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次男サタナキアのその後

「おっし。朝ごはんできたぞー!」

 オレはおたまを置いて叫んだ。

 長女が皿を受け取り、並べるのを手伝ってくれる。

 結婚してから四年。一年間の発掘調査を終え、都に帰ってきてから生まれた長女も三歳になっていた。

「お父さん、全部並べたよ」

「ありがとな」

 しっかり者の長女オリビアはオレに似た顔。中性的な容姿と、誰にでも親切でよく困ってる人を助けてるし、優しく、老若男女に好かれる気質から「イケメン女子」と言われてる。

 早くも「オリビア様親衛隊」ってファンクラブがあるんだよな。もちろん会員は全員女子。

「おとーさん、おねーちゃん、おはよぉ」

「ふああ」

 次女と三女が起きてきた。次女ウィロー2才はローレル似、三女ヘザー1才はローレルの母さん似らしい。

「お、起きたか。おはよ」

「お父さん、お母さん起こしに行ってこようか?」

「だーめ。それはオレの役得……いやいや、役目なんで。オリビアは妹たちみててくれ」

「はーい」

 寝室へ向かう。タタミに上がった。

「ローレル、起きろ~」

 この部屋だけ異国風だった。子供が多い&寝相が悪いでベッドじゃ転げ落ちるんだよ。それか、夜中に容赦ねぇパンチキック頭突きくらうの。オレが。

 不思議と子供同士やローレルにはやらず、被害受けんの全部オレなのな。いいけどさ、子供たちがケガするより。

 そんでも寝てる時にやられてみ? しかも毎晩。きっついぞ。

 一応眠ってても身を守れる訓練はしたけどさ、リリスのクーデター前に。アホ親父に殺されるかもしんねーんで。まさかそれがこんなところで役に立つとは。

 ぼやいたら、リリスが「フローリングにベッドじゃなくてタタミに布団にすれば?」と教えてくれた。なんでもずっと東の方の国の文化らしい。

 さっそくアガに頼んだら、

「扱ってない商品だな。取り寄せには時間かかるぞ、かなり遠い国だからな」

「なるはやで! オレも安眠したい!」

「部屋分ければいいだろうが」

「さびしーじゃん。大きくなったらどうせオヤジうぜぇって言われんだよ、小さいうちくらい一緒に寝たい。パパさみしい」

「今の時点ですでにウザい。まぁ子供同士がケガしてもいけないから急がせよう」

 おお! アガが人に気遣いを!

 お兄ちゃん拍手しちまったよ。

「いやぁ、人を人とも思ってないヤツも親になると変わるもんだなぁ。アイリスちゃんマジ感謝」

「取り寄せんぞ」

「まぁまぁ。兄ちゃんうれしいんだよ」

 つーわけで寝室はいくらでも転がれるように改装され、家自体も玄関で靴を脱ぐスタイルにした。好きなだけハイハイできるように。なにしろ毎年子供増えてるんで、しょっちゅう赤子がいるんだわ。

