1話 検査をする魔王
光が弱くなっていく。
耳も聞こえるようになってきた。
「どうやら無事に儀式は終わったようだな」
「はい」
ようやく聞こえた声は2人の男の声。1人は偉そうに喋っている中年小太りの男。もう1人は、お爺さんみたいな声だった。
周りを見ると、いかにも『玉座の間』みたいな部屋だった。
僕らが座っている床には魔法陣が書かれている。
そして僕らの周りには、鎧を着た衛兵と思われる人達。
「ここは何処だよ!」
「あんた達は誰だよ!」
「みんな無事か!」
戸惑いを隠せないクラスのみんなの声が飛び交う中。
「静まれ‼︎」
その一言で、あらゆる音が消えた。
数秒間無音が続いた。口を開いたのは、お爺さんだ。
「皆さま、突然の転移申し訳ございません。」
このまま、この人から説明を受けた。
やはり僕らは、転移していた。理由も、よく聞くような『魔王の討伐』ということだった。そして、僕らの中に『勇者』の資格を持っている人がいるということ、その人と一緒に召喚された者は『勇者パーティー』に入ることになるとも聞いた。
そんな流れで、勇者を探すために検査を行うことになった。
みんなが不安になっている中、僕はワクワクが止まらなかった。なぜなら、こういう展開で勇者になるのは、僕みたいな奴だと相場が決まっている。
検査方法はかなり簡単で、薄汚れた紙に自分の血を垂らすだけで良いらしい。
みんなが怖がってやらない中。
「じゃあ、俺から行くぜ」
冬馬が名乗り出た。
正直こいつは、サポーターとかになると思う。
冬馬が紙に血を垂らす。
「おっ、なんか出てきた」
やはり、ステータスを見るための紙だったらしい。
「えっと…。職業は……勇者だーー!!」
「えーー、冬ちゃんスゲー!」
「櫻井くんすごいね」
「流石は、冬馬だな」
絶対あり得ないと思っていた冬馬が勇者になった。
「よーし、みんな!俺に続けー!魔王を倒して英雄にしてやるよ!」
この声で、みんなが賛同した。(僕以外)
「次は、僕が行くよ」
今度は蔵馬だ。
「えっと…。聖騎士?」
「聖騎士だと!?」
王様が驚きの声を上げる。
聞けば、この世界では、聖騎士になるための修行が厳しいものらしく、誰もやってくれない職業らしい。
でもその分、強さも勇者と肩を並べるくらい強いみたいだ。
この2人の後に続こうと、クラスのみんなが「やりたい」と言い出した。
「よし、俺は戦士だ!」
「わたしは、魔法使いよ」
「僕は、暗殺者!」
色々な職業を聞く中。
「わたしは…聖女⁉︎」
「「「えーーーーーー」」」
それを聞いた誰もが驚きの声を上げた。
話によると、
聖女とは、この世の全ての回復魔法・サポート魔法を使いこなす事が出来る人に与えられる職業らしい。
だからこそ、この職業になれるのは1億人に1人の確率らしい。
そして、一番最後は僕がやることに。
血を垂らして浮かび上がった文字は、スタータスを表していた。
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名前:伊神晴哉
年齢:16歳
職業:魔王
魔法:転生魔法
スキル:経験値アップ
称号:最弱の魔王
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「…え。ま…魔王⁉︎」
このペースで、毎週月曜日に投稿しようと思います。
この物語は、まだまだ続けるので、もし良ければ次の話も見てください。
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