表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/63

男子会と女子会、再び開催 ~ある意味国家機密な内緒話~

 スミレさんもリリーさんもすっかり回復され、お子様方も大きくなりました。そこで「気晴らしに女子会やろー!」とリリス様のご提案です。

 ではまた男性陣は別に集まりますか、となりました。

「子供たちはこっちでみてるよー」

「いいの? ネビロス」

「子供いたら、どうしてもお母さんモードに入っちゃうじゃん。リリー真面目だもん。たまには子育てから解放されてのんびりおしゃべりしてきなよ」

 リリーさんは真面目過ぎて限度を超えて我慢しがちなですからね。ネビロス様もそういう気遣いができるようになったんですねぇ。

 お子様方はリリス様いわく「三歳児くらいの大きさ」になりました。この世界では生後数か月でこれくらいになるのが当然なのですが、リリス様の元いた世界では三歳くらいに該当するとか。

 基本的に王家の血を引く者は魔力量が多く、成長が早いです。リリス様やフルーレティ様などは生後二日目にはこれくらいになってます。生き延びるための死活問題が理由ですが。

 イポス君・ラボラス君は王族の血を引く者として平均的ですね。理由があって、意地で自ら早めたのもありますけれども。

 対してヒナギクさんはかなり遅いです。まだまだしゃべりも幼い。

 三人とも今はお昼寝中。簡易ベッドで仲良く寝てます。

 ルキフグス様が姪と甥を見比べ、

「しかし大きくなったな。子供の成長ってのは早いもんだ」

「なんかじーさんみたいだな、ルキ兄貴。まぁでも双子の成長はほんとはえーな。あっさりヒナ追い越しちまった」

「あはは。ヒナちゃんと早く遊びたいって意地と根性だよね~」

 ルキフグス様・サタナキア様・アガリアレプト様・サルガタナス様に僕と父は顔を見合わせ、ひっそりため息つきました。

「んでもむしろヒナの成長速度遅くてよかった。オレの子がそうだったら魔力量が多いってんで危険視されるとこだった」

「そうだな。ゆっくり大きくなれるっていうのは平和な証だ」

「それにそれだけ長く娘と一緒にいられるし」

「ベタ甘だな。年頃になってヒナちゃんにパパしつこい嫌いとか言われないように気をつけろよ?」

「え、娘にそんなこと言われたらオレ死ぬ」

「ヒナギクさんはスミレさんに似て大人しいので、そういうことは言わないと思いますが」

 妹君リリス様が実父をそれはそれは嫌ってますが、そこは言わないほうがいいですね。

「しっかし、年頃かー。オレはサーカス育ちだから、普通の、女の子なんてまして分かんねーな」

「俺も一人っ子だったから分からん」

「オレが途中までいた娼館には女の子いっぱいいたけど、あれは特殊だし」

「俺はそもそも同年代と接したことがほぼない」

 ルキフグス様はじめ上の三人は苦労されてますよね。

「……僕には異父兄姉がいたが、彼らにとって僕は弟ではなかった」

 唯一兄姉のいる環境で育ったサルガタナス様も首を振りました。

「僕も孤児院で、親がみんないなかったもんねぇ」

 父もあごをしごいて、

「私も息子も一人っ子ですし、家業が家業です。普通とはかけ離れているかと。……リリス様のことは娘同然に思っておりますが、王女というだけでなく色々特殊な方なので……」

 うなずく一同。

 なので初めから『普通の女の子』にリリス様の名は挙がっていません。

「まぁ気負わずともよいのでは? 経験者として言いますと、親というのはなろうと思ってなるのではなく、自然となっているものです。急ぐことはありませんよ」

「そうだね。あれ、イポス起きたの?」

 イポス君が目を開けて隣を見ていると、ヒナギクさんがもにゅもにゅと動いて起きました。

 ……起きるのを察して先に目を覚ますとは。ヒナギクさんの寝顔が見たくて、後に寝ましたよね君? さらに見たいんですか。

 ネビロス様もリリーさんに似たようなことやってますが……将来大丈夫ですかね。

 先に起きて辺りに危険がないか確認するのはいいとしても、そもそも危険が迫れば君、察知して飛び起きますよね? ネビロス様に似て悪意や害意に敏感なんですから。

「お、ヒナ起きたか。眠かったらまだ寝てていいんだぞ?」

「んーん」

 ヒナギクさんは目をこすり、よちよち歩き出しました。

「パパぁ、だっこー」

 瞬時に駆け寄ったフルーレティ様がしっかり抱き上げました。

 速い。さすがな瞬発力です。

「よしよし。ほーら、抱っこだぞー。ヒナはかわいいなぁ」

「きゃーあ」

 喜び、小さな手で抱きついてます。

「のど乾いてないか? おやつ食べるか? いっぱいあるぞー」

 いそいそと座って膝に乗せ、あれこれ取るバカ親。ごはんが入らなくなるとスミレさんに叱られますよ。

 まぁ、ヒナギクさんはリリス様が「かわいい姪っ子に超かわいくて似合うお洋服着せまくりたい!」と渾身の子供服を作り上げており、一般的な基準でいってかわいいの部類に入るので分からないでもないです。

「じゅーちゅのむ」

「いいぞ、ほら。おいしいか?」

「おいちー」

 にこにこしてるヒナギクさん。一方のイポス君はヒナギクさんが離れてしまって不機嫌です。

 子供ですねぇ。実際子供ですが。

「ほら、イポスとラボラスもおいで」

 ネビロス様はむーっとしたイポス君と、何かを察して起きたラボラス君を膝に乗せました。

 ヒナギクさん側の膝だと分かると途端に機嫌の直ったイポス君。現金にもほどがあります。

「ヒナちゃん」

「なーに? いっくん。たべゆ? あい、どーじょ」

 お菓子の乗った皿を双子のほうに押します。

「どれがいー? しゅきなのとって」

「ひ」

 即座にラボラス君の手刀がイポス君の後頭部に入りました。

 好きなのはヒナギクさんと言いかけましたね。すばやく察して止めたラボラス君はずばらしい。優秀な母親に似ましたね。

 フルーレティ様とネビロス様除く全員が「よくやった」とガッツポーズしました。

 ネビロス様は手遅れでも、イポス君ならまだ矯正間に合うでしょう。

「イポス」

「ラボラス、ひどい」

「いっくん、らすくん、どしたの? けんかだめー」

「けんかしてないよ? えとね、じゃあこれらもうね」

 おやつをつまむ子供たち。微笑ましい光景……に見えないのは気のせいではないですね。

 まったく理解してないフルーレティ様は真面目に、

「イポスにラボラス、いいか。お前らしっかりヒナを守るんだぞ。男はもちろん、女も下手に近づけるな。予知能力を悪用しようと企む奴かもしれねーんだ。害虫は即座に潰しておけ」

 それ許可していい内容でしょうか。

 というか、娘を守る父親の気概にあふれてるフルーレティ様が、ネビロス様にそっくりなイポス君の考えに本当に気づいていないものでしょうか?

 おそらくすぐ気づいたけれど、全力で思考にフタしたんでしょう。自己暗示というか、必死で考えないようにしてますね。

 フルーレティ様も娘の夫にイポス君は悪くない選択だと分かっているのです。初めからヒナギクさんの能力を知っており、信用できる弟君の息子ですから。ネビロス様ほどヤバくないよう育て、何が起きても絶対にヒナギクさんを守る番犬にする。

 しかし父親としてもう娘を嫁にやることは考えたくない。無理やり考えないようにしているのでしょう。

「物騒なこと教えんなよ、レティ。顔がマジじゃん」

「ナキア兄貴には言われたくねーんだけど……ローレルさん利用しようとした男に何やってんだよ」

 サタナキア様はうっそりした笑みを浮かべました。

 危なすぎます。

 ルキフグス様が顔をしかめ、

「レティ、娘がかわいいのは分かるが、ほどほどにしとけ。こうしてみるとネビロスんとこが息子でよかったな。リリーちゃん似の娘が生まれてたら大変なことになってた」

「三人目いいねぇ」

「おい。リリーちゃんはやっと回復したところだろ」

「分かってるよ。ていうかルキ兄さんだって親バカになりそうだよ」

「俺は当分先だ」

「はーん。兄貴は織姫が男児でも女児でも産んで、跡継ぎが明確に決まってからじゃないとってことな」

「当たり前だ。せっかく王にも王配にもならずにすんだのに、なんでまた面倒に首つっこまなきゃならない。しかも他国の。嫌だ、俺は静かに暮らしたい。宰相だってあと少しで辞められる」

 辞められるんですかねぇ。

「立候補してないのに兄貴の名前、投票用紙に書く人多そうだけどな」

「辞めるといったら辞める! 言っとくが、半年くらい輝夜連れて世界旅行に逃げるつもりだ。輝夜も自由に色んなところ回れてうれしいだろうからな。これまで公務で他国に行ったことはあっても、自由はなく制限された場所しか行けてない」

