眠れぬ野性
掲載日:2019/08/18
守ってくれている。
眩しすぎる日射しを遮るのは、煤けたカーテン。
いつもの風景を見たければ、干からびた指で弾けば叶えられる。
背中から潜り込んでくる、眠れぬ野性。
今、風が吹いた。
見知らぬ人の綺麗な服が、軽やかに靡いた。
浮かび上がるシルエットに弾かれて、喉の乾きを思い出す。
慌てて閉める気道が間に合わず、干ばつの煙を巻き上げる。
あの時感じた、壮大の草原に駆け出したい衝動。
写真に残る不揃いの誕生の日。
眠らないのに身体を横たえて、待ち構えるのは奇跡?
痛みも越えて喉の乾きを実感する。
滑らかに動くシルエット。真似て蠢く取り繕う残像。
なまぬるい雫の到来を待って、僕は開口する。
息苦しいほどの潤いの襲来に、やかて僕は閉口する。
また風が吹いた。
飛び散る飛沫に弾かれて、僕の汗は絶命間近の大地に滲んでいく。
歴史を証明する言葉は思い浮かばない。
ただ、あの日見たシルエットを忘れられないだけ。
ただ、変わりのない今日を忘れられないだけ。




