桜祭り 1
今でも夢に見る。あの日、あの時のあの行動が人生で最も愚かで忌まわしいと。
あの時、ほんの少しでも今のような異常性があれば…自覚はしている。
でも、もう戻れない。戻る気はない。このまま、これ以上に壊れてしまおうともあの日のあれを清算するまでは…
「進まない…」
俺は三度目の同じ信号による足止めにイライラしながらコンコンとハンドルを指で叩く。後部座席では駄犬が横になり小さく鼾を掻いているのが更に怒りに拍車をかけた。こいつのせいでこんな目にあっていると言うのにいい気なものだとバックミラー越しに睨みつけながらマッチを擦って煙草に火を点けた。途端に僅かな火薬のにおいと煙が車内に広がる。
それはいつもの日常だった。午前中の講義を受けようと昨晩セットしていた目覚ましに起こされ身支度を整えながらテーブルに置かれた空の小皿を水につけて駄犬にモーニングコールを入れてやる。俺と同じ講義を受けるから起こせと言われていたからだ。普段、心霊スポットに行くときは起こさずとも夜が明ける前には人の玄関の前で無駄吠えを始めると言うのに、興味が薄いといつもこうだ。途切れることなく鳴り続ける呼び出し音が耳障りになり始めたころ「ふぁい?」と言う気の抜けた声がスピーカーから聞こえる。俺は「三分間待ってやる」と大佐よろしく声を張り通話を切断した。程無くしてお座成りに身支度を整えて駆けてきた駄犬を乗せ車を出したのだがいつもより五分しか違わないのに俺たちは渋滞に捕まってしまった。学生や会社員。最近は作業着を着た建設関係の人をよく見るなぁと窓越しに対向車を眺めながら煙草を灰皿に押し付けた。俺が使っているのは片側一車線の入り組んだ細道。都会でもない癖にお通りにはこの時間どこから出てきたのか聞きたくなるほどに大量の通勤車両が現れる。そんな大通りから一本ずれた近道的存在だった脇道もこの時間では俺と同じことを考えた何十台もの車をおびき寄せて短い時間しか青にならない信号をにて大渋滞を引き起こす罠へと変貌した。こんなことなら素直に大通りを行くんだった。そう思いながら再び懐へと手を伸ばしかけた時、あるものが視界に入る。
『道路拡張反対!静かで安全な暮らしを!』
杭に打ち付けられた板にペンキかなんかで書き殴られた手作り感満載の看板。確か、この辺に高速道路の降り口かなんかが出来たせいで交通量が増えて、そのせいで事故やトラブルが増えたとかなんとか。それに伴う道路拡張やバイパス整備が行われるとかという話もどこかで聞いた気がする。興味のない事には無頓着だと自覚はしていたが、思い返してみればあちらこちらで道路が中途半端に広がったかと思うと住宅の敷地にぶつかり、途切れ、暫く行った場所から再開されたり、中途半端に買収されてぽつんと更地になったまま何年も放置されたように草が伸び放題になった土地をよく目にする。どうも地元住民からの反対で工事が進まなかったらしい。最近やたらと作業服を着た人間を目にすると思ったが、どうやら少しづつ工事が再開されているのかもしれない。今も、作業服にヘルメットを被った男が他の作業員をどやしながら図面を睨みつけている。俺が良く通る道で作業をしてるんだ目にしているのは当たり前か。早く完成すればこの渋滞も無くなるのだろうか。付近の住民には悪いが早く完成してくれと思ったあたりでやっと信号を抜ける。これは遅刻かな。そう思いはしたが急ぐことなく大学へ向かった。