「いい手だなー。それでルキ兄貴は新居いまだに手配してなかったのか」

「そういうことだ」

 一応、地所も使用人もリストアップしてありますが。重臣総がかりで引き止められて続投となった時用に。

「ウチもローレルの仕事の都合上、先の話だなー。二人でのんびりもいいもんよ。アガんとこはどうなん?」

 アガリアレプト様がじろりとすぐ上の兄を睨みました。

「俺にふるな」

「お前そっくしの不機嫌傲慢息子はカンベンな。胃が痛ぇよ。ほれほれ、眉間のシワ、アイリスちゃんに伸ばせって言われてんだろー?」

「触るな、うるさい」

 シワをつつくサタナキア様の手を叩き落とします。照れくさいんですね。

「フン、子供なんてうっとうしいだけだ」

「えー? 娘はかわいいぞ、アガ兄貴。なー、ヒナ。ヒナは世界一かわいいぞ~」

「きゃーい」

 デレデレですね。

「息子もいいもんだよ。ていうか性別はどうでも、大好きなコが生んでくれた自分の子がいるって幸せだよねー。……子供がいればリリーは絶対僕を捨てられなくな」

「そういう歪んだ思考をやめろっつってんだ」

 長男ゲンコツが炸裂しました。

「やだなぁ、冗談だよ」

「嘘をつくな、嘘を。いいか、イポスにラボラス。こういうお父さんみたいな病んだ思考は厳禁だぞ。なことしたら今みたく伯父さんの本気のゲンコツが炸裂するからな」

「はい」

 さすがのイポス君も神妙にうなずきました。敵に回しちゃいけない人間はだれか、きちんと分かってるようでなにより。

「ネビロスはアレとして、アガは要するに子供との接し方が分かんねーからとまどうんだろ。でも子供だったリリスやネビロスとは普通にできてたから平気だって。つか、単に親バカになったお前見てみたい」

「誰がなるか」

 魔物もひと睨みで殺せそうな視線ですね。

「でもマジで性格がお前に似た子だったら、四六時中衝突して大変そーだな」

「……俺には似なくていい」

 自覚はあるんですね。

「退職して貿易商に戻ってもさぁ、仕事ばっかすんなよ? ちゃんとアイリスちゃんとの時間は確保すんだぞ。仕事ばっかで妻置き去りの夫は三行半つきつけられんだからな」

「フン。目が見えるようになったから、これまで行けなかったところに連れていってやることにしてある。十分だろう」

「おっ! えらいえらい」

「だから頭をなでようとするな!」

「えらいぞ」

 ルキフグス様が手を伸ばすと大人しくなでられてます。差が。

 サタナキア様はよよと泣き真似をして、

「同じ兄なのにこの差。ひでぇ。兄ちゃん悲しいわっ」

「しまいには殴るぞ」

「こら、そこケンカするな。ルガは? 新居準備進んでるんだろ」

「……うん。病院の近くに、彼女の特性を考えて一軒家を」

 集合住宅はやめたほうがいいでしょうね。周囲へのとばっちりが。

 父がパンパンと手をたたきました。

「さて、皆さん結婚されてしばらく経ったわけですが。この機会です、男同士でないと話せない悩みなどありましたらしゃべっちゃいましょう。では言い出しっぺの私から。そうですねぇ、私はもう結婚して二十年近く経ちますし、のんびり引退生活送ってるので特に……ああ、ありました。妻が最近、毒の沼の水を研究してたら研究室ふっとばしましてね。ちょっと困りましたなぁ、あっはっは」

「色々おかしいだろ」

 ルキフグス様のツッコミにうなずく一同。

 我が母も元は最前線で働いていたスパイです。特に毒物の扱いに優れ、オリジナルの毒薬をいくつも作っていました。現在では知識を生かし、国内に豊富にある毒の池や沼などの無毒化、有効活用化プロジェクトに加わってます。

 毒を使えるということは、解毒のスペシャリストでもあるんですよ。

「まぁ幸い無毒化には成功しまして。そこの湖底の泥が面白いマーブル模様をしていたもんですから、知り合いの陶芸家に試してもらいました。するとほら」

 花瓶をテーブルに乗せました。

 一見、ごく普通の花瓶のようですが。

「中をのぞき込むとよく分かるんですが、ところどころぼんやり光ってるでしょう?」

「ほんとだ」

「どうやら蓄光の性質があるようで。これは道路に使えるのではないかと思いまして。夜、暗くて危ない道や路地に使用してはいかがでしょう」

 ルキフグス様はあごをなでてうなずきました。

「これはいいな。試しにそういった場所に使って効果を見てみよう。レティ、お前の傭兵仲間がやってる建築会社に連絡つくか?」

 フルーレティ様が退職した際、傭兵時代からの仲間の半数は安定した給料のため残りましたが、半数は退職して建設会社を立ち上げました。なにしろ力持ちぞろいですからね。

「ああ、あいつらならすぐ。確か名刺もらったような……あった、これこれ」

「助かる」

 ルキフグス様はその場で電話をかけてとりまとめてしまいました。

「おっと、うっかり仕事の話になってしまいました。これはいけない、戻しましょう。そういえばルキフグス様、胃痛はすっかりなくなられたようで」

「ん? ああ、そうだな。輝夜のかっとんだ行動もだいぶ減ったし……原因の、生まれながらの王族由来の感覚のズレがだいぶな」

「自由の身になれて精神的に楽になったんだろーな。んでも兄貴、別の悩みがあるっぽいじゃん」

「何がだ?」

「メガネ」

 ビシッと指さすサタナキア様。

「それ何百個目?」

「……百はいってない。五十三個目だ」

 十分多いです。

 復元不可能になったのが五十三回なだけであって、実際はもっと壊れてるんじゃないですか。

 しょっちゅう注文受けて手配してるアガリアレプト様がなんともいえない表情してます。

 下の弟三人も憐憫の表情。

「もうかけんのやめれば。どうせ伊達メガネじゃん」

「顔を隠せるものはあったほうがいいんだよ。それに、魔力が暴発した時、壊れるのが自分のメガネなら構わないだろ」

「暴発しても、壊れたってヘーキな自分の持ち物に向くって、兄貴ってほんと真面目っつーか……」

 ルキフグス様は半ばヤケで返しました。

「じゃあどうしろと? 輝夜は『姫』だから人目があろうがなんだろうが、好意全開でくるんだぞ! 平気で至近距離からのぞき込んでくるわ」

「身長差で当然上目遣いになるんでウッてことな、兄貴」

「歩く時は当たり前のように腕につかまってくるわ」

「エスコートされんのが当たり前なお姫様だったもんなー。まぁ兄貴にはエスコートじゃない意味で抱きついてるけど」

「座ればもたれかかってくるわ」

「それは……えー、安心してんじゃね。兄貴も結局シャイボーイだよなぁ」

「ですから平然としてこちらも好意を返せばいいとアドバイスしたじゃないですか」

 面倒なのに教えてあげましたよね。

「できるか!」

 でしょうね。

「えー。いいな~、僕もリリーにそういうことやってほしい」

「リリーちゃんは絶対やらないな。やったらお前が手つけられなくなると知ってるからだ」

 父は苦笑して、

「まぁリリス様ほど強烈ではありませんし、がんばってください。微笑ましい悩みじゃないですか」

「結構重大な悩みなんだが……」

 五十三個も復元不可能なほどメガネ壊れてるのは重大ですね。

「では、やめてほしいとストレートに言えばいかがです? 姫も嫌われたくないと、すぐやめるでしょう」

「……それは」

「本音はうれしくてしょうがない、と。ルキフグス様、ご存じですか。それをノロケと言います」

「断固違う! あのな。輝夜はこれまでずっと本音を押し殺してきたから、また我慢してほしくないだけだ」

「兄貴もたいがい我慢だらけの人生だったじゃん。もういんじゃね」

「それはお前もだろ、ナキア」

 最愛の人を断腸の思いで手放し、遠くから見守り続けていたサタナキア様はへらへらと笑いました。

「いやぁ、オレは自業自得」

「……そういえばナキア兄さん、記憶の回復でローレルさんの体に変調は」

「ないよー。元気元気。診てくれてありがとな、ルガ」

「……よかった。朝あまり起きられないと聞いたけど」

「あれは昔っから。オレは別に困ってねーし、いーのよ。寝ぼけた嫁さんていいぞ」

 これは速やかに意見の一致をみました。

「世話焼きのサタナキア様としては、ローレルさんが頼ってくれうほうがいいでしょうね」

「まーな。昔はそうやって甘やかして依存させて、オレがいなきゃダメなようにさせれば……とか考えたりしたなぁ」

 フルーレティ様がまじまじとサタナキア様を眺めました。

「ナキア兄貴とオレって全然似てねーと思ってたけど、実はけっこう似てたんだな」

「ん? あれ、知らんかった? オレも別れる前は無自覚でやってたよ」

「おいこら、ナキア」

「ちょ、ゲンコツ握んないでよ兄貴」

 身をすくめるサタナキア様。

「そんでオレは見事にバチ当たったじゃん。もうやんねーよ。ちゃんと自覚して自制してる」

「……それならいいが」

「つか、今一番無自覚で心配なのは実はルガだと思う」

 サルガタナス様はほんのわずが、10度くらい首をかしげました。

「……僕?」

「お前もそのケあるとみた。ジャスミンちゃんフォローすんのは全然いいんだけど、行きすぎると『守れるのは自分だけ。自分なしじゃいられないように……』って思考になるかもだ。オレがそうだったからよく分かる。オレの二の舞になるなよ」

「……うん」

 真剣にきくサルガタナス様。

「ナキアは八方美人のクセ直したほうがいいんじゃないか。この前食堂で叱られてたろ」

「ああ、あれ? うん。でもスイーツ作ってくれたら許す、ってかわいくね? ヤキモチ焼いてくれんのはうれしいなー」

 ネビロス様が唇をとがらせました。

「いいなー。リリーはヤキモチなんてやいてくれないもんね。僕ばっか」

「そりゃお前はリリーちゃん以外好きになるのはありえないからだろ。むしろそうだったら楽だったのにとか思ってるんじゃ。アイリスちゃんも別の意味で嫉妬しなさそーだな」

「……あいつは何を考えてるんだか分からん」

 むすっとするアガリアレプト様。

「時間かけて好きって言わせてみせる、て本人が言ってたぞ」

「俺は子供か!」

 一斉に首を縦にします。

「おい」

「そーいやアイリスちゃんが喜ぶもの何か分かった?」

「高価なものは不要と言われた。自然の中でのんびり過ごすのを好むが、自分の価値観を押しつけるつもりはないのでたまにそういった時間を作ってくれたらいい、だと」

「大人だな。アガにぴったりな妻が見つかって本当によかった」

「それでアガリアレプト様は自然豊かな土地を新居として手配したんですね」

「うるさい。静かなほうが俺も楽だからだ。ピアノを弾いたりするには広いスペースが必要だしな」

 はいはい。普通の防音の部屋だけでもいいのに、アイリスさんが好む環境で弾ける状況を用意したんですよね。

「アガ兄貴、屋外にピアノ室作ったってこと?」

「そんなわけあるか。雨でぬれたらピアノが痛む。屋内だ。ただ三方がガラス張りで、天井は開閉式ドームにしてある。リフォーム予定の国立音楽場に取り入れたらどうかと案のあるやつだ。試作で作らせた」

