ラブヒートアイランド
僕のココロは冷めきっていた。
それは少し前のこと。
冷たい氷水にどっぷりと浸かり。
血流の滞りを感じながら生きる。
人生の大半をそれで消費してきた。
でも今は違って真逆だ。
煮えたぎって煮えたぎって。
燃え上がって燃え上がって。
火照り切って冷めきらない。
恋というものに嵌まった。
美女という存在に陥った。
美しいものに一度浸かると。
もう脱出は困難になる。
彼女は他のひととは違う。
内面から溢れる麗しさ。
それが僕の身体にいる悪いものを。
焼き尽くしてくれている。
そう思うほどの恋だった。
この世界は僕の感情だ。
僕の感情を映したような世界だ。
悲しくなれば雨が降る。
喜びを放てば晴れ渡る。
怒れば稲光を引き起こす。
いつからかそうなった。
原因はよく分からない。
自然環境といつの間にかリンクしていた。
このままではみんなが干からびる。
みんながカラカラに乾ききる。
でも彼女のココロが綺麗な限り。
僕は熱エネルギーを排出し続ける。
そんな未来になるだろう。
彼女は僕にいつも話し掛けてくれた。
一人でいる僕を気に掛けてくれた。
他の人が僕に背を向けるなかで。
彼女だけがまっすぐにまっすぐに。
こちらを見ていてくれた。
クールさと暖かさを持ち合わせて。
彼女と深く交わるにつれて。
僕は氷水にも熱湯にも属さなくなった。
春の木洩れ日のようなココロ。
それをいつの間にか手に入れていた。
ラブヒートアイランド。
それは愛されてこなかった僕の。
妬みから生まれたモンスターだった。
今はごく普通の人間で生きられている。
「愛してるよ」
僕は彼女にそんな言葉を漏らした。
人生で初めてかもしれない。
僕が誰かに愛を投げ掛けたことは。
愛を投げ掛けたあと。
彼女は頬を僅かに赤らめた。
それから少し経ったとき。
生ぬるい熱波のようなものが。
どこからか襲ってきた。
少しの沈黙が流れたあと彼女は。
僕を優しく抱き締めてくれた。