「……ん~?」

 ねぼけまなこのローレルはオレを抱き枕と間違えて抱きついてきた。

「まだ寝る」

 しっかり抱きしめ返して、役得味わってから、

「もう時間だぞー」

 着替えさせてヘアセット。

「そろそろ腹回り締めつけちゃマズいから、マタニティドレスにしとこうな」

 現在四人目妊娠中。

 オレは満足げにうなずいた。

「できた。ほら、立って」

「んー」

 寝ぼけてるローレルを支えて食卓へ連れてく。

「お母さん、おはよ。はいこれお水。置いとくね」

「……んー。ありがとオリビア」

 ほんと気が利く子だよなぁ。オレみたいな気ィ遣いにはなるなよ。

「いただきます」

 食べ終わるころにはローレルもしゃきっとしてきた。

 オレとオリビアはちゃちゃっと家事を片付け、下二人の幼稚園セットを確認とか出かける準備。

「えーっと今日は個人面談の希望日程プリント提出。ハンカチ・ティッシュちゃんと持ったかー? 行くぞー」

 まず全員で城内保育所学校へ。

 学校と合体させてよりハイレベルな勉強もできるようにした結果、名称が微妙に変わったのさ。

「おはよう、ナキア兄さん」

「はよ、ネビロス。はいよ、これ個人面談の希望日程。んじゃ三人とも今日も楽しんで来いよー」

「はーい!」×2

「お仕事いってらっしゃい」

 次はローレルを職場へ送ってく。

「んじゃ夕方迎えに来るからな。これ弁当」

「ありがと。ナキ君も気を付けてね」

 最後にオレも出勤。向かったのは城の一角、従業員用食堂の傍に増設された給食センターだ。

「や。みんなおはよ」

「センター長おはようございます」

 城の従業員用食堂は発掘調査についてくために辞めた。戻って来た時に再就職しなかったのは、この給食センターを作るんでそっちに入ってとリリスに打診されたからだ。

「今は従業員用食堂で作ってもらってるけど、規模も大きくなってきたし、専門機関を作ったほうがいいと思うんだよね。そのセンター長やってよ」

「オレはトップなんか向いてねーんだけどな」

「ヘーキ、経理は国営だから専門家つける。安全な食材の仕入れとかスタッフのチェックとかやってほしいのよ。子供が口に入れるものだもん、安全な食材でなきゃ。ナキア兄さまならこれまでも手配とかやってたんだからできるでしょ」

「まーな。一応女王の兄が長やってりゃ、セキュリティの面で好都合ってことか。分かった、いずれウチも世話になるだろーし。自分で管理すんのが一番安心だな」

 ってワケ。

 食材の搬入、確認、下ごしらえ。なんでも手伝う。

 農作物は基本的に城の裏庭に作った農場のものだ。昔は王族が遊んでたムダに豪華で趣味の悪い庭園はリリスの鶴の一声でぶっ潰され、畑になった。変わりようがすげえ。

 一部は城内保育所学校の児童農園。この前は種まきやってたな。

 大部分は食糧増産プロジェクトの研究用。兄貴とオレとジャスミンちゃんとこの植物系魔物の共同プロジェクトさ。この国は農作物が育ちにくい。少しでも食えるモン増やそうってあれこれ試してんだ。

 植物系魔物が常駐してる、っつーか住んでるんでセキュリティもばっちり。

「よーし、配達してくるわ」

 オレ自ら配達に行く。なにもセンター長自身が行かなくてもいいんだけど、ついでに子供たちの様子見たいんで。

 遠目で見ると、オリビアは劇の練習してるっぽい。今度発表会あるもんな。

 下二人はそれぞれ同年代の子と遊んでた。うんうん、いっぱい遊べ。それが子供の自然な姿だ。

 邪魔しないようこっそりのぞいて帰ると、来月のメニュー考えたり試作したり。予算内でおさめるのに経理の専門家と話し合ったり。

 そうこうしてると食べ終わった給食が戻ってくる。容器や食器は洗って、残飯は堆肥にリサイクル。

「リサイクルよろしくなー」

「了解です」

 残飯を体内で堆肥に変えられる植物系魔物に頼む。うちの立派なスタッフだ。この国の土地はやせてるだろ、自分で栄養作り出して周りの土を改良する進化をとげた魔物がいるのさ。

 おかげでうちの国はフードロスとは無縁。国内各地のごみ処理施設にこれと同型の魔物が配備されてんだ。

 できあがった堆肥は売ってる。品質いいんでけっこう売れてるんだなこれが。オレも買って、ローレルのために育ててる花に使ってるよん。

 その後は明日の仕込みとかまた色々やってると、あっという間に定時。

「お疲れー、また明日!」

 ローレルを迎えに博物館へ。

「あのさ、もっと産休とっていーんだぞ? オレけっこう稼いでるし、金の心配はいらねーよ」

 堂々とやれる副業、家事小ワザ動画の広告収入とレシピ本の印税に飲食店のフランチャイズだけでもそれなりに稼いでる。明るみに出せないルシファーの組織のバイトだともっとだけど。