「わあ、すげー」

「個人宅に遊園地作ろうとしてたお前ほどじゃない」

 ああ、フルーレティ様本気で作ろうと設計図描いてましたね。

「ヒナがいつでも安心して遊べるようにと思ったのに、スミレに止められたー」

「当たり前だ。その設計図、こっちでもらって国で作ることにしたんだからいいだろう。開園したら行け」

「人いっぱいじゃん、危ねーよ。スミレは人込み恐くて行けねーし。自分ちにありゃいいじゃん」

「親バカと過保護が過ぎるぞ」

「貸し切りにすりゃいいじゃん、レティ兄さん。僕んとこの双子と遊べば。どうせそのうち兄さんたちそれぞれ子供生まれるだろうし、みんなでさ」

 女王の兄弟家族が行くなら、警備面で貸し切りにするのは当然の配慮ですしね。

「お前の筋トレ場、訓練場があるんだろ? そこで遊べば?」

「ナキア兄貴、あんな危ないとこでかわいい娘を遊ばせられるわけねーだろ!」

「そんな危ないところを作るな」

 ルキフグス様、もっともなツッコミです。

「いや別に訓練場としてはフツーだぜ」

「個人の敷地内に軍の施設並みがあるのは普通とは言いません」

「公爵邸だってあるじゃねーか、ルシファー」

 実家はスパイ組織の本部ですから。

「体がなまるのが心配でしたら、いつでもお貸ししますよ? 代わりに若手の稽古つけていただければ」

「めんどくせ。つか、鍛錬してるとこスミレに見せたら喜ぶから自分とこにあったほうがいいんだよ」

 スミレさんはフルーレティ様の訓練を見たくても対人恐怖症のため行けず、リリス様がよく撮影してこっそりあげてました。

 フルーレティ様のほうはスミレさんが恐がるだろうと見に来るか聞かなかったのですが、興味があると知ってがぜん張り切りだしました。

 それで自宅に作るのはどうかと思いますが。

「ネビロス、そろそろ双子も教えてやるよ」

「ああうん、お願いしよっかな。ヒナちゃんにもやるの?」

「いや。魔力のコントロール方法とかは教えるけど、攻撃系はな。性格的にも向かねーだろ。オレの娘が戦闘能力高いとまずいだろうし。危険を察知したら相手を眠らせて無力化する特技を伸ばせばいんじゃね」

 ヒナギクさんの体力は人並み、運動神経は平均以下ですしね。

 父はサルガタナス様を見て、

「ではお次、サルガタナス様はどうです? ジャスミンさんの特性のほうは」

「……だいぶ減った。本人が気にしすぎて必要以上に力が入ってしまっていたのが緩和されたからだと」

「もし引き寄せてしまってもサルガタナス様が助けてくれるという安心感もあるのでしょう。リラックスして余裕ができたということですね」

「……ああ。いい妻にならなければと気負っていたのが、兄さんの奥さんたちと話していたらなくなっていた」

「ローレルと意気投合してたよ。家事能力ナシ同士、すげー気が合うっぽい」

「……良い妻なんてならなくても、傍にいてくれれば十分だ」

「そのとーり! しかもジャスミンちゃん、毎日『好き』って言ってくれてんだろ? 超いい子じゃ~ん」

 二ヒヒと笑うサタナキア様、うつむくサルガタナス様。

 ルキフグス様はサルガタナス様の頭をぐしゃぐしゃなで、

「ルガにはそういう存在が必要だったんだ。よかったなぁ」

「いいなぁ、僕なんかまず言ってもらえないよー」

「その原因はお前にあるだろ」

「ルキ兄さんも言ってもらえてそうだね」

「ぐっ」

 とっさにメガネを押さえるルキフグス様。

「ふー……俺のことはどうでもいい」

「オレもあんま言ってもらえないよ? んでもそれがいいんだって。仕向けて、恥ずかしそうにしながら言ってくれんのがよし」

「分かる」

 共感の握手をするサタナキア様とフルーレティ様。

「フン、まったく理解できんな」

「アイリスちゃんはしれっと紛れ込ませて言って、アガの反応楽しんでるもんな。はるかに上手。手の中で転がされてんなー」

「なんだと、誰がだっ」

「お前もし好きかどうかきかれたら、たぶんこう答えんだろ?」

 サタナキア様は偉そうに足を組み、一瞬でガラリと雰囲気を変えました。さながら名優が役に入ったかのようです。

 この方は役者になってもトップに立てたでしょうね。

 アガリアレプト様そっくりの雰囲気にご兄弟が目を見張りました。

 サタナキア様はアガリアレプト様の口調と声を完コピして、

「うるさい。そんなことどうでもいいだろう」

「うわぁ。めちゃくちゃ言いそうですね」

 パッと元に戻ったサタナキア様は肩をすくめました。

「こりゃダメだぞー」

「あ?」

「なんでダメかは、言わなくても分かるよな? 客観的に見りゃ一発だろ」

「……それは……まぁ……」

 おや、珍しくくってかかりません。

 アガリアレプト様も成長しましたねぇ。

「ん。進歩したなぁ。兄ちゃん感激っ」

 でも髪の毛わしゃわしゃされるのは本気で嫌がってました。

「驚いた。ナキア、声帯模写できるのは知ってたが雰囲気までそっくりにできたのか。役者になってれば名優と言われただろうに。どうりでモデルが板についてるわけだ」

 リリス様のブランドの男性モデル一番やってたのはサタナキア様です。

 父が言いました。

「この才能を知って、実は昔サタナキア様を王に担ぎ出そうと考えてた時期もあったんですよ。ルキフグス様に断固拒否された後ですね」

「げええ?!」

 あからさまに嫌そうです。

「ああ、早々に俺をあきらめたのはナキアに目を付けたからか」

「当時すでにサタナキア様がローレル嬢と恋仲なのは知っていました。彼女は反国王派の中でも有力なグシオン教授の一人娘。ローレル嬢を王妃にするとなれば、一枚岩でない反国王派も協力するはず。それだけの影響力がグシオン教授にはありましたから。サタナキア様も、やる気を出せばどんな王でも演じられるでしょう?」

「やだ。お前らが望む王様の演技なんか四六時中やってられっか。オレなんかより母親がデカい商家の娘なアガにしてくれよー」

「俺に回すな」

「権力のない親族のほうが楽な面もありましてね。サタナキア様に王を演じてもらい、政治面はルキフグス様、財政面はアガリアレプト様、軍事面はフルーレティ様。この四巨頭制はバランスのいい組み合わせかと」

 四人そろって「うげぇ」とうめいてます。そっくりですね。

「まぁ、接触前に事件が起き、そのプランは捨てましたが」

「いけねーんだろうけど、初めて自分にナイフつきたてといてよかったと思ったぜ」

「おやおや」

「つか、ローレルが嫌がるに決まってんだろ。やりたいのは研究や勉強であって、王妃業なんかじゃねー」

「でもナキア、考えてみろ。もしあのクソ親父が当時ローレルさんの存在に気付いてたらどうなってたと思う? それを察知して、お前たちの抹殺指令出してたぞきっと」

「そーなったらどんな手段使っても刺客返り討ちにして、クソ親父もぶっこ……」

 気色ばんで即答したサタナキア様は途中で言葉を切り、殺気もあらわににらみつけました。

「そーゆーことか。おい公爵、どうせお前んとこがローレルのことクソ親父に伝わらないようもみ消してたんだろ。それをわざと漏らして抹殺指令出させ、オレがブチギレるよう仕向ける計算だったな?」

 これは演技じゃなく本気です。

 サルガタナス様が身を固くし、フルーレティ様とネビロス様はサッとお子様方を守る態勢に入りました。

 父も、表面上は涼しい顔してますがかなり緊張してます。

「この腹黒め。ローレルを危険な目に遭わせようだ? 実行してたらまずテメェを消す」

「ナキア、落ち着け。実際にはそうならなかったろ」

 ルキフグス様が肩をつかみ、同時にヒナギクさんが泣きかけました。

「う……ふえ……」

「っと! やっば。ゴメンゴメン、ヒナちゃん。怒ってないよー!」

 慌てて優しい伯父さんに戻りました。

「恐くない恐くない。冗談だよ」

「ふええ……パパぁー」

 泣きつく娘をしっかり抱きしめたフルーレティ様は、

「ナキア兄貴。兄貴でもオレの娘を泣かせたら容赦しねーぞ」

「だからごめんって」

「レティもいきりたつな。ナキアも冷静になれ。ヒナちゃん、安心しなさい。大丈夫だよ。いざとなれば俺が本気出してでもケンカ止めるから」

 優しく頭をなでるルキフグス様をヒナギクさんは涙いっぱいの目で見上げました。

「るきおじちゃまぁ」

「ヒナちゃんに危害加えるやつなんていないよ。恐くない」

「……うん」

 ルキフグス様が『いい人』なのは幼い子供にも、いえ、子供だからこそよく分かるようでヒナギクさんはうなずきました。

「よし。ヒナちゃんは賢いな。えらいぞ。……ところで、そこで不機嫌そうなイポス。俺は伯父としてやっただけだ。お前は自分の感情のみで行動するんじゃない。周りを見、他者への思いやりを持ちなさい。我欲だけで突っ走るのはただの独りよがりだ。お前がほしいのはお前にとってだけの幸せで、相手の心や人格はどうでもいいのか?」

