チーム設立の結果…
【プロジェクト:タウン】。それは真琴が考えた【チーム】機能の応用である。このプロジェクトの費用は金貨25000枚超え。そう、真琴は馬鹿である。
「まずは…【スライム商店】の設置かな」
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【スライム商店】
このアイテムに農作物を入れ値段を設定すると、他のプレイヤーが購入できる。手数料なし。使われたお金は出品者のポストへ行く。
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「これを25個ください」
「おう!嬢ちゃん、大人買いするね〜」
「いやー大人ですからぁ」
「「はっはっは!」」
このおじさんはまーちゃんがいつも行っているお店の店長さん。見た目は怖いが仲良くなるとめっちゃいい感じのおじさんである。
「はい、金貨4枚だよ!」
「え、金貨5枚じゃ…」
「サービスだよ!嬢ちゃんは常連だからな!」
「ありがとおじちゃん!」
「また来てなー!」
ふたりはいつもこんな感じである。
「おっと、そいえばメンバー集めなきゃだね」
いくらお金を使ったとしてもメンバーがいなくては意味がない。ということで、
「【チーム】入りませんか〜、農家さん募集中でーす!入ってくれたらボス戦手伝います!」
数分間呼びかけていると、一人の少女がやってきた。
「あ、あの…私一応農家で…レベル1でもいいなら…その…【チーム】入れてください!」
「うん、いいよ。一緒に頑張ろう!」
「はい!」
一人目のメンバーはこの少女になった。
それからは意外とあっさりと集まった。
「じゃあまず、家もってる人は売っていいです。私が奢るんで」
「「「えっ…」」」
家を奢るとはこんなに容易く言えることではない。しかしまーちゃんの所持金ではそれが可能だった。たとえ24人でも。
「じゃあこの地区に立てます。えーと、目的言ってなかったか。私はまーちゃん。【DEX】の値がすごいのが売りかな。で、目的は、街を作ることだよ」
先程まで賑やかだった【チームチャット】が静まり返った。それからまーちゃんは続けて言った。
「みんなが仲のいい街にしたいから、喧嘩とかなしね。あと、なんで農家を募集したかというと、これ!【スライム商店】を使ってみんなとやり取りしたいから。相場は普通の市場より安いくらいにしたいな。そうしたら初心者だって買えるしね。なんかあったらみんなで相談しよう。ということで、何か質問は?」
静寂の中、一人の男が言いにくそうに言葉を放った。
「すいません、私はTATSUといいます。質問とかじゃなくて、あの、【DEX】低くてもいいんですか?」
「もちろん、というか、これは農家のみんなを助けるためにやってることだから!あと、そんなに話しにくそうにしなくてもいいよ。みんな仲間、家族みたいなものだから」
「はい、ありがとうございます!」
「じゃ、もういいかな。じゃ、みんなおやすみ〜」
このように新たな歴史の1ページ目が終わった。
この後、猛者たちが集まり宴を開いていたことをまーちゃんは知らなかった。
「あれ?また早かった」
何故か真琴はいつも早めに来てしまう。そして運悪く、苦手な茉莉と二人だけとなった。
「あ、橘さん。おーい」
「あ、おはよ」
次に茉莉が言った一言に真琴はびっくりした。
「あの、まーちゃんってあなた?」
「え、なんでそれを」
ゲーム内で本名を言っていないのにと疑問に思い、聞いてみると、
「私がはじめに仲間になった少女だからかな」
声のかけ方、チャット内での雰囲気、それを考えてわかったのだという。
「というか、すごい金持ちなんだね。家奢るとか」
「【DEX】が8000超えたらそうなるよ」
軽々とこんなことを言うが、もちろん普通ではない。
「え、人間で?マジで?」
「もちろん!よかったら見る?」
「いや、大丈夫…」
色々と個性的な人と関わってしまったと茉莉は思った。そしてこの二人の会話を途切らせるものはなかった。ちなみに爽鈴は風邪で休んでいるという。
「【スライム商店】は各家に一つずつ、クワは言ってくれたらすぐ買います」
本格的に街のスタートである。
「まーちゃんさん、この街の名前は?」
「まーちゃんでいいよ。チーム名もこの町の名前も【農家の翁】だよ。「翁」っていうのは気に入っている言葉だからつけてるだけ」
「あざっす」
この中にはレベル100の猛者や【AGI】がめっちゃ高い人などひとりひとり違った人がいる。
街誕生から何週間か経ったとき、こんな話があがった。
「どっかのダンジョン【開放】しません?」
「私はいいけど…」
まーちゃんは自分が行くと楽勝になるだろうと思い、今回は見るだけとした。
「こんなスキルもあるしね」
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【地形ノ回復雨】
使用者の【DEX】を100減少させた後、使用者のもとの【DEX】の値の【INT】の回復魔法と同じだけ一定時間継続的に回復する。範囲魔法。範囲、効果時間は【DEX】依存。【DEX】回復まで5分。
『獲得条件』
自身のペットがモンスターの魔法を利用し、回復する。
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いつものことだが、チートである。これを使うだけで死ななくなるのだから。
「よし、行くぞー!」
「「「オー!」」」
結果は言わなくてもわかるだろう。今回倒したのはモグラだった。時間こそかかったが、【農家の翁】にとっていい経験となったことだろう。レベルが上がったという意味でも、【チーム】としてボスを倒せたという意味でも。
「よし、みんなお疲れ!どうだった?強かったでしょ」
皆の顔を見ると、頷いているものはいない。なぜなら死なないのだから。しかしその顔は達成感でいっぱいのように見えた。その後、解散となりまーちゃんはログアウトした。
「あー、やりすぎた。わっ、39度。こりゃ当分このままだな…」
そういうのは現時点最高レベルプレイヤー…の中の人。そう、爽鈴である。この人はレベル上げに夢中になりその結果、睡眠不足、栄養不足、吐き気、高熱、食欲がなくなるなど、かなりの具合の悪さに目を回していた。一応反省はしているらしい。
1週間の総プレイ時間51時間。そのレベルは…
前代未聞の500に到達しようとしていた。
読んでいただき、ありがとうございます。
今回、会話多めです。