「ケンの字や。」
無事講義に出た後の事だ。
あぁ、こいつか。その声を聴いてまず思ったのは助かるな。次にそんなことを思った自分にもそう思わせるこいつにも腹が立った。まぁ、こいつとも長い付き合いだ。僅かながらも、極極ほんの毛の先ほど頼りにしている部分も無きにしも非ずといった感じだが。その癖、それが割と俺の中で重要な事なのだから質が悪い。重要なのに結果はほとんど出ない。その癖、それを盾に馬車馬のごとく使われるのだから堪ったものではない。ある時、死なば諸共。圧倒的に分の悪い賭けのような交渉の結果、僅かな優待と引き換えに奴隷から従僕に格上げされたのは記憶に新しい。すべてが片付き、思い残すこともなく白寿まで生きたらこいつを殺して俺も死んでやる。
「なんだよクソ狸。」
俺はあれば便利かなととあるサークルからうば…譲り受けたサークル室の窓際で先日遭遇した妖精について資料をまとめていた。あらかたまとめ終え、昼めしでも買いに行くか、学食で済ませるか悩んでいるときにこいつはやってきた。
「講義をサボってまでまとめる資料なんて先日の旅行は余程の収穫があったと見受ける。気になるのう。」
百八十を超す長身に吹けば飛ぶような薄い体。枯れ木のような手足に病的に白い肌。整った顔立ちに黒縁の眼鏡を乗せてそいつはフラフラとこちらに近づいてくる。その様子がなぜかあの妖精の姿を脳裏につらつかせ気味が悪い。
「ちっ、ほらよ。催促なんぞ無くともお前には見せるつもりだったよ。」
俺はあくまでも自主的に、善意で、自分様にまとめたノートを差し出す。後、受ける予定だった講義には間に合ったよ。と言うか言うまいか逡巡したがやめた。
「いやぁ、忝い忝い。」
そう取って付けたような口調でノートを受け取ると手近な椅子に腰を下ろしてさっそくパラパラと読み始める。
「おい」
「なんだね?」
「仕事だろ?忘れんな。」
こいつがケンの字なんて甘えた声を出しながらやってくる理由なんてそれくらいしかない。まぁ、今や俺の生命線でもあり、月末や遠出した時なんかは寧ろこっちから催促しそうになるくらい当てにしているのも事実だが、正直報酬の取り分を聞いた時は後先考えずぶん殴ってやろうかと思ったくらいこいつにはいいように使われている。今のところは利害も一致しているし報酬の見直しもさせたのだからもう数十年は生かしてやるつもりだ。
「あぁ、そうであったな。」
そう言ってクソ狸は懐を漁ると何やら封筒のようなものを取り出し投げて寄越した。
「こっ!……。」
変な音が出た。受け取った衝撃で封筒の口から僅かに覗くそれは正しく金。お札だった。それも厚みが一センチ近くもある。確か一万円札のピン札の厚みが……。そんな事を興奮しながら考え、封筒から中身を取り出す。…そこにいたのは福沢ではなく野口だった。いや、いいよ?十分よ?働きすぎたのか野口たちはよれよれで百人どころかその半分にも到底届いてないけど、貧乏学生からしたら月末にこの額は十分大金さ。でもな、上げて落とされたこの感情は到底抑えられそうにない!
