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既婚者限定男子会またの名を夫側の内緒話

 さて、リリス様が義理の姉妹たちと女子会されてる間のことです。僕ルシファーとサタナキア様はフルーレティ様を無理やり連れだしてました。

「オレは戻るっ! 離せよ二人とも、スミレが心配なんだ!」

「そう言われましても、リリス様に頼まれてますので」

「あのなぁ。嫁さんゆっくり休ませてやれよ。いつもべったりじゃ、嫌がられるぞ」

「うん。どうかと思うよねえ」

「ネビロス、お前に言われたくねぇ」

 同感です。

 別ベクトルにどっちもヤバイじゃないですか。

 サタナキア様に「ルガも来い」と誘われたサルガタナス様は、オロオロしつつも黙ってついてきてます。

 サタナキア様いわく、「既婚の男同士でちょっくら話-ぜ」だそうで。女性陣がおしゃべりしてる間、男性陣側も色々話すことがあるだろうというわけです。サルガタナス様は未婚ですが、時間の問題ですし、学ぶところも多いかと。

 というわけで、別の部屋で内緒話です。

「ネビロスはどうなんだ? リリーちゃんに甘えすぎて三行半つきつけられんなよ」

「やだなぁ、僕とリリーはラブラブだよ? 今日もおはようのハグとキスしようとしたらひっぱたかされそうになったけど、そういう初心なとこがいいよねー」

「ちょっと自重しろ。それ本気で嫌がられてんぞ」

 間違いなくそうですね。

「ナキア兄さんこそどうなのさ。まさか急に結婚しちゃうなんて、しかもローレルさんと接点あったなんて知らなかったよ」

 調査と情報収集に長けているネビロス様ですら、サタナキア様の過去は知りませんでした。さすがに兄弟の過去を探ることはしなかったんですね。

 サタナキア様は肩をすくめました。

「わざわざ言うことでもねーだろ。大失敗してフラれた経験なんてさ」

「やたら達観してるっていうか、必ず女性とは一線引いてる理由も分かったよ。よく好きな子手放したね。僕なら絶対無理。しかも、相手に彼氏できたら応援してたなんて」

「オレにできるのはそれしかなかったからな」

「ねぇ。そいつ、とんだろくでなしだったんでしょ? ナキア兄さん、当然捕まえたよね。どう処理したの?」

 サタナキア様が一瞬グラスつかもうとした手を止めました。

「処理って、言い方」

「でもそうだろ? ナキア兄貴のことだから、どうせ実は手近に確保してジワジワネチネチいたぶってんだろ。精神攻撃上手いもんな」

「……奴は行方不明だぞ。どうしてオレが捕まえたと確信してんだ」

「ナキア兄さんだから」

「ナキア兄貴がやらねーわけねぇ」

「……違うのか?」

 サルガタナス様にまで言われ、サタナキア様は苦虫をかみつぶしました。

「はー、バレてたか。口外すんなよ?」

「しませんよ、面倒ごとはお断りです」

「すげぇ納得できる理由だなオイ」

「で、どういうことやってんの?」

 現在進行形ですか。

 サタナキア様が説明すると、フルーレティ様とサルガタナス様は身を震わせました。ネビロス様だけが興味津々。

「へぇ、いいね。参考にするよ」

「コラ! お前はもうやらかしてんだろ、やめろ!」

「辞めたオレが出動する事態にすんなよ!」

「……やめなさい」

「ネビロス様、それは見習ってはいけません」

 全員総出で止めました。

「ちえー。じゃあさ、新婚生活どうなの。ローレルさんて大人びてるように見えて、けっこうぬけてるでしょ」

「よく分かったな。さすがっつーか。ドジじゃあないが、まぁな」

「……そうなのか?」

「家事能力皆無なんだよ。生活能力も低い。ほっとくとゴミ屋敷になるもんで、昔はオレが毎日掃除に通ってたんだ。オレがいなかったらどうなってたんだろ。ほんと、ほっとけねーっつーかさー」