「私が好きでやってるの。それに毎年出産で休んじゃってて、悪いなと思ってるのよ。周りに迷惑かけてるでしょ?」

「出産は迷惑じゃないだろー。それに他にも産休育休取ってるスタッフいるじゃん。若手が多いんだからさ。お互いさまだよ」

 ローレルが気兼ねなく産休育休とれるように、博物館のスタッフは新婚か子育て中の人を多めに採用させたんだから。

 そもそも国が平和になって安定してきたんで、この数年は出産ラッシュ。そういう家庭は珍しくない。

「つか、ローレルに嫌味言うヤツいんの? どいつ? 教えて」

 速やかに対応しとくから。

「あのねナキ君、そういうことしないの。別に嫌味言われたことはないわよ。私が気にしてるだけ」

「……そんな何人も子供いらなかった? オレがほしがるせい?」

 子供はいっぱいがいいなって言ったのはオレだ。

 何人も子供生んでればローレル狙う男どもへの最大の牽制になるとか、子供がいればローレルは二度とオレから離れてかないとか思ってないぞ? それだけはマズい考え方だ。

 ローレルは慌てて、

「そんなことないわよ! 私だってほしかったし、子供たちはかわいいもの。……ごめん、妊娠中でホルモンバランス崩れてるせいでマイナス思考に行くんだと思う」

「気にすんな。てか、負担ならほんと休めよ? 輝夜姫みたく不安定になりそうならすぐ言え。リリーちゃんみたくがんばりすぎるのも切迫流産になる。下手したら母子ともに危ないんだからな?」

「! それは……っ。……うん、ちょっと仕事見直しとく」

「ん」

 子供はほしいけど、そのためにローレルの身になにかあるのだけは嫌だ。

 代わってやれればなぁ。男にはどう逆立ちしても妊娠出産は不可能なのが歯がゆい。

「ところでナキ君。他のスタッフといえば、新婚さんや子育て中の人がずいぶん多いわよね? 年齢層が上の人も子供のいるご家庭ばかり。ナキ君が手回ししたでしょ」

「ぎく」

 バレてら。あ、センセーも全面的に関わってるよ。

「うれしいけどそういうのやりすぎないようにね?」

「……はい」

 そんでもオレは君を守りたいんだよ。ずっと遠くから幸せを願うしかできなかったから。

「お迎えに来たわよー」

「おとーさんおかーさん!」

 駆け寄ってきた次女と三女を抱き上げる。身重のローレルは抱っこダメ。

 理解してる長女はローレルと手つなぐ。

「さ、帰ろうな」

 帰ったらローレルには休んでてもらい、子供たちと分担して家事。家事代行サービスは使わない。オレができちゃうんで。

「そろそろセンセーも帰ってくるかな?」

 王都に戻って来たオレたちは博物館と隣接してる図書館どっちにも近い場所に家を建てた。二世帯住宅にして、こっちは二階建ての子供部屋多め。センセーのほうは足のことを考えて平屋。間のドア開ければいつでも行き来できる仕組みだ。

 とか言ってたらちょうどドア開いた。

「あっ、おじいちゃんお帰りなさーい! あのね、昨日貸してもらった本、ここが分からないんだけど」

「オリビアはもう読んだのかい。賢いねえ。どれどれ、ここはね……」

 杖を持ってないセンセーは危なげない足取りで椅子に腰かけ、長女に教え始めた。

 センセーさ、孫が生まれるって聞いたら超はりきっちゃって。

「孫と遊びたいんです! サルガタナス先生、どんな手段でもいい。実験体にしてもらった構わない。走るようになりたいとまでは言わないからせめて手つないで歩けるくらいになりたいんですよ!」