「週末のお祭り知っておるか?」
一言文句を言ってやる。そう思った瞬間に被せられる質問。出鼻をくじかれた。
「確か、桜祭りだろ?三日間くらい続く。それが?」
行った事はないがこの時期になると商店街やあちこちの通りに桜祭りという文字と日付が書かれた華やかなのぼり旗が乱立するので嫌でも目に入る。そして、噂も。
「ならば、知っておろう?百年桜の下に眠る女の話を。」
「まぁな。でもそいつはガセだったぞ?」
俺はその噂を知っていた。ここ数年のうちに生まれた噂らしいが、元々オカルト好きなため興味本位に祭りとは全く関係のない、人の少ない時期に何日か通ったことがある。その結果、噂はガセだと結論付けた。
「まぁ、聞け。火のないところに煙は立たぬと言うであろう?いろいろあるのだ。ライトアップされた木の下に佇む女が出たとか、桜の花から滲む赤い血の密だとか、他の木は全く花を咲かさない年にその桜だけは満開だったとか。桜の木の下には死体が埋められているからだとか。」
桜の木の下には…確か、その都市伝説は梶井基次郎の『櫻の樹の下には』と言う短編小説がベースとなっていたはず。何でも、桜が美しいのには理由があるはず。桜の美しさに不安を覚えた主人公が美の対極にある醜い物がその下に眠っていると想像することでその不安を解消する話だったか。で、その醜い物と言うのが死体だ。
理科の実験でこんな事をしたことがある。色のついた水で白い花を育てるとその色に染まるという実験だ。そして、桜にはピンクではなく真っ赤な花を咲かせる種類がある。寒緋桜だ。沖縄では確か数多く自生しており沖縄に住む人にとって桜と言えばと聞くとその桜と答えるらしい。そんな桜を見慣れない人が見たらこう思うだろう。あの桜の下には死体が埋まっておりその血を吸ってあの花を咲かせたのだと。こうして、都市伝説は多くの尾ひれを付けて広がっていく。
とまぁ、話を戻すとして、今回の件に出てくる百年桜。これについては俺が自らの目で確かめたから霊的何かとは無関係と見て間違いない。何かの見間違いか何かが都市伝説に結びついてしまい口コミで広がってしまったのだ。
「それで。ここ数年。毎年、目撃者が出ておるのだ。一度話を聞くだけでも行ってはくれんか?もう前払いの報酬はいただいてしまっておるし。」
そう言って俺の手元を指さす狸野郎。
「返そうか?」
俺は無駄と知りつつ手元の封筒を差し出してみる。
「今回の仕事がケンの字が苦手とする状況だと分かってはおる。だが、今回の依頼は悪くない伝手でどうしても縁を持っておきたいのだ。小生が頂いた仲介料はすでに使っておるし……返してくれるなら受け取るが、今回は拒否権なんぞ用意しとらんぞ?」
「ふぁっく。」
俺は悪態をついた後で依頼について必要な情報を聞き出してサークル部屋を後にした。
それから適当に講義に出たり駄犬に強襲されたりで数日が経ち。桜祭りを前日に控え俺は依頼者と会うことになった。教えられた住所に向かうとそこは祭りの会場でもある古い神社だった。狭い道路に面した十数段の石段を上がり鳥居を潜った先に広がる境内。鳥居を潜った瞬間すぅと何かを通り抜けたような感覚があった。不快感はない。依然来た時もそうだったがむしろ清められたと言うか森に入ると気持ち通いセラピー的な何か。例えが難しいが流石は神社とでもいうべきか、気分が良くなったのを感じた。そして辺りを見渡す限りの桜に囲まれ、その木々の間には明日の祭りに控えて押し込むようにいくつものブルーシートに覆われた屋台が立ち並ぶ。そして正面奥。この祭りのメイン。あれも桜だ。幹回りが俺が手を広げても届かないほど太く、見上げる程高く、幾重に伸ばされた太い枝に淡いピンク色の花をこれでもかと纏い風に揺られている。はらはらの舞い散る花びらを見ているとどこか違う世界を眺めているような不思議な感覚になる。他とは全くの別物だ。太い枝が広がり、自重で折れないように枝支棒で支えてあり下から見ればそのまま淡色の波に呑まれそうな恐怖…いや、ぞっとする程美しく幻想的だ。