「……分かる」

「だろ? オレがいなきゃダメなんだなぁってうれしいんだよなー」

 意気投合するお二人。

 世話好きなサタナキア様と、人に頼られたことのないサルガタナス様は好みが似てたんですねぇ。

「ふーん。じゃあルガ兄さん、ジャスミンさんに自分がいれば安心だよってすりこみすればいんだよ。簡単じゃん」

「さっそくいらん知恵授けんな! 刷り込みって、また言い方!」

 サタナキア様が末弟の頭をはたきました。

「ルガ、真に受けんなよ。お前はゆっくり平和的に彼女と交際しろ。自分のペースでな」

「……分かった。レティ兄さん」

 フルーレティ様、ご自分は急にトップスピードで奥方捕まえてませんでしたっけ?

「サルガタナス様、次はどこへデートに行かれるんですか?」

「……ナキア兄さんが教えてくれたミュージカル。しゃべる必要がない」

「人気のタイトルなんだよ。脚本家・演出が他国の出身者なんだけど、LGBTの人で、差別されてこっちに来た」

「最近そういうケース多いよね。今じゃうちの国、差別・迫害されてる人の駆け込み先らしいよ。昔と大違い」

「奴隷や賤民として虐げられていて逃亡してきたというケースもよく見られますね。これが優秀な人が多いんですよ。生まれた身分が低かったり、少数派というだけで出世できないなど気の毒です。こちらとしては優秀な人材がどんどん入って来るのでありがたいですよ」

 かつては誰もが逃げ出したかった恐怖の国が変わったものですね。

「……なぜ人間は差別するんだろう」

 サルガタナス様がぽつりとつぶやきました。

 ものすごく重い発言ですね。生い立ちが生い立ちですから。

 サタナキア様がわしゃわしゃと弟の頭をなでました。

「そうだなぁ。なんでだろうなー。ま、気にすんな。楽しいこと考えようや。何か所かオレが教えたスポット行ってみたんだろ? よかった点・悪かった点あったらリリスと兄貴に教えといてやれ。まだどこの観光スポットも開発途中だからさ」

「……どこも彼女は喜んでくれた」

「そっか。よかったなぁ」

 実に真っ当で健全なお付き合いでなによりです。

「……ただ毎回裏で魔物たちが」

「どいたの。邪魔はしないでしょ」

「……トラブルが起きないよう周囲で警戒するといって、変装して隠れてついてこようと」

「どうやって変装すんだよ」

 まず体の形状を変えないと無理ですね。

 リリス様がいい魔物を公共事業に雇用したことで、町中にも彼らの姿が見られるようになってきました。特に治安の悪い地区での抑止役に役立ってます。

 人の意識もだいぶ変わり、「魔物にもいいやつと悪いやつがいる」と理解度が進みましたが……これはやめたほうがいいでしょうね。

「……なんとかやめさせたが」

「長老格が二人きりのデートの邪魔をするなと諭してましたしね」

「魔物のほうが人間よりはるかにマトモじゃねーか。ところで彼女の弟君とも上手くやってんだろ?」

 うなずくサルガタナス様。

「……彼は純真で真面目な青年だ」

「ちょっと、ルガ兄さーん。それって僕が邪悪みたいじゃない?」

 違うのか?と総ツッコミが入りました。

「……とてもいい意志になると思う」

「ルガのことめちゃくちゃ尊敬してるもんな。彼女の身内と仲良くしとくのは大事なことだぞ」

 フルーレティ様が驚いたように、

「あ、オレ考えたことなかった」

「そりゃ、レティ兄さんは恩人じゃん。僕のとこは初めからいないし、関係ないけど」

「……ナキア兄さん、反対されたのか?」

 今の教授の様子からするにおかしいという質問ですね。

「いんや。センセーじゃなくて、外野がな。ちょーっと。当時センセーが所属してた反国王派の連中がオレの出生知って猛反対、殺そうとしてきただけ」

 しれっと暴露する次兄に弟たちが固まりましたよ。

「つかさぁマジで、オレ殺してどうすんのかね? 他の兄弟ならまだしも、オレは無価値じゃん。特に役立つとは思えねーんだけど。連中にしてみりゃ、どんなボンクラでも『王の子』ってことらしい。つってもオレもただ殺されんのはしゃくだもんで、だったら死と引き換えにローレル手に入れよっかなーとか考えたりー」