 ルガに頼みまくってダメもとで治療始めたら、なんと杖なしで歩けるまでに快復したんだわ。

 孫パワーすげえ。

「おじいちゃん、見てこれ今日かいた絵!」

「字もきれいにかけるようになってきたよ!」

「二人とも上手だねえ」

 今も孫三人に囲まれてデレデレしてる。目に入れても痛くないってこういうことだな。

 ま、三人とも女の子だしなー。そりゃかわいいわな。

「みんな夕飯できたぞー」

「はーい!」

 大家族みんなそろって夕ご飯。

「いただきます」


   ★


 休日、私は子供たちに本を読んであげていた。ナキ君は家事中。

 すると中からお腹をポンと蹴る感覚があった。

「赤ちゃんも聞いてるみたいね」

「えっ、ほんと? 聞こえてる? ちっちゃいおねえちゃんだよー」

「真ん中のお姉ちゃんもいるよー」

「ねえお母さん、次は妹かな弟かな」

「そうねぇ、あなたたちがお腹にいた時も同じこと言ったけど、どっちでもいいの。無事生まれてきて健康に育ってくれればね」

 性別がどっちでも、かわいい我が子に変わりはない。

「オリビアは弟がいないから男の子がいいの?」

「別に、弟みたいなイトコいっぱいいるし」

「弟なぁ……オレの弟はちょっとアレなのばっかだけど、子供世代はマトモだもんな」

 洗濯もの抱えて通りがかったナキ君がぼやきながら外に向かった。

 そうね、なかなかクセモノぞろいよね。

 三女ががんばるのポーズを取り、

「お姉ちゃんになるんだもん、生まれたいっぱいおせわしてあげるね! 楽しみにまってて」

 三人とも下が生まれると小さいお母さんになって手伝ってくれるから、ほんと助かるわ。

「そういえばお母さん。昨日見つけて気になってるものがあって」

 長女がアルバムを出してきた。

「あら? アルバムはいくつも作ってるけど、その表紙は見たことないわね」

 茶色で目立たないシンプルなもの。大体ナキくんがかわいくデコってくれて、もっと色味があるんだけど。

「え」

 中身は私の写真ばかりだった。

 しかもこれ背景とか髪の長さからして亡命中のもの。

「お母さんばっかりだねえ」

「かみも短いね」

「……オリビア。これどこで見つけたの?」

「お父さんの部屋」

 やっぱり。

 こめかみをもんだ。

「洗濯物しゅーりょー……ってウワーッ!」

 ナキ君が気づいてすごい悲鳴あげた。めちゃくちゃ慌ててる。

「ろ、ローレルそれはっ。つか、なんで見つけたんだ?!」

「私が見つけたの」

 長女が言う。

「オリビア、お父さんの部屋に勝手に入っちゃいけません!」

「他にも色々隠してるから? ナキ君。これ私が亡命中のよね。しかも全部目線カメラのほう向いてないし、あきらかに隠し撮り」

「……う……」

「亡命中も私のこと気にかけてくれてたって言ってたから、時々誰かに見に行かせて報告させてたんでしょ。その際に撮影したのよね?」

「……あう……ハイ……」

 しかられた子犬みたくしょげるナキ君。自主的に正座。

 ボソボソと釈明する。

「その……ローレルが知ったら気持ち悪いだろうなって思って……。別れたくせに未練がましい男だろ? けど、ほんとに見守ってただけだから! 変な隠し撮りはさせてないし! オレはネビロスほどヤバくない!」

「比較対象が比較対象」

 そこで実弟の名前が出てくるのもどうなの。

「えっ、待って。てことは、ネビロス様はリリーちゃんに何を……」

「ごめん聞かないで。言いたくねー」

 ナキ君は青い顔で首振った。

 うん、聞かなかったことにしよう。

「いいか娘たち。世の中にはヤバい男がいくらでもいるんだ。そういうヤツには絶対近づくな。結婚相手もダメ。かくいうオレだっておかしいからな、反面教師にして真っ当な男を選びなさい」