「……う……。ちがい、ます……」

 子供であっても手加減せず淡々と諭すルキフグス様。イポス君も格の違いを見せつけられ、しゅんとしてます。

 『ルキフグス様(ちょうなん)のお説教』に勝てる者はいませんからね。

「お前はまだ子供だから間に合う。今のうちから気をつけて直しなさい」

「……はい」

「分かればいい」

 よしよしと優しくイポス君の頭をなでる。こういうところが上手いんですよねぇ。

 単に長男だから一目置かれているのではなく、実力が伴っているからです。

「ん? ナキアとレティはなんで震えてるんだ」

「あ、兄貴の本気ってなんだよ。嫌だ、ぜってぇ対峙したくねえ」

「ムリムリムリ、勝てるわけねー。こえぇ」

「ほんとやめてくださいよ。サタナキア様とフルーレティ様の大ゲンカに本気モードのルキフグス様が入ると大変なことになって、それを鎮めるにはリリス様に出動お願いするしかないじゃないですか」

「ヒィ!」×6

 全員震えあがってます。

 言ってる僕の脳裏にも、グーパンかます一秒前なリリス様が。

 速やかに逃げたいですね。

「こ、公爵も二度とそういった計画は立てるなよ!」

「も、もちろんですとも。リリス様の鉄拳を脳天にくらうのはごめんです」

「レティ、アガ、ルガ、ネビロス。兄弟ゲンカは絶対やめような」

「ああ。オレだって頭かち割られたくねぇ。デコピンされただけで死ぬかと思ったんだぞ!」

「俺もさすがにあれはくらいたくない」

「……同感」

「姉さま、怒ると恐いもんねぇ」

 意見が一致したようでなによりです。

「パぁパ? どしたのお?」

「なんでもないよー。ヒナはいつもニコニコ笑って幸せでいな」

 フルーレティ様はふとつぶやきました。

「我が子ってこんなかわいいのに、あいつは一度もこの幸せ味わったことねーんだな」

 …………。

「オレたち兄弟はこんだけいたのに。リリスだけは娘と認めて城に住まわせてたくせに放置で、気まぐれに呼びつけるだけ。あげく、末路は誰からも見放されて牢の中独りぼっちだろ。……哀れだよなぁ」

「……そうだな」

 ルキフグス様は静かに言って目を閉じました。

 本当に、哀れな王様ですよ。

 いくら元が悪役として作られたキャラクターでも、変わることはできたはずなのです。リリス様ご兄弟が本来悪役だけれどもそうでなくなったように。

 その道を選び、突き進むことをきめたのは本人です。

 アガリアレプト様が不快そうに、

「そういえばあの男は今どうなんだ。知りたくもなくてきかなかったが」

「んー? 元気に罰受けてるよ」

 表現がおかしいです、サタナキア様。

「死なない程度に色々やってー、回復させてをエンドレス。限界ギリギリを見極めんのがミソ」

「こっわ……。ナキア兄さん、それって肉体的に? 精神的に?」

「どっちもだよ。でなきゃ罰になんねーじゃん」

「伯父さんたち、なんの話?」

「仕事の話。これ以上は秘密な、ラボラス」

 ふと、リリス様たちが近づいてくる気配を感じました。

 どうやらあちらは終わったようです。

「ルシファー」

「はい、何ですか?」

 ルキフグス様に視線を向ければ、真剣な表情をしていました。

「俺たちはもう間もなく城を去る。公職も辞めるし、これまでのように毎日顔を合わせることはできないだろう。リリスはきっとひどく寂しがる」

「……でしょうね」

 独りぼっちで味方もなく、命を狙われ続け。

「強がりだが寂しがりな妹の傍にずっといてやってくれ。大事な妹を幸せにしてやってほしい。あいつが俺たちにしてくれたようにな。―――頼んだぞ」

 弟君たちもみなさん僕を見ていました。

「はい、もちろん」

 力強くうなずきます。

 当然ですよ。逆プロポーズを受けた時、僕自身そう決めていました。

 シリアスムードでしめ……ることにはなりませんでした。

「ちょっとー! オレも混ぜてよドイヒー!」

 駆け込んできたのはベルゼビュート王子。

「チッ」

「ちょ、今何人舌打ちした? 全員じゃね? ひどー! 男子会ならオレも混ぜてよ、仕事ふって仲間外れしないでー!」

 PV撮影だの新作の服の撮影だので、せっかくどっか行かせてたんですが。片づけて帰ってくるとは、無駄にできるプロフェッショナルですね。

 ルキフグス様がしっしっと追い払う仕草しました。

「なんでお前も入れなきゃならない」

「ルッキーくぅん! 義理の兄弟じゃんよ、色々相談のってよおー!」

「輝夜と織女王は姉妹だが、お前と義兄弟になった覚えはない。実の兄弟のところに行け」

「帰ってくんなって言われてんの! あと、帰ろうもんなら三魔女が聞きつけてダッシュで来てオソロシイことになる! いやだあああああ、たすけてー!」

 想像しただけでマジ泣き寸前ですね。

「知るか。悩みだ? 自分でどうにかしろ」

「そんな殺生なああああ。ルシファー君も助けて! ぶっとび女王をもつ王配同士、分かるよな

?!」

「リリス様がかっとんだ方なのは事実ですが……」

 関わりたくない、と言いかけたところで事件が起きました。

   ☆


「女子会、はじめるよーん!」

 へーい!

 スイーツたんまり用意したテーブル、それを囲む色んなタイプの女子。いいねぇ。目の保養ですなぁ。

 今回はなんと、織さんまで来てもらいましたー! イエー!

 王様ヒマなのかって? あたしはともかく織さんは違うよ。でもホラ、息抜きって必要じゃん?

 忘れられてた第二王女からの女王即位じゃ、悩み相談できる人いないし。新婚ならではの悩みもあるっしょ。

 しっかし、女王二人に元姫一人含むって、考えてみればすごいメンツだな。

「ささっ、遠慮せずいっぱい食べてね! おかわりもあるよ。ガンガンつまみつつ、女同士でなきゃ言えないこともしゃべっちゃおー☆」

 名ばかりでも現役女王のお悩みそうだ~ん。

「てゆっても、言い出しづらいよね」

「あ、では私から」

 気を遣って輝夜ちゃんが挙手してくれた。

「お。なに?」

 輝夜ちゃんは頬に手あててウットリと、

「うちのダンナ様、なんであんなにかっこいいのかしら……」

「しょっぱなから盛大なノロケきた」

 ほう、てため息ついてる。

 こーゆーのってあたしのセリフだと思ってた。

「姉さん」

「毎日思うの。すっごくかっこいい。メガネ外した姿もまたいいのよ、弟妹以外で見られるのは私だけでしょ? なんかうれしくて」

「ああうん、ルキ兄さまめったに外さないよね」

「姉さん」

「かけてる時も素敵。知的よね。実際頭いいし、有能で真面目で実直で……」

「あ、うん、分かってる。ストップ」

 あたしが待ったかける役やろうとは。

 普段その役目のリリーちゃんがボソッと、

「リリス様みたいですね」

「あたしもそう思った」

 『魔王の母』と『ヒロインの母』って実は似たもの同士?

「ルキもそうやってやめろって言うの。むう」

 ほっぺたふくらます輝夜ちゃん。

 『姫』やめてからどんな感情も外に出せるようになってよかったね。

「姉さん、そりゃ普通恥ずかしがられるって」

「ルキは自分がかっこいい自覚がないのよねえ」

「それはあたしらも言ってるんだけどね。いかんせん会ったのが大人になってからだもんで、低い自己評価ができあがっちゃってんのよ。今さらなかなか変えられないよね」

「そうなのよ。自分のとりえは仕事しかないと思ってるの。だから分かってもらえるよう、毎日かっこいいって言い続けることにしたの!」

 どえらい羞恥プレイ。

 大丈夫かな、ルキ兄さまって堅物純情シャイボーイだよ。先に羞恥で死にそう。

 真面目で融通きかない兄がちょっとかわいそうになった。

「すっごくよく分かります!」

 ここで激しく同意したのはジャスミンさん。

「ルガ様も全然自信なくて。自信もってもらうため、必ず一日一回は愛してますって言うようにしてるんです」

 Oh……。

 こっちもやってた。

「えーとジャスミンさん、それ大丈夫? ルガ兄さま、無表情のまま意識飛んでない?」

「いえ? そうか、とか言って赤くなって視線そらしてるだけです。かわいいですよねっ」

 そ、そう。たぶんそれうれしすぎて昇天しかけてるよ。

「ルキもそうなのよねぇ。しかもさりげなーく遠ざかろうとするから、つかまえて顔つかんでこっち向かせるの」

「ワァオ」

 死ぬなよ長兄。

「なんで逃げるのって言っても無反応なのよね。石になったみたいで。なんでかしら」

「姉さん、さすがの私でも分かるよ。ていうか分かりなよ」

「何が?」

「天然無自覚姫……。元婚約者にはそういうのやってなかったっつーことは、ほんとに恋愛感情なかったのね」

「そうよ? 言ったことあるでしょ、『同志』としての友情でしかなかったって。政略的な婚約だったもの」

 そうそう、元婚約者『ヒロインの父』は奥様と幸せ結婚生活送ってるそうな。ルシファー調べ。

 アイリスさんがくすっと笑った。

「恥ずかしいのとうれしいのでどうしたらいいか分からず、キャパオーバーで固まるんですわ。アガリアレプト様もそうです。頭がよすぎるだけに一瞬であれこれ考えてしまい、脳がショートするんですね」

 ほほう。つーことはアガ兄さまもちょいちょい好きって言ってもらえてるんですな?

