二度目だからと上手く行くわけでもない
さて、人生をやり直して本当に以前より上手く行くのだろうか?
なるほど、一度目の人生の知識を活かせば容易いのかもしれない。
そして、私も場合も以前より良い環境を作る事に成功した自負はある。
「ほんと、環境は良いのよね」
ベッドの上で頭を働かせつつも、つい口にも零れてしまった。
先ずは何がどう改善したか頭の中で改めて整理してみよう。
一つ。表面上だけ仲良く、不仲だった両親の仲を取り持つ事に成功した。その副産物として正直あまり仲良くするつもりのなかった兄弟含め、家族仲も良好だ。
一つ。一度目は虐められていたのだけど、流石に虐められたくなくて反撃した。ただ、現実は思い通りになんていかなくて、何故か懐かれてしまった。そのおかげで今では実家のある街でも沢山友達が出来た。
一つ。一度目の人生では家を追い出され、学が無くて大変苦労したので沢山勉強した。若い頭はびっくりするほど吸収力も良くて、本当に沢山の知識を得る事が出来た。体も程よく鍛えて、苦労した長旅への準備も万端だ。
だけど、家族との仲が自分でも驚くほど改善してしまったせいで、追い出されるどころか嫁にやるのは嫌だなんて言われてしまった。更に、何故か分からないし興味もないのだけど私への求婚も滅茶苦茶多いらしい。私を虐めていた奴がこのあたりの筆頭貴族の三男で、そいつが筆頭候補だった時は流石に泣いて嫌がった。だから現在はすべて保留だけど、そんなに多いのならいつ結婚させられるか不安しかない。
「はぁ、ほんと上手くいかないなぁ」
ぶっちゃけよう。私はこの町を出たいのだ。
一度目で最後まで和解できなかったせいか、家族から親愛を向けられ続けると気味悪く感じてしまうのだ。
全然関係ないと知っているのに、よくあんな真似しておいて今更と思ってしまう。
それは今の友人達相手でもそうだ。
なのに、それを取り繕うために毎日良い人を演じる。
それが苦痛で苦痛でたまらない。だけど怖くて止められない。
何より、人の好意を素直に受け入れられない自分がとても汚いものに感じられて辛い。
だけど、本当に予想外過ぎたのだけど。私が王都に行きたいと言ったら両親だけでなく、兄弟からも全力で止められてしまっている。
確かに魔物が出る可能性がある道中は危険だろう。
ただ、一度目と違って可能な限り安全に配慮するし、それこそ一度目の経験を活かせばそれほど困難な旅路でもない。
なんだかんだ整備されている道を進むだけなのだし。
「第一、私冒険者なんてやってたのだけどなぁ」
追い出された地方貴族の娘の肩書なんて、王都では何の役にも立たなかった。
寧ろその所為で嫌な目にあった事も多いくらいだ。
追い出された以上しっかりと身分を証明する事も出来ず、汚れ作業すら請け負う冒険者ギルドでも最下層のギルド以外受け入れて貰えなかったし。
ただ、その中でも拾う人は居てくれるもので。優しくされた記憶がよみがえる。
以前はよりはっきりと思いだしたそれを、大切な宝物を思い出して心が温まる。
いつも冷え切り痛みすら感じて生きていただけに、この瞬間が一番心休まると言って過言はない。
だからこそ、この記憶が更にぼやけてしまう前に王都に行きたいのだ。
今度は仮に上手く王都に行けても、子爵令嬢の肩書が付きまとってしまうだろう。
それが、今は酷く煩わしい。
優しくしてくれた人達はきっと気にしないと確信が持てるのだけど、今の現状のように特に仲良くしたくない人達に群がられるのは嫌だ。
何せ、実の親や兄弟に必要以上に一緒に居られるのですらこんなにも苦痛なのだから。
「どうしてこうなってしまったのだろう」
本当に一刻も早く家を出たい。
必要以上に頑張るんじゃなかった。
いや、人生のやり直しなんて望むんじゃなかった。
「辛いよぉ」
今日もあまり眠れなさそうだ。
それが拍車を掛け、今では家から出るのですらあまり許可してもらえない。
このまま息苦しい家に縛られ続けるのかと思うとゾッとする。
それでも、勝手に抜け出しても追い出された前回と違い探されるのは目に見えている。
そうなると、この肩書が本当に邪魔だ。
知識も増えた今だからこそ、貴族のネットワークを使われてなお抜け出せるとは思えない。
本当にどうしてこうなってしまったのだろう。
連載用に練っていたのですが、短編の方が纏まりが良いのではとあえて短く纏めてみました。
少しでも楽しんで頂けたのでしたら幸いです。