「どんどん弟君たちの顔色が悪化してますよ」

 マトモなほうであるサタナキア様もたいがいなんですよね。

「オレの二の舞やらかさねーよう、わざと言ってんの。オレみたいなことすんなよ?」

「ネビロスよりやべぇ」

「レティ兄さんよりヤバいね」

 どんぐりの背比べって知ってます?

「ま、ンなこと考えたからフラれて? きれーさっぱり忘れ去られまして? ものの見事に天罰食らったワケよオレは。ジャスミンちゃんとこの身内は弟君と年取った祖父母だけだっけか」

「両親は死んでるの?」

「離婚してそれぞれ再婚、別に家庭があります。今の家庭が大事なので、関わるつもりはなさそうですよ」

「安心しな。念のため、兄ちゃんが念書とっといてやったから。ほ~らこれ」

 ヒラッと書面出すサタナキア様。

 こういう手回しというか裏工作得意ですよね。

「いつの間に」

「……いや、いらな」

「保険として持っとけ。もしかしたら今さら親ヅラして出てくるかもしれねーし、あるいはたかりに来るかも。女王の兄で医者なら高給取りだって考えるやつも余の中にゃいるぞ」

「ん? ナキア兄貴、その口ぶりだと実例あんだな? でもそれってルガじゃなくて……」

「そ。アガな」

 ああ~と納得の声。

「超~ありそー」

「アガ兄さんってさぁ、どうしていつもそういう女性とばっかり付き合うんだろうね? 将来有名な芸術家になれる人材見抜けるくらいだから人を見る目はあるはずなのに、不思議だよ」

「金か地位かパトロンとしての利用価値狙いの女ばっかだよな」

「そーなんだよー。一体オレがどんだけ後始末苦労してると」

 ため息つくサタナキア様。

「……アガ兄さんにそれ話せば」

「無理。でぇっきらいなオレが裏で毎回上手く収めといたなんて知ってみ。プライド高いあいつのことだ、キレるぞ」

 でしょうね。

「だからさぁ! あいつこそ、さっさと結婚して腰落ち着けてほしーの。アイリスちゃんなんか最適じゃね? 言うことねーよ。あんなできた子、アガにゃもったいねぇくらいだ。さっさと首輪つけて尻にしいてやってよー」