 ナキ君は真剣に諭した。

「お父さん、真剣に言ってる内容が悲しい。自分もなんだ」

「おー、そうだとも。オリビアには話しただろ、オレのやらかし。二人にはも少し大きくなって分かるようになったら話す。いいか、マトモな男ならお父さん反対しません」

 何の話になってるのやら。

 私はナキ君をつついた。

「ねえ、誤解してるみたいだけど怒ってないわよ?」

「え?」

「だって離れてても守ってくれてたってことでしょ。むしろうれしい」

「ほ、ほんとに? キモイって引いてない?」

「全然。近況報告させてただけだったのは分かってるし」

「なんで断言できんの?」

「だってもし他にも周りに手加えてたら、あの男が近づく前に排除してたはずよ」

 私がだまされることもなかったはず。

 父や他の人たちはあの男の本性に気づいてたようで、思えば警告らしきこと言われたものね。

「……だな」

「お母さん、何の話?」

「ああ、私、昔しばらく外国にいたって言ったでしょう? その時ある人にだまされてね……知らない国で不安だったから、そこにつけこまれたのよ。バカだったわ。その人の目当ては父の影響力やコネだったのに、気づかないで。父の娘である私を使えば出世できると考えてたのよね」

「ひどい!」

「ゆるせない!」

「お父さん、そんな悪者ボコボコにしちゃって!」

「大丈夫~。もうしといたから」

 ん?

 今さらっとなんて言った?

「……ナキ君? あの男って行方くらましたんじゃ……」

「てたけど見つけた。きっちり落とし前つけさせたし、二度と関わらないよう手配してある。安心だな!」

 さわやかな表情で言うところだろうか。

「……まさか殺して」

「ないってば。なことしたらクソ親父と同じになるだろー」

 その点は納得できるわ。

「ならいいけど……」

「なんならセンセーに確認してみたら? センセーもその場にいたし」

「父さんまで?! ああでもなら安心だわ。やりすぎそうな時は止めてくれたでしょ」

「そりゃセンセーにしてみりゃ、娘だました憎い詐欺師だぜ? 怒るわな」

 後で父に聞いておこう。

「と、とりあえずアルバム返すね」

「え、オレが持ってていーの?」

「いいのも何も、ナキ君のでしょ」

「よかったあぁぁ」

 ドッと力が抜けたように腰回りに抱きついてきた。

「お父さんってほんとお母さん好きね」

「そだよー」

「ありがと、ナキ君。離れててもずっと私のこと想い続けてくれて」

「お母さんもお父さん好きね。両親ラブラブなのはいいことで」

「好きでなけりゃ四人も子供生まないわよ」

「ローレル……っ」

 じーんって感激してるナキ君。

「ナキ君が育児けっこうやってくれるおかげもあるわ。家事もあるのにさらにって、さすがスーパー主夫」

 あれ、むしろ私がやってることって少ない?

「……うう、ごめんナキ君。私の家事能力が壊滅的なばっかりに……」

「なんで? 人には得意不得意があるんだ、得意なやつがやりゃいーだけじゃん。ただの作業分担だよ。それにローレルは妊娠出産ってすげー大事なことやってくれてる。腹の中で人一人の命作って育ててるんだぜ? 男にはできねーことだよ。オレは代わりたくても代わってあげらんねーから、せめて他のことやってるだけ。当然のことだよ」

 家事も育児も妻側にやらせてる世の中の夫にツメのあか煎じて飲ませてやりたいわ。

「いくらつわりなくてお産も軽いっつったって、大変だろ。オレに任せてローレルはゆっくりしてて」

「ありがと、ナキ君」

 世話焼きのナキ君にとってこの状況はむしろ楽しいのかも。

 ポコ、とまたお腹の中で四人目が蹴った。

「お! 蹴った! 元気だなー。生まれてくるの、みんな待ってるぞ。あ、でも早く出てくるなよ。ちゃんと育ってからな」

「お姉ちゃんたちといっぱい遊ぼうね」

「楽しみー」

「ねー」

 代わる代わるお腹に触って話しかける。

「そうね、元気に生まれておいで。待ってるわ」

「おじいちゃんも待ってるぞ!」

「いつ来たの父さん」

 どこからかニュッと現れた父。まぁ二世帯住宅だけど。

 大ケガがもとで足が不自由だった父は、孫パワーというミラクルと意地と根性で歩けるまでに快復した。今や完全なじじバカだ。

 次はどんな子が生まれてくるかな。

 私はお腹をさすった。

 新しい家族が増えるのもあとちょっと。





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