 さすがは大人なアイリスさん。上手くあの難物な兄を操縦してくれてありがとう!

「あたしはルシファーに言うと喜んでくれて抱きしめ返してくれるよっ」

「知ってます。全員しょっちゅうこの目で見てますわ」

 深~くうなずかれた。

「ローレルさんとスミレちゃんは?」

「ナキ君ですか? それは言ったら普通に喜んでくれます」

「えと、レティ様もです」

「レティ兄さまはね。うん。ヒナちゃんが生まれてからってもの、さらに何かが倍加したよね。リリーちゃんとこは……」

「断固としてそんな単語は言いません」

 速攻。

「ダヨネ」

「照れ? そうかしら。だってルキってばそういう時、敬語に戻るのよ? ……つまり、嫌、なんじゃ」

 どんどんしょげてく輝夜ちゃん。

 あああああ!

「いやいや、それ喜んでるって!」

「うん、嫌がってるわけじゃないよ姉さん」

「ルキ兄さまも長くほんとに思ってることを隠して生きてきたじゃん。ストレートに出しちゃダメだって、条件反射で表情筋引き締めちゃうんだよ。自分に落ち着けって言い聞かせるため、わざと敬語なわけ」

 デレちゃえばいーのに、生い立ちからできないんだよねぇ。

「ほんとは抱きしめたかったりすんのを必死で耐えてるって。内心かわいすぎるって悶えてるよアレ」

「確実に思ってますわね」

 つーか、輝夜ちゃん以外全員が気づいてることだけど、悶えて魔力暴発してるからね? メガネが犠牲に。

 ついにそれも追いつかなくなってるんで、ナキア兄さまが代わりのもの手配してる。

 この件は見て見ぬふりしたげよう、と全員言わずに黙ってた。

「だといいんだけど……。子供っぽいとか我がままとか思われてないかしら」

「ないない。あたしが言われたことないから大丈夫」

「なるほど分かったわ」

 ものすごく納得してもらえた。

 ん? いいんかなコレ?

「ルキは『姫』じゃなくて『私』の好きにしていいって言ってくれるし、行動も縛らない。自由にさせてくれる。……私はもらってばかりだわ。どうしたら何か返せるかしら。せめてとお仕事の手伝いしてるけど……」

「分かります」

 うなずくローレルさん。

「私はナキ君の仕事を手伝うことはできませんが、いつもしてもらってばかり。自分のことよりいつも私優先って、それじゃダメだと何度も言ってるんですが」

「あー、ナキア兄さまは元々尽くすタイプだからねー」

「ナキ君がしたいことはないのってきいても、自分がしたいことって思いつかないらしいんですよ。私が喜ぶこと……って、それじゃまた私のことになってる」

「それに対してどうしたの?」

「今思いつかなくてもいい、それなら一緒にこれから探していこうって言いました」

 一緒に探す、かぁ。

「いいね、その答え」

「はい。ですからルキフグス様ももしかしたら自分の希望が思いつかないんじゃないでしょうか?」

「それか、思いついてても言わないんじゃん? 口に出しちゃったら輝夜ちゃんはなんとしてもやろうとするから。自由にしてやりたいのに自分が枠にはめてどうする、って考えてそ」

「そう! まさにそう言われたわ」

「輝夜ちゃんには自由に笑っててほしいから、あえて言わないんだろーね」

 そういう兄ですよ。

「それじゃ、ルキばっかり我慢してるんじゃない……」

「あ、それは大丈夫。ルキ兄さまはしたたかだよ。はっきり口で言わないだけで、裏でちゃっかり希望叶える策めぐらしてると思う」

 ヒラヒラ手を振る。

 現に自分好みの服こっそり大量注文して、さりげなく輝夜ちゃんのワードローブ埋めてますがな。 

 どの服着るかはあくまで輝夜ちゃんの自由意志、けどそもそも選択肢が細工されてる。

 それやってんだから、他のもぜっったい仕込んでるって。

「え?」

「なんでもない。ルキ兄さまもしっかり自分の意志貫くとこは貫いてるから平気だよってこと。そーいえばルキ兄さまが退職した後の予定だけど、家どうすんの?」

 話題そらしつつ、ききたかったこときいてみる。

「まだ準備してないじゃん」

 元姫と前王の長子が済むとこっつったら、警備の問題もあってそれなりんとこ用意しなきゃなんないと思って、使わない離宮とかリストアップしてあるんだけど。

「悪名高いウチの先祖の持ち物なんか使いたくない気持ちはわかる。けど新しく土地買って建てるにしても、そろそろとりかからないと間に合わないよ?」

「それだけど、しばらくいろんな国を旅行するつもりなの」

 へえ。

「国外に出ちゃえば引き続き宰相やってくれって引き止められないでしょう? 自分がいないほうが後任もやりやすいだろうって言うのよ」

「あ~」

 ルキ兄さまと輝夜ちゃんのコンビ以上にできる政治家いないもんね。

「私のレポーターのほうの仕事ってことにしてね。これまでいくつもの国に行ったことはあるけれど、どれも公務で回っただけ。決められた、見せられるところしか見たことがないの。今度は好きなところに行けるんだもの、楽しみよ」

「新婚旅行とは、ルキ兄さまもイキなことするねー」

 そういやうちら兄妹弟で新婚旅行行ったのっていないな。

 レティ兄さまんとこはスミレちゃんが恐がる、ネビロスんとこは巣に抱え込んで離さないんで分かるけど。……いやネビロスのに共感はしないけど。

 アガ兄さまとナキア兄さまとルガ兄さまは行きゃいーのに。

「半年くらい経てば新体制も安定するでしょうし、帰国しても問題ないかと。その頃までにゆっくり考えようってことになったの。どこに建てるか難しい話だし」

「そだね。ついでだから兄弟順にいく? ローレルさんとナキア兄さまんとこは?」

「いずれ私の担当する発掘場所が決まりましたらそちらに移動するので……当座は父の近くに仮住まいで部屋を借りようかと」

 グシオン教授は完成した図書館隣の宿舎に引っ越したんだっけ。足が悪い教授が通勤しやすいよう、ナキア兄さまが手回して作らせたんだよね。

 つか、近隣住民全員、ナキア兄さまの息かかってんだろーなー。ネビロスだってやってたもんね。

 最近聞いたんだけど、亡命中のローレルさんの援助もしてたんだって? それと引き換えにルシファーの組織の協力者になって。

 スパイの手先になってでも守りたかったんだね。

「物件買っといて、転勤中は人に貸すって手もあるけど……あ、ナキア兄さまが嫌がるか。意外と自分のテリトリーに他人が入るの嫌がるんだよね。家族は除く」

 たぶん素性隠して下町で働いてたなごりなんだろうなー。誰にでも平等に接しつつ、一定以上近づけなかった。例外はローレルさんと教授だけ。

「テリトリー? ナキ君はそんなに縄張り意識強くないですよ」

「これまではね。今まで抑えてたぶん、フタ外れると反動でか~なり独占欲強くなるとみた」

「そうでしょうか。といいますか正直なところ、お金の面で買うのは厳しくてですね」

「ああ、ナキア兄さまって人助けに使っちゃってて貯金ないもんね」

 それと、ローレルさんへの仕送りにあててた。

 ルシファーに頼んで情報収集のバイトすればすぐ資金作れると思うけど、これは秘密なわけで。

「そっかー。前ちょろっと悩んでた、ナキア兄さまの八方美人なとこはどう? だいぶやめたっぽいけど」

「はい。自分でも意識してるみたいです」

「サタナキア様が奥様一人に注ぐようになったのはいいですが、どこかでストップかけておかないとネビロスみたいになりますよ」

 暗い顔のリリーちゃん。

 説得力ありすぎ。

「まさか。ナキ君はしないわよ」

「甘いです。ネビロスだって昔はああじゃありませんでした。あいつの売位は私利私欲のため人々の好意を利用してたのでサタナキア様とは違いますが、手法は似てるんです。足踏み外せばなりかねませんよ。ネビロスは手遅れ寸前で、ひっぱたいてでも止めようとしたらこんなのに……」

 く……って握りこぶしテーブルに打ちつける。

「ほんっと弟がゴメン……」

「いえ、リリス様のせいではありません。とにかくネビロスみたいに取り返しのつかないレベルまで堕ちる前に、ヤバイと思ったらすぐ全力で阻止することが肝心です」

「……う、うん」

 ま、まぁナキア兄さまは大人なぶん自制できるから大丈夫だと思うよ? ……たぶん。

 たぶん!

「えーっと、アガ兄さまはアイリスさんが好きな自然いっぱいの土地買ってたよね。人のことなんかどーでもいアガ兄さまが思いやりを……っ。なんて進歩! ありがとアイリスさん! ぜひこのまま手綱握っててちょーだい!」

「いえいえ、ふふふ」

「ほんと我が兄ながらひねくれた狂犬みたいなんだもんさー」

「そうですわねぇ。でもそれを手なづけるのが面白いんですわ」

 面白いって言えるのがすごいっす。

「アイリスさんとこもワールドコンサートツアーでしょ?」

「ええ。アガリアレプト様も各国の支店を回れますし。ついでに行きたい観光地があるなら連れてってやる、あくまでついでだからな、とか言ってましたわ」

 精一杯のデレ。

「ほっほーう。それって見えるようになったアイリスさんを好きなとこ連れてってあげたいんじゃんねぇ。ツンデレさんめ」

「ふふ。本当にリリーさんのおかげですわ。ありがとうございます」

「いえ、お役に立てて何よりです」

「アガ兄さまも素直じゃないな~。っとに」

「ええ、かわいいですわよねぇ」

 かわいい?