桜がこれほどに成長するに掛かった百年と言う年月の重みを肌でひしひしと感じた。この桜はその長い年月、ここに立ち替わりゆく景色を、人を、時代を見てきたのだ。不思議だ。桜とは江戸時代くらいの頃は不吉なもの、縁起が悪い物とされていた。咲いた花があっという間に散ってしまうことから人の死や物事の失敗を連想され、散った花弁がすぐに色あせる事からは心変わりが連想され桜の季節の結婚は避けられていたとも聞く。他にも、墓地や戦場跡地に良く植えられることから例の都市伝説の尾ひれの一端を担っているわけだし、家の庭に植えるなとか、栄養を多く必要とするためその周囲では他のものが育たない上に腐りやすく剪定すると枯れてしまうから育ちたい放題で邪魔だし、側溝やブロック塀位なら軽々持ち上げてしまうなど実に言われたい放題だ。それから、詳しくは忘れたがいつ頃からかサクラのサは田の神様、クラは神様の座る場所を意味しているという説が生まれた。つまり、サクラは神様が山から下りてきた時に一旦留まる依代とされ、そのため、桜が咲くことは神様が山から下りてきた証などと言われ、皆で集まり、お酒や食べ物をお供えしていたという。また、当時の人は桜の開花状況を見て、田植えの時期を決めていたとも言われ、美しい桜の花が咲く時期を、田植えに適切な時期と考えていたようだ。そんなことから、桜は鑑賞するというより、神様が宿る神聖な木であり、それが祭る対象となっていったらしい。勝手に蔑まれいつの間にか祭る対象に。実に人間とは勝手な生き物だ。そうは思わないか?などと、何故かいつの間にか感傷的になっていた俺に背後から何者かが近づいてくる気配に気がついた。
「君かな?今回の依頼を受けてくれたキツネさんと言うのは。」
振り返った先に居たのは白衣に紫袴と足袋に雪駄という装束をまとった、四、五十代と思しき柔和な表情を浮かべた男性がいた。
「初めまして、この度は手貫より依頼解決のため派遣されました木津根と言います。正直、どこまでお力になれるかわかりませんがよろしくお願いします。」
俺の話を聞き男性はうんうんと頷いた。
「権宮司の桜深和正です。この度は田貫君には無理を言ってお願いしたのだけれど来てくれてよかった。」
権宮司。わかりやすく言うなら神社を会社に例えて副社長と言った所だ。ちなみに木津根とは俺の事。あのクソ狸から依頼に従事している間の使えと付けられた偽名だ。ふざけるなと当時は本気で怒りもしたがあいつがその名で紹介するものだから今では観念して使っている。そして手貫とはあいつの事。昔から何かと有名なあいつもいつの間にかそう名乗って活動していた。
「では、詳しい話をお伺いしても?」
「はい。こちらへ。」
俺は踵を返して歩き出す和正さんの後ろに続いた。
それから、応接間に通され高そうお茶となお茶菓子を出してくれた。普段呑む安物のお茶と違い、甘みと言うかえぐみと言うかこれが高いお茶なのかと新しい味との出会いに少し感動しながらも聞き上手な和正さんに乗せられ軽い雑談が意外と弾んだ。一息ついたのを確認して和正さんは本題に入った。俺自身何度か噂の真偽を確かめるために通ったと言う話をしたが、和正さんの話を聞いて一先ず納得した。
和正さんの話をまとめると実にシンプルで、ライトアップされたあの大きな桜の下に女性が佇んでいるのを目撃したと言う人がここ五年位前から年々増えているのだと言う。その女性の霊が襲って来るだとか害をもたらしたとかいう話は今の所ないものの、霊感がある人や感受性豊かな子どもの中から体調を崩す者や、驚いた拍子に足を躓かせ転倒して軽いけがを負った者などが数人出てしまったのだと。出店を出す人たちの中にもそれを目撃して気味悪がっているらしく、去年はついにお祭りの前にお祓いをしてみたものの効果はなく何か原因があるはずと代々受け継がれてきた書物や図書館などで調べてみたが特別何の手がかりとなりそうなものはも見つからなかったのだと。そして、今年になって出店の関係者や毎年楽しみにしている地元の協賛金援助者によってお金が集められ何とかならないかとまとめ役のような者から相談されたそうだ。自分たちにとっても神を祭る神域で幽霊騒ぎなど好ましく無いため恥を忍んで伝手を辿ってみた結果、あのクソ狸に行きついたという。あいつは意外といろいろ器用な奴でオカルト方面以外にも手広くやっており何気に顔が広く評判も良い。お世話になっている方に紹介された和正さんは一も二も無く飛びついたと言う。