 苦労が忍ばれます。

「お、お疲れナキア兄貴。えーと……オレらも手伝うぜ?」

「いや、いい。こーゆーのは兄がやるもんだ。バレた時にオレだけならまだしも、弟たちにまで迷惑かけてたなんて知ったら、あいつ立ち直れねぇぞ」

「サタナキア様には迷惑かけても平気でしょうからねぇ。しかし、アガリアレプトですがよりによって最悪手とっておられましたよ?」

 僕とサタナキア様は実は、アガリアレプト様がアイリスさんに契約結婚もちかけて大失敗したことを知っています。もちろん入手経路は秘密ですよ。

「知ってるよ。けどなぁ、悪手かどうかはまだ判断できねーんじゃね」

「とおっしゃいますと?」

「アガにとってあそこまでの失策って初めてだろ。人生初の大失敗といってもいい。でもあいつはバカじゃない。ミスしても、そこから最良の結果を導き出せるやつだ」

「…………」

 僕はゆっくりまばたきしました。

「仲が悪いのに、一番アガリアレプト様のこと理解してるのはサタナキア様ですよねぇ」

 うげぇとうめくサタナキア様。

「やめろよ。気色悪ぃ」

「えー、ナキア兄貴はいい兄貴だと思うぜ?」

「……面倒見がいいし」

「ねー」

 サタナキア様は照れたようにそっぽ向きました。

「で、ナキア兄さん。アガ兄さんの失敗って何?」

「そこはそっとしといてやれ。オレもルシファーも知らないふりしてんだ。それよりルガ、話戻すけどそのうちいっぺん彼女の祖父母んとこ挨拶行っといたほうがいいぞ」

 とたんにサルガタナス様の表情筋が強張りました。ほんのわずかですが。

「もう成人してるっつっても、大事なお孫さんとお付き合いさせてもらってるわけだしな。ましてオレらは出生が出生だ。心配かもしれねー。お前が結婚も視野に入れて付き合ってんなら、なおさら大事なことだぞ」

「……でも」

 ものすごく不安そうです。

「ま、あっちは悪感情抱いてねーのは確認済みだけど。孫娘が魔物がらみの仕事してても反対しない、理解ある夫婦だしな。つか、オレ先にその夫婦が住んでる施設行ってみたんだわ」

「手回し良すぎだろ、ナキア兄貴」

「いやさ、ちょうど食堂見習い時代の常連だったおばさまが入居してて。あそこ、介護を必要としない自立型高齢者向け賃貸なんだろ」

 バラの花を入居してる全員の女性に配って、ご婦人方にめちゃくちゃモテてましたね。下手に知り合いとはいえ一人だけ持っていくと相手が反感買うかもしれないと、近所づきあいまで考えた上での配達人ぶり。

 今やったら奥様がすねて大変なことになりますよ。

「穏やかで善良なほんわか老夫婦だったぞ。大丈夫、全然恐くない」

「……そうか」

「一応念のため、ホームに24時間365日対応緊急医療ホットライン整備したのルガの発案だって、それとなく耳に入るように仕向けたしな」

「ほんと裏工作が上手いよね」

 ネビロス様もですよ。

 サタナキア様はサルガタナス様の肩をぽんとたたいて、

「ま、すぐにって話じゃねー。頭の片隅にでも入れとけって話。さて、レティんとこはともあれ無事に辞められてよかったよな」

 フルーレティ様の後、長官職に就いたのはもう一人の副官でした。元々いずれ譲るつもりでその地位につけていたのですが。

 以前は高位の軍人で、実績もある人物。ただし実直で清廉な点が前王の悋気を買い、殺される前に他国へ亡命していたんです。

「性同一性障害で、手術で男性に変わったっていう経歴の持ち主だったっけ。他の国だったら色々言われてるだろうな」

「うちの国じゃ誰も気にしねーよなぁ。それにさ、ほんとにいい人なんだよ。実績もあるし。元は女性の体だったから女性の犯罪被害者に対して親身になってくれるって、人気高いんだ。そこらへんをクソ親父に妬まれたんだけどさ」

「レティが予定より早く辞めた時は、諸外国が『何の陰謀だ?! 作戦に違いない!』って慌ててたけど、家具職人になるって分かったら『あ、コイツやっぱ女王の兄だわ。アホだった』ってのに変わったぜ」