「え、あの仏頂面に不機嫌のどこが」

 妹だからこそ遠慮なく言う。

「よくできましたってナデナデすると、ムスッとしつつもされるがままですもの」

 見事なしつけぶり。師匠と呼ばせてください。

 手を合わせて拝んどく。

「じゃ、目標の好きって言わせるの達成できた?」

「それはまだまだですわ」

「まだダメかー! いーかげん自覚すりゃいーのに」

「初めから時間かけて育てるつもりでしたし、構いませんわ。そうですわねぇ、次の大きなチャンスは子供ができた時かしらと思っております。けれどコンサートスケジュールに響かぬようにしなければ」

 売れっ子だもんね。

「……ただ、言っていい? 中身がアガ兄さま似の息子はちょっと……」

 めっちゃ親子ゲンカして、果てはどっちかが魔王になりかねんよ?

 せっかく回避したのに冗談じゃないっ!

「ええ、私もそれは困ります」

「分かる……分かります。父親そっくりの息子、どうしよう……」

 リリーちゃーん!

 遠い目になってつっぷしてるっ。

「なんで似ちゃったのかな……ふふ……。血か……血なのか……」

「し、しっかりー!」

 アイリスさんが冷静に、

「ネビロス様のほうがまだマシですわ」

「マシか?」

 つい言っちゃうパート2。

「アガリアレプト様は平気で敵を作りまくりますし、あんな性格が二人もいたらケンカどころの騒ぎじゃすみませんわ」

「ああ……まぁ、ネビロスとイポスは親子ゲンカはしないでしょうね」

「もし娘でしたら溺愛するでしょうけれど」

 全員の目がなんとなくスミレちゃんに向く。

「ヒナちゃんかわいがってるレティ兄さまみたくね。スミレちゃん、レティ兄さまま~た暴走してない?」

「はい、その、時々。でも止めてますから」

 がんばってます、ってうなずくスミレちゃん。

 お母さんになってちょっと精神的にタフになったよね。

「うんうん。そうしといて。なにせうちの兄弟、みんな奥さん好きすぎんのよ。父親反面教師にして、自分は一人を大切にするんだーってのがどうもエスカレートしがちっつーか」

「妹溺愛ぶりでそれは知ってたわ」

 輝夜ちゃんの言葉にみんな同意。

 あ、そう?

「スミレちゃん、最近レティ兄さま何作ろうとしてた? 遊園地作ろうとして止めたのは知ってる」

 織さんが首傾げた。

「? 遊園地ならいいじゃないスか。みんな喜ぶっしょ」

「いやいや、個人の。自宅敷地内に娘専用の作ろうとしてたの」

「スケールがデカすぎる!」

 ごもっともなツッコミ。

「レティ兄さまは戦闘能力高くて危険視されてたからさ、愛娘に超過保護になってんのよ」

 家具職人になる!ってあっさり軍辞めてマジで作ってるんで、「あ、こいつアホだ危険ないわ」ってなったけどね。

 そうでなくてもヒナちゃんは予知って特殊能力持ちだしなぁ。

「ああ~。……てことは姉さんとこに娘でもできようもんなら、同じくどえらいことに?」

「まさか。ルキはそこまでならないわよ」

 どうだろ。

「まぁ、ルキ兄さまとナキア兄さまはある程度理性で抑えると思うけど……」

 表向きは。

 最後の部分飲みこんどく。

 裏じゃどうだろ……。ゴメン、止められる自信ない。

 頭のいい人と要領のいい人はさぁ、あたしみたいなアホじゃ気づけないんだよー。

「えと、何でもかんでも与えるのはだめです、教育上よくありませんって説得したら納得してもらえました」

「仕事ほっぽってヒナちゃんかまいたおしてたもんね」

「はい……親としてそれはよくない、って言ったんです」

「うんうん。あ、仕事といえば織さん。注文受けてた椅子と机のセット、できたって。今日持って帰る?」

 織さんの体のサイズに合わせた執務用のやつ。

「おっ! ありがとっス! いやぁ、助かりますわ~」

「スミレちゃん、そうやってレティ兄さまにはガンガン仕事させていーから」

「は、はい。私もそのうち仕事復帰しますし……」

「ムリしなくていーのに」

 育休制度めっちゃ充実させたよ?

「いえ、私も働きたいんです。その、まだまだ外や知らない人は恐いけど、お母さんになったんだし、ヒナも保育園に入るし、人と関わらないわけにはいきません。ちょっとずつがんばろうと思うんです」

 まぁね。城内保育所はネビロスが園長で、城の従業員の中からさらに厳選されたうちしか入れない。防犯上の理由だ。つっても、初めましてなお宅もあるもんね。

 スミレちゃんもがんばってるんだね。

「お母さんえらいなぁ」

「そ、そんなことないです……」

 いやいや、母親になると強くなるって言うじゃん。

「ジャスミンさんとこは? 病院と研究所の中間地点あたりに家買ったんでしょ」

「はい。早々に私の特性のせいで家吹っ飛ばないよう気をつけますっ」

 ……シャレにならん。

「あー、でもさ、だいぶ減ったよね?」

「そうですね、ルガ様が未然に防いでくださってるだけじゃなく、なんといいますか……ルガ様のおかげで私も精神的に余裕ができまして。そしたら不思議なことにドジ吸引頻度が減ったんです」

 現に、お茶会始まってから今まで一度も発動してない。

「よかったねー! 安心じゃん」

「完全に消えたわけじゃないですけど、はい。ちょっとでもうれしいです。正直、あのままじゃ子供なんて産めないと思ってましたから。私だけの被害ならいいですけど、もし子供まで巻き込んだら……? それと、子供にまで遺伝したら……」

 そっか、そういう不安が。

「いや、ジャスミンさんだけの被害だってよくないよ。てか、遺伝はしないんじゃない? 弟君やおじいさんおばあさんにはその特性ないでしょ」

 ルガ兄さまを尊敬してる、勉強熱心な弟クン。

 ルシファーが「善良で真面目な医師ですよ。あれが邪気のない純粋な『弟』です」って評してた。

「はい。でもルガ様が、私のこの特性は不安とかの感情に関する一種の共感能力じゃないかって診断をですね」

「共感?」

 どゆこと?

「ご存じの通り、私と弟は両親に捨てられて祖父母に育てられました。どうしても周りの顔色をうかがっていて……迷惑にならないか、怒られないか、いつも不安だったんです。常に最悪の事態を考えてたせいで、無意識にマイナス思考な念とシンクロしてしまい、引きつけてしまってたんじゃないか……。私が魔物の気持ちなんとなく分かるのもそうのせいじゃ、ってルガ様が説明してくれました」

 共感能力の、自分じゃコントロールできないタイプかぁ。

 輝夜ちゃんと織さんは真剣に聞いてた。

「そういう能力者がいるのね」

「そういえば元同僚にいたっスよ、似た人。その人は植物の体調が分かって、育てるのがすごく上手いんス。どんな生育困難な品種もできちゃう」

「なるほどー。けっこうすごい能力じゃん。てゆーか解決法思いついた。今度は共感するの不安な気持ちじゃなくて、幸せな気持ちにしたらどう?」

「幸せな気持ち、ですか?」

「うん。それならコントロールできなくて引き寄せちゃっても、ハッピーが来るだけでしょ。幸せが集まるんならよくない? 逆に幸せを引き寄せる人になればいーんだよ」

 ジャスミンさん、目からうろこみたい。

「そんな考え方が……! 思いつきもしませんでした。そっか、それなら周りの人に影響しても、これまでみたいに嫌がられたりしない」

「むしろ喜ばれるよ。ただ、ジャスミンさんの近くにいればいいことあるってよこしまなこと考えるのも現れるだろーね。ま、それはルガ兄さまが速やかに排除するから問題ないか」

 背後から一撃、最低限の動作で気絶させて片づけそうだ。

 実は兄弟中一番暗殺者の素質あるんだよねー。

「ルガ様がですか?」

「あ、いやホラ、うちの兄弟って悪意に敏感だから。すぐ気づくじゃんて話。ともかくジャスミンさんは楽しい・うれしいってこと引き寄せるよう意識してみたら? ルガ兄さまも小さいころ悲惨だったからさ、そのぶんも幸せあげてほしいんだ」

「はい、がんばりますっ!」

 よかったよかった。

「リリーちゃんとこは……。……家の進捗状況どう? ネビロスいわくの『理想のマイホーム計画』、あたしも注意して潰すようにしてるんだけど……」

 いざとなったら監禁できる設計だの、窓に鉄格子だのって注文は兄弟総がかりでやめさせた。請け負ってる建設会社がレティ兄さまの傭兵仲間が立ち上げたとこなんで、情報流してもらってんの。

「本気で怒りまして。全部私の希望で建てるよう変更させました」

「それが正解。ありがとう」

 ほんと弟がスミマセン。

「あんなんで父親だいじょぶかねって心配だよ。でも意外とフツーに子育てしてるね」

「孤児院育ちで元々子供の面倒みるのは慣れてますから。よくどっちが子供か分からない言動も取りますが、その程度なら問題ありません。害はない」

 普段、害がある言動しがちなのが泣けてくるよ。

「ネビロスもようやくちゃんと働くと決めましたし、双子も健康で育ってます。十分ですよ。イポスの中身がアレなのは問題ですが、まだ小さく間に合うはず。しっかり教育します」

 メガネがキラッて光りましたな。

「ラボラスくんのほうは真面目にイポスくんの歯止め役がんばりすぎて倒れないよう注意だね」

「ええ、私に似て我慢しがちですから……」

 リリーちゃんもお母さんがんばってるよ。

 親ってのは心配がつきないもんだよね。前世の両親もよくあたしのこと心配してたから分かる。

 あたしもいずれ息子が生まれたらそうなるのか。

 つか、『ラスボス』にならないでってのが一番の心配事だよね。

 ベルゼビュート王子が「どうやらもうさすがにシナリオ通りのバッドエンドにはなんないだろう」って分析してはいた……。

 ―――ん?!

