閑話 親友と恋人の秘密 前編 (レオンハルト視点)
時系列は、6話と7話間です。
保健室から寮に戻ってアルフォンスと別れてレオンハルトの自室に1人でいるところです。
分かりにくくてすみません。
俺には秘密の多い親友がいる。
初めて会ったのは学校入学前の6歳の年の秋頃だった。
隣国から来る途中、領土からの帰りに魔物の群れに襲われた父上と遭遇し、魔物の群れから救いそのまま一緒に来たのだと父上から紹介された。
そしてそいつは、隣国に嫁いだ父上の姉の夫であるセルドアート・ヴァン・ファラガット公爵からの紹介状を持っていた。
その時の紹介状に、平民のアルフォンスをシャンドリア公爵家の力で王立魔法学校に特待生として通わせてやってくれと書いてあったらしいとあとから知った。
同い年だったのもあり、当時は家族と比べても一緒にいることが多かった。初めから違和感はあったが、知れば知るほど疑問は大きくなっていった。
まず、国王の次に偉い公爵家の紹介状を持っている時点で普通ではないが、ほかにも異常なほどに強かったり、精霊の愛し子だったり、動きの優雅さが平民というより上級貴族並に洗練されていたり。
当時から『隣国の上級貴族の誰かの隠し子じゃないか』とか他にもいろいろ好き勝手に言われていた。
いろいろと普通じゃない所は、本人も隠す気はないらしく"精霊の愛し子お披露目"でも、平民だと言っておきながら、貴族の当主の方々相手に完璧な作法で挨拶していた。
アルが学校に行くためにこの国に来てから、学校が始まる七歳の年の春までは公爵家で一緒に過ごした。
その頃はまだ使用人とそのご主人様みたいな話し方ではあったが、結構すぐに打ち解けて仲良くなった。
ある日、貴族の生活にかなり慣れている様子だったアルにまだ子供だった俺は直接その疑問をぶつけてみた。
連日連日、結構しつこく。
そうやって聞くことが日課になってしまっていた冬のある日のことだ。
「なぁ、アルー。お前平民って言うの嘘だろ?本当は何者なんだよ。」
「平民ですよ、レオンハルト様………………………今は。」
アルはにこにこ笑って言った。
「今は?やっぱりなにかあるんじゃないか…誰にも言わないから教えてくれよ、人には言えないことなのか?」
「…そうですね、ではこうしましょう。…僕がレオに秘密を話せる時期が来たら話してあげるよ。」
なんとも上から目線の言い方ではあったがこの時はそれが逆に嬉しかった。
いや、俺はマゾじゃない!
初めて会った時から何度か『敬語はやめてくれ』とお願いしていたが何度頼んでも口調を変えなかったアルが、この時初めて、それまでのよそよそしい敬語を失くし話してくれた。
ようやく本当のアルと仲良くなれた気がしてとても嬉しかったのを覚えている。
それから、いろんなことがあった。
俺について王城に行った時にアリシアを紹介するとすぐに仲良くなるし、果ては婚約までしたり、そのせいでアルが平民じゃないというのが暗黙の了解のようになったり、それまで娘を溺愛してアルの事を非公式な場では目の敵にしていた国王が手のひらを返して『我が息子も同然なのだから、非公式の場ではお義父さんと呼べ』とか言い出したり。
あの時は、自分の耳を疑った。
アルは相変わらずニコニコしてたけど。
あの時のアルは少し怖かった…うん。
何をしたのか気になったのでアリシアと二人で問い詰めたが『ノーコメント♡』と言って教えてはくれなかった。
もうひとつ疑問に思うことがある。
アルはたまに丸1日居なくなって、その日1日何をしていたか聞いても教えてくれないことが多々あった。
記憶が無くなった日もそうだった。
アルから『明日1日いないからよろしく☆』と言われまたいつものかと思っていたら、その次の日。
当日の朝、真っ青な顔して出かけて行こうとするのを止めたが、結局止めきれずにそのまま見送ってしまった。
あの時の喧嘩してでも止めてれば良かったのだろうか。
止められていれば少しは違っていたのだろうか。
もしまたアルが1人でどこかに行こうとしたら今度は何がなんでもついて行こう。
そう決意を固めたところで寮の部屋に付いているスピーカーがなった。
『レオンハルト・フォン・シャンドリア様。アリシア・フォン・グランリーフ様よりお呼び出しです。』
『わかった。今から行くと伝えてくれ。』
『かしこまりました。』
わかる文になっているのかとっても心配…
あと、話の進む速度ががが…