「では、依頼内容は境内に女性の霊が現れる原因の究明。そして、必要があり可能であればその排除でよろしいですね。」
「…はい。よろしくお願いします。」
俺の排除と言う言葉に僅かに顔を顰めた和正さんだったが、すぐに取り繕うように柔和な表情に戻すと薄くなった頭を俺のような若造に向かって深々と下げる和正さんを見て深くプレッシャーが掛かったがモチベーションは上がった。俺も同じように頭を下げるとその日は立ち去った。祭りは明日。泊まっていってはどうかと言われたが準備があるからと丁重に断った。その帰り道、俺は夕日に染まる帰路をのんびり歩きながら考える。『祭りの最終日にのみ現れる霊』。そう、俺がその女性の霊と出会えなかった理由がそれだった。なんでも、女性の霊は決まって祭りの最終日。それも祭りが終わる前の数時間しか現れないのだと言う。ある程度鋭い人間はそれが自分たちとは違う存在だと見ただけで気づくと言い。それと、その存在を確認するだけなら霊感が無くとも結構な人数が見てしまうらしい。それでも、それは後から聞いた時にそう言えばといった程度らしく、それに気づいて悲鳴を上げたり自分から近づいて声を掛けたりする者はほとんど居ないのだと言う。和正さん含め鋭い人、この場合僅かにでも霊感がある人間はその女性に普通とは違うと気づいても、大きく騒ぐことは無いのだと言う。せいぜい驚いてとっさに声を上げてしまったり転んだりして周囲が異常に気が付くようだが意識して探した場合誰もその存在を確認できなくなるらしい。
「今回も色物かな。」
俺は取り出した煙草を咥え、マッチを擦って火を点ける。ふわっと僅かに火薬のにおいが舞って煙草独特の煙が後を追ってくる。ふーっと煙を吐き出し要点をまとめる。
一つ、現れるのは祭り最終日の終わる二十二時から遡って数時間前の間のみ。
一つ、騒がれだしたのは五年位前から。
一つ、意外と誰にでも見える。
一つ、霊感が僅かにでもあればそれが霊だとわかる。
一つ、襲われたり害意を感じたものは居ない。
一つ、意識して探すと誰にも見つけられない。(当時周囲にいた人間の中で俺より霊感が強い人が居たかは不明)
「さて、どうしたものか。」
正直、色物の対応は苦手だ。何せ、色物は雑魚から化物までの幅が大きく、それでいて色々面倒くさい奴が多い。今回の霊にしても出現条件が特殊で、姿を見せるのは数時間のみ。ただそこに居るだけ。一瞬、小物かと思いもしたがそれは無いだろうと結論付ける。騒がれだしたのは五年前と長くも無ければ短くもない期間だが。その姿を認識するだけならば普通の人だろうがお構いなしにかなりの数が巻き込まれている。それでいて出現する場所。素人目で見る限り立派でまともな神社の境内。神域に出現しているのだ。感覚からしてもあれほど清らかな場所は経験上珍しいと思うほどの場所にである。もしかしたら、神やその眷属。と言った触れてはならない類かもしれないな。数万円とは安請け合いをしたものだ……危険手当とか出ないだろうか。尻尾を巻いて逃げる気はない。別に噛みつくつもりはないし向こうも危害を加えるまでは問題ないだろう。危害を加えるまでは。そもそも、敵対した場合俺は俺の武器で立ち向かうことが出来るのだろうか?精神論ではなくオカルト論理的に。まぁ、なるようになるか。今やれることはないし買物でもして明日に備えるとしよう。前払いのおかげで懐も温かいしすき焼きでもやってみるか。そう思い、俺は近所の食品類が少し高めのスーパーに向かって歩き出した。