 ふいにあたしは察知した。

 何、今の一瞬のすっごい殺気!

 しかもこの感じはナキア兄さま。

 普段ニコニコしてるナキア兄さまがなんで?

 探知能力全開。

 向けた相手はお義父さん……?

 とっさにルシファーが結界張って外に漏れるの防いだんで、気づいたのはあたしだけっぽい。

 うーん。お義父さんのことだからたぶん、昔ローレルさん使ってナキア兄さまを担ぎ出そうとしてたとかそこらへんの悪だくみしてたんでしょ。それ聞いたナキア兄さまがキレた、ってとこかな。

「…………」

 突然黙りこんだあたしを織さんが不思議そうに見た。

「どしたんスか?」

「んー、ちょっとね。子供といえば兄さまたちの子供の頃ってどんな姿だったのかなーと思ってさ」

 そーだ!

「いいこと考えついたっ。気分転換と練習に―――」

 一時的に体を幼児化させる魔法あったはず。とある組織の某薬じゃないよ。

 『ヒロイン』がかけられてちっこくなるエピソードがあったんだよね。けっこう魔力量が必要なんだけど、あたしならせきると思う。

 危機察知に長けたリリーちゃんがおそるおそる、

「あの、リリス様? 何考えてます?」

「ふっふっふ。ちょっとイタズラを。やってみよー♪」

 そぉれ!

 成功した手ごたえあり。

「おっし、いけたっ。行って確認してみよー」

「ちょ、リリス様?! ほんとに何をしたんです?!」

「まぁまぁ。はっはっは」

 すったかたー。

 男性陣の部屋とんでって、

「へーい! どーおっかな~? お。ちゃんと効いてるじゃ~ん」

 五歳くらいになった兄弟がいた。

 か~わいい。

「こらリリスー! 犯人はお前か!」

 一斉に怒られた。

 ホホホホホ。

「リリス様」

 変わってないルシファーが質問。

「これは幼児化の魔法ですよね」

「そだよー。成功してよかった」

「ええと、まずなぜこれを?」

「面白そうだから」

「こらぁ!」×兄4

 あ、うっかり本音が。

「あー、そう! ホラ、子供いないウチは生まれた時の練習にもなるかなっと」

「今とってつけてません? ところで僕にはかけなかったようですが」

「ルシファーの子供姿は知ってるし、次の機会にしよーかと」

「こらぁ、リリス!」

 ルキ兄さまに服のすそ引っ張られた。

 おお、まんま小さくなって。メガネはサイズ合わなくて外したの?

「どしたの? ちゃんと服にも縮小魔法かけたから、大きすぎてダボダボってよくある事態にはなってないじゃん」

 ちゃんと配慮しましたよー。

「そういう問題じゃない! いやそこはありがたいがっ、とにかく解きなさい!」

「半日で自然に解けるよう設定してあるよ」

「今すぐだっ。仕事にさしつかえる!」

 もー、これだから仕事人間は。

「いいの? 輝夜ちゃん喜んでるのに」

 追いかけてきた輝夜ちゃんは、めっちゃキラキラした目で両手握り合わせてた。

「……か……っ」

「か?」

 蚊でもいた?

「かわいい――っ!」

 ハートばらまきまくって抱きついた。

 慌てるルキ兄さま。

「うわああっ、何だ!」

「かわいすぎるっ! もー、ほっぺぷにぷに、お手てちっちゃい! お持ち帰りしたい!」

「どーぞー」

 どうぞどうぞ。だって夫婦じゃんね。帰る家同じ。

 もろ手で売り渡す妹をにらむ兄。

「ちょ、喜んでないで輝夜も止めてくれ! ……ほっぺた揉むなぁ、離せ!」

 いやぁ、いい仕事した後は気持ちがいいですなぁ。

「イヤ。だってかわいいんだものっ。ぎゅーさせて」

「ぐっ……」

 うれしいのと恥ずかしいのの板挟みで詰まるルキ兄さま。

 ほほほ、妹の兄への思いやりですことよ。

 自分グッジョブ。

 ナキア兄さまはどうかな?

「あ、小さいころのナキ君だー。懐かしーい」

 すばやく正確に状況を判断したナキア兄さまは、あたしを非難するのをやめて、

「だな。まいった、これじゃテーブルの上に手が届かねー」

 意味ありげにローレルさんに目配せ。

 アレとかコレが通じる間柄なんで、ローレルさん理解したっぽい。自分が椅子に腰かけてナキア兄さまを膝ににっけた。

「はい。これで届く?」

「ああ。ありがとな」

 うーわー。さすが、どう動くのが得かよく分かってる。

 ローレルさん、イチャイチャって意味じゃなく素でやってるのがすごい。

 あ、向こうでネビロスが真似してリリーちゃん見て拒否られてる。

「アガ兄さまは……。あれ、どこ行った?」

 キョロキョロ。

「ここですわ」

 アイリスさんが苦笑してカーテンめくった。

 いた。

 体丸めて小さくして隠れてた。

「やめろ、めくるなぁ!」

「アガリアレプト様はプライド高いですから、恥と考えて見られたくないのですわ」

「分かってるならやるなよ!」

 カーテンつかんで攻防戦。

 アガ兄さまは本気なんだろうけど、きゃわゆく見えちゃう。

「どうして恥なんですの? 誰しも子供だった時代はありますでしょ。私はアガリアレプト様の幼少時が見れてうれしいですわ」

「…………」

 アガ兄さまはスススッとアイリスさんの陰に隠れた。

 アイリスさんは穏やかに微笑んで壁になってあげてる。

 さすがです。

 レティ兄さまは?

「パパ、ちっちゃくなった? きゃはー」

「レティ様、小さい姿もかっこいいです……っ」

「そ、そうか?」

 まんざらでもなさそーだ。

 ルガ兄さまは?

「……筋力も体力も完全に子供だな。魔力は変化なし」

 超冷静に分析してた。医者。

「さすがルガ様、常に研究と分析を怠らない姿勢、見習いたいです!」

「……それは。でないと君が危ない時守れないだろう」

「……っ」

 真っ赤になりつつ、うれしそうにはにかむジャスミンさん。

 うむうむ、仲良きことはいいことじゃ。

 ネビロスは?

「リリー、大丈夫ー?」

 ああっ、テーブルに突っ伏してブツブツ言ってる!

「り、リリーちゃん平気?」

「……ご心配なく。ろくでもない思い出がわんさと浮かんできただけです」

「わぁ、父さんぼくそっくり」

「ていうかイポスが僕に似たんだよ」

「え、じゃあイポス大きくなったらこうなるの……?」

 うげぇって顔しかめるラボラスくん。

 わ、分かるよ。君には苦労かけるねぇ。

 ベルゼビュート王子は? つーか来てたんだ。早々にルキ兄さまが撮影だのなんだの無理やりスケジュールつめまくって、仕事に追い払ってたよね。

「わー、みんな見事に丸め込まれてら。奥さんに弱いっつーか。……あ、待てよ。これオレなら解けそ」

 なぬ。『バグ』には可能だったか。

 止めたのは織さん。

「ダメっすよ!」

「なんで」

「イイじゃないスか。チャンスだ、撮影しまくりましょ! 宣伝に使える。お子様バージョンでPV作ったらバカ売れじゃ? よし、キッズモデルとしてデビューっすよ!」

 拳握ってやる気満々。

「オレすでにアイドルデビューしてるけど。つか、鼻息荒ぇ」

「そりゃそうもなるっしょ! とりま一曲オナシャス!」

 マイク差し出されると受け取っちゃうアイドル。さらにスマホで曲流されると条件反射で歌い始める。

 プロや、プロがおる。

 すかさず準備する織さんもプロフェッショナルだな。

「はわわわ、子供ならではのハスキーボイス……っ。イイネ!」

 キャーキャー言いながら写真撮りまくってる。

 おっかけか。あ、ファンだったっけ。

 んでも子供の体じゃ無理なダンスもある。

「おわっ、と、と」

 ベルゼビュート王子がバランス崩した。

「ベルっ」

 ぱっと飛び出した織さんは上手くキャッチした。

「あぶなかったぁ。ていうか、動きがっ。ちまちましててハゲ萌えっス! ミスしちゃってしょげすのもよし! うちの子にしたい!」

「いやオレ一応キミの夫なんだけど」

「ね、せっかくだからコレも再現してほしいんスけど!」

 ズイッて突き出したスマホの画面には。

「織さん、それって今はやりのアニメの」

 よくある、少年たちが巨大ロボ乗って悪と戦う系。

 ぶっちゃけあたしが見たくてアニメ会社立ち上げて作ってもらってる。

「そうっス。厳しい司令官と平凡だけど任務に忠実な補佐官のカプがたまらんのですよ。敵の幹部ともアリっすね」

 なるへそ。

「で! 今なら主人公の真似できんじゃないかと! やってやって!」

「え、あ、おう」

 求められるとやっちゃうのがアイドル。

「ナンバー1、参上!」

「ナンバー2、登場!」

「ナンバー3、見参!」

 ノリいいナキア兄さまとネビロスがフツーにのっかったわ。

 主人公、三人チームなんだよね。言うまでもなくロボが合体する。

 織さん、ローレルさん狂喜。

「ナイスぅ!」

「ナキ君うまーい!」

「まぁな。そんな喜ぶなら他のもやるよ」

「ほんと? あ、でもそれより色んな服着てほしいな」

「おけ~」

 それでは!