「え……ええー? うんまぁ、オレはアホだけど……?」

 服作りをしたいと権力ぶん投げたリリス様と、お嫁さんの傍にいたくて家具職人になると言い出したフルーレティ様。確かに兄妹です。

 まぁどっちも毒気抜かれて、危険人物リストから外されますよね。

「いいはずなのに、なんか釈然としねーなぁ……? あ、そういや次、メリー作らなきゃ」

「ベビーベッドに取りつける、音楽鳴ってクルクル回るやつ?」

「ああ。ベビーベッドはもう作ってある。だってさぁ、聞けよ。生まれてくるの娘だぞ娘! 超~かわいい!」

 拳握りしめて力説する親バカ。

「もう137回聞いた」

「スミレが予知で見たビジョン見せてくれてさ。マジかわいいの。スミレそっくりで、オレと同じ赤い髪でさぁ」

「……それも135回聞いた」

「ちょこちょこオレんとこ駆け寄って来て、『パパ』だぜ? もーかわいすぎて死にそう!」

「それも131回聞いたよ」

「いいよなあ、娘。ぜってー嫁にやらねぇ。はー、妻そっくりでオレの特徴も持った娘なんて最高」

「それも134回聞きました」

 全員耳タコです。

「なんだよ」

「リリス様を溺愛してる時点で、娘さんだったらそうなるだろうと予想はしてましたが。正直うっとうしいです」

「うるせぇ。お前らだって娘できたら同じになるぞ」

「んー、僕は僕そっくりな息子がいいかなぁ。二人でリリー守る鉄壁のディフェンス作ろ」

「今でも十分だろが。リリーちゃん倒れんぞ。やめろ」

 心労で胃がやられそうですね。

「つか、お前が中身子供なんだから、今も子育てしてるようなもんじゃねーか」

「ひどいなぁ。年っていえばナキア兄さんとこはどうなのさ」

「オレ? オレんとこは当分先だな」

 おや。

「ローレルは国家プロジェクトのために帰国しただろ。まだまだこれからって時に、産休育休で休むわけにはいかねー」

 仕事も考慮して将来設計を立てる。さすがサタナキア様は視点が大人です。

「あー。オレんとこはスミレは休んでも問題なかったもんな」

「そ。リリーちゃんも重要人物なんだから、そこらへんきちんと考えとけよ。ルガも、家庭持つってのはそういうことだ。きちんと将来のことを色んな角度から見て計画立てる必要がある。子供だって、生まれたらそれで終わりじゃねー。子育ては先が長いぞ。何十年と先を見据えて考えろ」

 淡々と言い聞かせるサタナキア様。

 なんだかんだでルキフグス様と似た、いい兄君ですよねぇ。

「オレたちはみんな、幼少期が不幸だった。だからこそ子供は愛情もって育てないとな」

 弟君たちは真剣にうなずきました。

 ……本当にいい兄ですよねぇ。

 ふいにサタナキア様がぐるっと僕の方を向きました。

「ルシファーはどうなんだ」

「え、僕ですか?」

 なんです、藪から棒に。

「うちのかわいいかわいい妹のことだから複雑だし、お前のことはすげームカつくんだけど、リリスには幸せになってほしいからな。お前んとこはどう考えてんだ」

「将来設計ですか?」

「リリスのアパレル事業は軌道に乗ってるし、デザイナーも増えた。リリスがしばらく産休育休とっても十分回るさ。国の経済基盤もしっかり固まったことだしな。育休中も、デザイン画だけなら出せるだろ、っつーかリリスがストレス発散で書き散らしそうだ。公務のほうは、今でもほとんどないわけで」

「ええ。権力放棄に伴い、ほぼなくしましたのでね」

 もう何の力もないのだと明白にするため、あえてなくしました。さすがに輝夜姫など他国の王族クラスが来た時は、接待に出ますが。

 僕はあごをしごいて、

「そうですねぇ……僕らも当分先の話でしょう」

「なんで?」

「少なくとも、選挙が終わり無事に政権交代が完了してからでないと。下手に今、跡継ぎがいたらどうなります? やっぱり我が子にと権力を取り戻そうとするかもしれないなんて邪推されかねません。完全に国家運営がリリス様の手を離れたと明確化するまでは無理ですよ」

「ああー」

 全員納得してうなずきました。

 ……もちろんこれは嘘ではありません。本当にそう思ってますよ。

 ただ、言えないもう一つの強力な理由があるだけです。

 リリス様はおっしゃってました。シナリオ通りなら、僕らの息子が極悪人になり、最後は殺されると。

 我が子がいずれ殺される運命と知っていて、何もしない親がいますか。たとえまだ生まれていなくても。

 こちらにはベルゼビュート王子と天才学者という味方がいるとはいえ、まだ有効な解決策は見つかってません。不安要素は依然多い。

 リリス様の憂いが取り除かれるまで、『悪役』を誕生させるわけにはいかないんですよ。

 僕は本心を隠し、ただのんびりした笑みを浮かべていました。

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