突然、僕は父親になったんだ!
僕は平凡な28歳の男で、何の取り柄もないと自分でもよく分かってる!
見た目も、冴えないというか? ボーっとした顔をして歩いていると?
よくガラの悪い僕よりも見るからに若いお兄ちゃん達にからまれたり。
仕事も、定職につけずバイトのはしごで。
___毎日の生活でやっとなんだ!
・・・いつも、お腹を空かせては?
昔から仲がイイ友達の実家が中華料理屋さんで駆け込んでご飯をご馳走になるんだ!
『___まあ、また? お腹を空かせて来たの?』
『・・・ううん、何か食べさせてくれない?』
『___いいけど? 涼太いい加減、定職に就いたらどうなんだ?』
『___ううん、分かってるけど? なかなかねぇ?』
『まあ、ウチのマコトが涼太と同じで就職出来ないんだから! 仕方が
ないわねぇ~! あぁ! いつものでいい?』
『___ううん! ありがとう。』
___僕とマコトは、子供の頃からの幼馴染で親友なんだ!
だから、マコトの家族とも親密というか、、、?
本当の僕の親と変わらないぐらいに思っているよ。
おじさんやおばさんも、僕の事を“もう一人の息子”だと思ってくれている。
『___いつもありがとうね! おばさん!』
『___いいのよ! それより帰りにお父さんが涼太に持たせてやれって!
ちゃんと、ご飯食べれてないんでしょ?』
『___ううん、本当に、ごめんね。』
『___涼太は、もう一人の私達の息子みたいなものなんだから~!
なんかあったら助けてやらないとって思ってるのよ! だから涼太はそんな
事! 何にも気にしなくていいんだからね!』
『___おばさん、うっ、グスン、』
『___泣くな、涼太! お前、男だろう!』
『___ううん、おじさんもありがとう。』
『___さあさあ~! 早く食え! 料理が冷めちまうぞー!』
『・・・・・・ううん、』
___幼馴染で親友のマコトが居なくても、僕の事をこんなにも想って
くれているんだ!
___本当に、二人には感謝しているよ。
・・・帰りにおばさんが、僕に持たせてくれたモノ。
野菜炒めと唐揚げに春巻きをタッパに入れて持たせてくれたんだ。
『___明日の朝にでもこれ食べて。どうせ、電子レンジもないんでしょ!
冷めても美味しいし、この季節なら腐らないしね!』
『___ううん、』
『___ちゃんと、食べないとダメよ! 少し、涼太痩せたんじゃない?』
『・・・・・・そうかな?』
『お金がないなら、いつでもウチの店に来ていいんだからね!』
『___うん、』
『___じゃあね! 気を付けて家に帰るのよ。』
『あぁ! ありがとう、おばさん! おじさんにもお礼言っておいて。』
『___えぇ! 分かったわ! またね!』
『うん。』
___僕は、右手にタッパの入った紙袋を持ってトボトボと家に帰って
いる途中、何か黒いモノがもぞもぞと動いているのに気づいたんだよ。
はじめは、遠くからだったし! 犬か猫に見えたのだけど?
近づいて、ビックリしたよ。 まだ小さな子供がそこにいたんだ!
___僕は、その子にしゃがみこんで話しかけたんだ。
『___そこで何してるの?』
『・・・・・・』
『___きみのお家は? パパやママは?』
『・・・・・・』
『___何時からココにいるの?』
『・・・・・・』
『___ひょっとして、話せないとか?』
【コクリ】
___小さな男の子が頷いた。
僕は、もう夜10時を過ぎているし! まだ歳も4.5歳ぐらいの
子供がこんな時間に一人でいるのは危ないと思い、取りあえず僕の家
に連れて帰る事にしたんだ!
『___取りあえず、こんな時間に一人でココにいるのは危ないから!