 すかさずワードローブ展開。

 ばーん。

「ローレルさん、どれでも好きなの貸すよ。うちのブランドは子供服も各種取りそろえてましてよ。ふっ」

「きゃああああ! リリス様素敵!」

「アニメ・マンガのコスもあるよ」

 あたしが個人的に作った!

 グッと親指立て、無言で讃え合う。

「みんなもいる?」

「はいはい、僕借りる! これとかショタキャラだよね、確か。これとー」

「やめろ」

 リリーちゃん、背後に仁王が。

「え? コスプレする必要ない、そのままの僕が好きってこと? うれしいな」

「誰がそんなこと言った?!」

「またまた~。照れちゃってー」

 ん、ネビロスの手からは遠ざけとこ。

 さりげな~く移動しとく。

 したら輝夜ちゃんがこっそりと、

「ねえ、選んでもいい?」

「おいっ! 何言い出してる?!」

 抱きかかえられたままのルキ兄さまがギョッとしてる。

「だって似合いそうなのいっぱいあるんだもの」

「俺は着せ替え人形じゃないんだぞっ」

「……だめ?」

 目に見えてしょんぼりする輝夜ちゃん。

 正統派お姫様のコレに勝てるのはいないわー。

「う……」

 例にもれずルキ兄さまも陥落した。

「……最低限な。日常生活に適した服装かつ最低限の数だぞ」

「ありがとうっ」

 輝夜ちゃんとローレルさんは大喜びで選び始めた。

「まずは正統派王子様よね。本物だし! あ、こっちのスーツもいいわ」

「いや俺は確かに王の子だけど王子じゃな……聞いてるか?」

「あえていつもと違うタイプ選ぶのもアリですよ。こっちのやんちゃボーイ系はどうです?」

「いいチョイスね! ローレルさんは色んなジャンル選んでるわね?」

「ナキ君はオールジャンル対応可なので!」

「おーい、日常生活に適してて最低限の数って言ったろ」

「兄貴、あきらめな」

 達観して肩たたくナキア兄さま。

「言ってもムダ。まぁ嫁さんのささやかな望みくらいきいてやんなよ。服着てやるだけじゃん」

「だってこれ余裕で30・40いくノリだろ」

「いーじゃん別に。折をみて、付き合ってあげたんだからって反対に好みのカッコしてもらう口実になるだろ」

「…………」

 真剣に検討しとる。

「その口ぶり、さてはお前何回かやってるな?」

「ははは。ナイスアイデアだろ」

「……まぁ悪くない」

 いいんかい。

「ついでにオレのおススメは」

 こっそり裏カタログ出して見せるナキア兄さま。

 市販してない、あたしが個人的趣味で作った服のカタログだ。前にルキ兄さまにあげたことあるでしょ。

 実はアレ、一冊じゃなくてね。フッフッフ。いくつかバージョンあんのよ。相手によって渡すの変えてる。

「ここらへんのページかな」

「ん? これ、俺のほうにはなかった……ははぁ、リリス、何パターンか用意しておいたのか。リリス、ここから3ページ全部頼めるか」

「まいどありぃ」

 あたしも小声だよ。

「こーゆーの好き? んじゃ、次はこのテのも入れとくわ」

 怒られるかなーと思って、王道・ストイック・可憐路線に絞ってたんだよね。ふむ、ちょいセクシーめもOKっつーことね。

「逆に兄貴の見してよ。サンキュ。……おっ、リリスー、これとこれと……あー、もう終わりまで全部ほしい」

「終わりのってぬいぐるみだけど、ローレルさんも好きなんだ」

「うんにゃ、普通レベル。単に今なら超似合うだろ。オレが見たい。……あ、念のため言っとくと、ネビロスに渡すカタログには絶対載せるなよ」

「なんで? ハイテンションになるから?」

「それもあるけど、あいつのことだから盗聴器だの監視カメラだの仕込むぞ」

 ありえる。

 三人してゲッソリ。

「えー、やらないよ」

「聞こえてたの、ネビロス」

 地獄耳。

「嘘つけっ。他のだけどお前は前科あるだろ!」

 やっぱあるのか。

「ほんとにしないってば。毎日ずーっと一緒にいられるのに、そんな必要ないじゃん。写真や動画より本物のほうがいいもん」

「ああ……」

 でもそれ、四六時中つきまとわれてるとも言うような。

 ……深く考えんのやめよ。

 子供たちを手招き。

「ヒナちゃん、イポスくん、ラボラスくん、おいで~。今日はおばちゃんとこお泊りしよ♪」

「え、リリス?」

「子供たちは預かるから、たまにはみんな夫婦水入らずで過ごしなよ。だいじょーぶ、お世話慣れてるし」

 ミルクあげるのもおむつ替えもやりましたよ。小一時間みてて、睡眠不足のスミレちゃんやリリーちゃん寝かせてあげてたこともある。

「ヒナちゃんもあたしなら恐くないよね」

「うん。おばちゃまはかっこいいの」

 はあああ、かわゆす。

「双子もどう? お泊り」

「いいよー」*ヒナちゃんがいればどこでも、が省略されてる

 省略部分、言わんでも伝わってくるよイポスくん。

 そんで、「こいつ止めるセーブ役いないとダメだから自分が見張ってなきゃ」って決心してるラボラスくん……君、いい子……っ。くうっ。

 おじおばたちは涙をぬぐった。

 お義父さんも手を挙げて、

「私と妻もお手伝いしますよ。たまには孫たちとのんびり遊ばせてください」

 お義父さんにとっては息子の妻の甥・姪であって、実の孫じゃない。でも孫同然にかわいがってくれてる。

 最初から「おじいちゃんおばあちゃんだよ」って名乗ってるし、ヒナちゃんたちは父方の実の祖父母だと思ってるだろーな。

 別に血のつながりだけが家族じゃない。ね。

 あたしは手をたたいた。

「決ーまりっ。明日はおばちゃんの仕事場連れてってあげるよ。職場見学ツアーだっ。キレーな服とかアクセいっぱいあるよー」

「ほんと? みたいー」

「女王の仕事場って言ってドレス工房指すのはおかしい気がするがな」

 名ばかり女王だもん。そっちの仕事はルキ兄さまたちに丸投げしましたっ!

「僕は構わないけど。姉さまのとこなら安全だし。リリーは?」

「まぁすぐ隣だし……。でも迷惑じゃありませんか?」

「全然。むしろかわいい甥姪を愛でられて幸せ」

「ヒナが喜んでるので、私はいいですが……」

「俺も、リリスのとこなら。リリスもいずれ子供生まれた時の練習にな……あれ、言っててムカついてきた」

 そろってルシファーにらみつける兄さまたち。

「その姿でにらまれても、痛くもかゆくもありませんよ?」

「うるせぇ」

「さーさー、そんじゃ行こっか子供たち。ヒナちゃんはおばちゃんが抱っこするねー」

 恐がりで人見知りのヒナちゃんはスミレちゃんが抱っこして、さらにそのスミレちゃんをレティ兄さまが抱き上げて、ってのが基本移動スタイル。

「だいじょぶだよ、リリスおばうえ。ぼくらが手つないでれば。ね、ヒナちゃん」

「うん、いっくん」

 ヒナちゃんは無邪気に双子と手をつないだ。

「なにかあっても、ヒナちゃんはぼくがまもるからね」

「……やりすぎたらぼくが止めることにするよ」

 ほんっとえらい子だわ、ラボラスくん! 君に任せた!

「お姫様と騎士二人みたいだね」

 実際、お姫様みたいなもんか。現在王家の血を引く女児はヒナちゃんだけだ。

 あたしはすでに女王なんでね。

「そっか、ぼく、ヒナちゃんをまもるりっぱなナイトになるね!」

「ちょ、イポス、あんたね……」

 大丈夫かな。レティ兄さまキレない?

 ところがレティ兄さまはネビロスに、

「本人が言ってるし、そろそろ本格的にボディガードとして鍛えていいか?」

 え、いいの?

 眉をひそめた。

 将来、一番弟子に愛娘かっさらわれるよ?

 レティ兄さま、変なとこでニブい……。

 ……違う、ネビロスって実例知ってるんだから気づかないわけない。

 考えたくなくてわざと思考にフタしてる?

「うん。むしろお願い。傍系とはいえ多少王家の魔力持ってるもん、早めにコントロール方法覚えさせとかないと」

 まっとうな理由でごまかされないよ。同じ気質の息子の手助けしたいんでしょ。

「あら?」

 輝夜ちゃんがヒナちゃんのしょったリュックに目をとめた。

「それウサギの形なのね」

「うんっ。ウサギさんのおかおなのー」

「触ってもいい? わぁ、ふわふわ……っ。手触りすごくいいわ」

「そうなの。あのね、ママがくつってくれたの!」

「まあ、スミレさんが? すごいわ」

「いえ、私はリリス様に教わって作っただけですので……」

「ぬいぐるみの生地の余りを使ったんだ。だから材質は一緒なわけ。子供用品もそのうち売り出すつもりで、その試作品の一つ」

 輝夜ちゃん、自分用に一個欲しいんだよね? 後であたしが作ったのあげる。

 ってアイコンタクト。

 正確に読み取った輝夜ちゃん、うれしそうにうなずいた。

「さあ、今日は子供たちお泊り会だーっ!」

 楽しい楽しいお泊り会、始まるよー。

 めっちゃ近所、つーか隣だけどね!


 





 






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