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これ、うちの畑で取れたスライムです  作者: 林檎酢
バージョン3【歴史の遊戯】
21/98

苦難の末に…

 まーちゃんが着実に実力を伸ばしている間に、それ以上のスピードでレベルを上げている者がいた。

 まーちゃんの友人、さばじろうである。やりこんでやりこんでやりこんだ結果、レベルは1000になった。それで得たステータスポイントははじめの分も含めて2433ポイントであった。目標であるレベル1000に到達したさばじろうはこれからはあんな苦労なんかせず、ほのぼのと行こうと決めた。

 そう言ってさばじろうが来たのはとある森。そこを奥に奥にと進んでいくと、崩れた遺跡のようなものがある。さばじろうはそのガレキを軽々と持ち上げ、現れた階段を下っていった。

 下っていくと重そうな扉があり、それを開けると中には茶色い魔法陣があった。さばじろうがそれに乗ると、体が茶色の光りに包まれ、空へと転移していた。これはさばじろうがレベル上げの際に発見したもので、他のプレイヤーはコレの存在を知らない。このフィールドはさばじろうの貸し切り状態だと言えるだろう。

 さばじろうは今にも落ちそうな雲の上を渡っていく。その先にあったのは真っ黒な雲。そこの一部分には入り口と見られる穴が空いており、それに続く階段のようなものも見られる。さばじろうは迷わずそこへと向かった。

 長い長い階段の先は下から見たときとは比べ物にならないくらい大きな雲。それは仲間で真っ黒であって、先が全く見えない。

「【暗視】」

 まーちゃんと違ってさばじろうのスキルは日常で役立つものも多い。その一つである【暗視】によって黒い雲の中が鮮明に見えるようになった。

 中に入ると雨が振り始めるとともに足が遅くなった。そして周りからはこの雲と同じ色の小さな雲が出現し、さばじろうに襲いかかった。しかし、さばじろうはレベル1000であり【VIT】もそれなりに高い。普通のフィールドにいるモンスターではダメージ一つ与えられないのだ。

「【風刃】」

 その声とともにさばじろうの周りに小さな風の刃物が出てき、周りの雲を蹴散らしていった。そしてその重くなった足で歩いていった。

 300メートルほど進んだところで、足が軽くなった。しかし次に現れたのは明らかに怪しいボタンの数々。

「【小火炎球】」

 さばじろうの手に小さな火の玉ができ、それをボタンに向けて飛ばす。

 その直後、さばじろうでもあまり聞かないくらいの音量の爆発音が響く。しかしさばじろうにダメージはなかった。つまり、歩いていっても問題ないというわけだ。

「よし!この雲の中は結構簡単だから気を楽にして進もう!」

 その先にあったのは薄い膜。その向こうの向こう側にはクロスボウのようなものをかまえた人型のモンスターが見える。

「【瞬動】」

 そのスキルを使い、膜を通り過ぎる。

 膜を過ぎた感覚とともに人型の()が持っているクロスボウで射抜こうとしてくる。が、さばじろうのスキルにより動きはとても俊敏になっていた。それは言葉通り目にも止まらぬ速さだった。一瞬にして雲を切りつけ、10秒もかからずにすべての雲は光となった。さばじろうは足を進めた。

 歩いて歩いてボス部屋に来た。その扉は何も描かれていないように見える。さばじろうは扉を開けた。

「さっきの雲のでっかいバージョンかな?」

 それは道中たくさん見た雲。その大きさはだいたい横5メートル、高さ3メートル、奥行き7メートルほどだった。

 その雲が1フレーム程動いたと同時、消えた。

「っ!?消えた?」

 その()()()()は音もなく背後に現れた。そして急激に大きくなり、そこから雷を降らせた。

 その効果はダメージと麻痺。しばらく動けなくなってしまった。

「【バックアップ】!使うしかないか…」

 それは一日限定で自分の能力値と同じ能力値を持つ分身を作り、位置を移動させるというものだった。

 そして移動したほうがそうでない方に治癒魔法をかける。その間に対策を考える。

 先程の攻撃によってダメージは受けていないがいつ大ダメージを食らうのかわからないときにアレを食らうのは危険だ。そうこうしているうちにまた雲が動こうとした。今度はそれを見逃さず

「「【存在感消去】!」」

 当たり判定を消した。そのため雷撃は空振りに終わった。

 そしてわかったことが一つ。それが出現する時はいつも小さくなって背後に現れるということ。小さくなればステータスは下がるというこのゲームの特徴を考えるとそのタイミングを狙うのが吉と言える。

 そうと決まれば後は簡単。さばじろうは分身とともに自分に【STR】強化のバフをかける。そして動いたのを確認した瞬間…

「「とどめ!【パワースマッシュ】!」」

 それは後スキが大きい代わりに【STR】がいつもより上がった状態で打てるスキル。

 その二発は雲をきれいに四等分し、光を作り出した。

「ふー、なんかいつもより強かったかも?まあいいや、報酬はどうせ使わないし【宝箱喰らい(チェストイーター)】使っとこ」

 そう言ってさばじろうは懐から薄い緑に光る水晶球を取り出し、宝箱に近づけた。

 すると宝箱は光に変わり、その水晶球に吸い取られていった。そして水晶球の緑は少し緑が濃くなり輝きが増した。

 さばじろうがまばたきした瞬間、いまいる雲は白くなっていた。そして黒い魔法陣に乗り、このダンジョンから出た。

「えーっと、もうこれ以上はいいかな。一回帰ってみよう」

 そう言って雲のフィールドを後にした。




 それからさばじろうは意外な人物に出会った。

「え、さばじろうじゃん!こっちの世界では久しぶりだね」

「あ!まーちゃん?なんでここに?」

「逆に探索以外の何があるっていうの?」

 さばじろうはとても強くなったまーちゃんを見てみたいと思った。そして

「いい場所あるから一緒に行かない?」

 と聞いた。

 まーちゃんにそれを断る理由もなく、

「いいよ」

 と承諾した。

 こうして実質最強とも言えるコンビが完成した。

読んでいただき、ありがとうございます。

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