僕の家においで。明日の朝にでも、警察に一緒に行こう! きっとパパ
やママも心配しているよ。』
『・・・・・・』
___それから、僕は男の子と手をつないで、一緒にボクの家に帰ったんだ!
なんだか? こんな事は初めてで、不思議な感覚を受けたよ。
僕にもいつか、子供が出来たら? こんな感じなのかなって。
▽
【ガチャン】
___部屋の中は、真っ暗で狭くて汚い部屋だけど?
男の子は、少しホッとした顔をしていた。
『___この部屋には、お風呂がないから銭湯に行くしかないんだけど?
今、お金がなくて! 銭湯に連れて行けない! ごめんな!』
___男の子は、左右に首を振った。
『___それなら、水は出るから体だけでも拭こうか?』
『・・・・・・』
___僕が、男の子の着ていた服を脱がすと?
身体中にアザあったんだ!
『___えぇ!? これって?』
『・・・・・・』
『___パパか? ママがやったのか?』
【コクリ】
___男の子は、頷いた。
この時、僕の中で何かが変わったんだ!
この子を家に戻すことをやめようと、、、。
そして、僕はこの子の“父親になるんだ!”って決めたんだ!
・・・守れるのは?
警察でも、この子の親でもない!
他人だけど、僕しかこの子を守れないって。
___そう、真剣にこの時の僕は思ったんだよ。
*
___そして、僕が男の子にこう言ったんだ!
『___もし? もしだけど? 僕がきみの“パパ”になると言ったら?
きみは、僕を【パパ】と認めてくれるかな?』
【コクリ】
___男の子は、また頷いた。
『___じゃあ、これからこの狭くて汚いこの家がきみの家だよ! いい?
そして、僕が今日からきみのパパだからね!』
【コクリ】
___こうして、僕はこの子の父親になったんだよ!
▼
___次の日の朝。
不思議とこの男の子の事は、ニュースや新聞の記事にも載っていなかったんだ!
この男の子の、両親が探している感じもないし。
・・・ひょっとしたら? “この男の子、親に捨てられたのかな?”
___こんな事、思いたくないけど?
・・・どうしても、そう思ってしまう。
*
___数ヶ月経っても。
この男の子を、この子の親が探している形跡はない!
それでも、僕はこの子の親になっていたんだ!
『___おばさん! ごめんね、お腹が空いて来ちゃった!』
『・・・その子は?』
『___僕の息子だよ!』
『___えぇ!?』
___僕は、おじさんとおばさんに詳しく説明すると?
僕の考え方に賛成してくれたんだ!
『___きみの名前は?』
『“涼介”だよ! 僕の名前を一文字付けたんだ!』
『___そう! 涼介、何が食べたい? 好きなものを言っていいのよ!』
『___ハンバーグ!』
『___えぇ!?』
『___おい? 涼介やおばさんを困らせるな! ココは、中華料理屋さん
なんだぞ!』
『___ごめんなさい、』
『___いいのよ! 特別作ってあげるね! 美味しいか分からないけど。』
『___おばさん、ありがとう。』
『___それなら、俺が作ってやるよ! いつも、中華しか作らないから
たまには、違う料理もいいしな!』
『___おじさん、』
『___私達にとっても、涼介は孫みたいなものよ! みんなでこの子を
育てましょう!』
『・・・ありがとう、ググッ、クスン、』
『___パパ! なんで泣いてるの?』
『___泣いてないよ! 目にゴミが入っただけだよ。』
『・・・涼太、』
___僕に、血の繋がらない息子ができた。
それでも、僕の気持ちは揺らがない!
僕と最初に出会った時は、何も話せなかった涼介が、今では少しだけど。
僕やおじさん、おばさんには話してくれるんだよ。
血が繋がらなくても、僕と涼介の絆は深く繋がっている。
お互いの気持ちが一緒の方向を向いているなら、僕たちは本当の親子
になれるんだと僕は思うからだ!
___きっと、涼介も僕と同じ気持ちだよ。
誰にも、切れない強い絆が僕たちはあるんだ!
最後までお読みいただきありがとうございます。