奴隷商に売り飛ばすという事が横行しており、その為リザードマンの討
伐を考えていたが人手が足りないので手伝って欲しいというのだ。
「えー、面倒くさいな。っていうか、それって俺達に何かメリット有るの?カ
タリナは嫌われ者だし、ピッポは関係者ですらない。俺に至っては逆の立場で
あんたら俺を助ける役割なんじゃないの?」
「仰る通りでございます。しかし最近共和国から若い男エルフを北方警戒の為に
出せと言われまして、人が足りない状況なので御座います。当然、討伐の対価は
お支払いいたしますし、なんならキョーヤ様の夜伽なども・・・」
京矢はピクリとした。しかし首を振りながら、
「俺の事は良いよ。お金は持って無いから当然貰う。それよりさカタリナの事な
んだけど、もうはぐれとか言わないで欲しいんだ。だって寂しいんだろ、カタリ
ナだって親戚みたいなもん何だから、仲良くしてやってくれよ。父親が何者だろ
うがこいつには関係無いんだし」
「分かりました。キョーヤ様の仰る通りにいたします。これからはカタリナもこ
の里の一員だ判ったな」
そう言うとアルケインは里のエルフ達に言い聞かせ、一同はそれに従う事を誓
った。
「有難うキョーヤ、本当は諦めていたの。でも夢が叶ったわ」
「当然の事を言ったまでだよ」
「流石私のキョーヤね」
そう言うとスレインが腕に抱きついて来た。すかさずカタリナがそれをはがし
にかかるかかる。
「『私の』じゃあ無いわよ。それにちょっとあんた離れなさいよ」
「キョーヤ流石ああああ!」
ピッポが京矢の背中に飛び乗る。
「やめろおおおおおおおおおお!」
突然降ってわいたリザードマン討伐への参加だが京矢には不安は無かった。逆
に何か楽しみみたいなものが湧いてくるのであった。