第6話 任務と貸馬車屋
どうも作者です。読んでくれている人はありがとうございます。読んでもらって面白かったら近くのお友達などにも勧めていただけると嬉しいです。
「では、お主の詳しい任務内容を教えよう…。土国にいる。選ばれし者と合流し、その者と共に他の国の者たちとも合流するのだ。全員と合流することができた時は、皆と共に戻ってくる。これが、お主のやる任務だ」
なぜ他の国の人達と合流する必要があるのか理解できなかった。ただ合流するだけならば自分じゃなくてもいいのではないんだろうか。
「心配せんでも、お主を選んだ理由はある」
「どんな理由なんですか?」
「理由はニつある。一つは、お主の人柄と剣の腕だ。お主の剣技は他の国を含めても五本の指に入る。その腕を見込んで、というのはお主にとっては嫌なのかもしれないがな。もう一つは神盤にお主が鍵だと、浮かび上がったからだ」
初耳だった。加護の力を授かったのはモラスから聞かされていたがその理由までは聞いていない。
「浮かび上がった理由とかは、わからないんですか?」
ツオスヴェルは苦い顔をすると話始めた。
「まことに恥ずかしい限りだが、この国の翻訳家は優秀な人材が少ないのだ。それでも一応は優秀な人間を翻訳作業に駆り出している」
「そう、だったんですか…。すみません失礼なことを」
「いや、いいのだ。全ては私の不徳のいたすところだからな」
「では、オラリアよ。任務地へ向かうのだ」
「わかりました。じゃあ、失礼します」
オラリアはその言葉と共に、部屋を後にした。
「とりあえずは、土の国に行かなきゃダメなんだよね?」
「じゃあ、歩いていくわけにも行かないから馬車を借りなきゃ」
(馬車代とかの話を一つもしてなかったけど、もしかして、あの王様って結構ケチなのかな?)
オラリアは心の中でだけツオスヴェルを[ケチ王様]と呼ぶことにした。
一方、ツオスヴェルは心の底から叫んでいた。(なんで馬車代のこと話さなかったんだ俺!)と。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「おや、お嬢ちゃんどうしたんだい?」
オラリアは、馬車屋が見つからずに落ち込んでいた。それを見かねたおばあちゃんが話しかけてきた。
「貸馬車屋が見つからないんです」
てっきり、知らないと言われるかと思っていたオラリアはこの言葉に対するおばあちゃんの返答は衝撃的だった。
「貸馬車屋?それなら近くにあるよ」
このおばあちゃんは今何と言った?"近くにある"と聞こえたと思うのだが、聞き間違えた可能性もあるので一応、聞いた。
「えっ?本当ですか?本当にこの近くに貸馬車屋があるんですか?」
その問いに対するおばあちゃんの答えは……。
「こんなことに嘘なんかつかんよ」
嘘ではないと言った。今度は聞き間違えていない。聞き間違える筈がない。
そう理解した瞬間、感激が声となり、行動となった。今の今までどこぞの燃え尽き症候群の少年のように座っていたのが、今は大地を踏みしめ、おばあちゃんの両肩に手を置き、キラキラとした瞳でおばあちゃんを見つめていた。
「どこですかっ!?どこにあるんですか!?」
あまりの喜びに自分を見失いかけたオラリアにおばあちゃんはやさしい声で喋りかけた
「連れていってあげるから落ち着きなさい」
やさしい声のまま、オラリアはおばあちゃんに諭された。
「やったぁ!ありがとうございます!」
おばあちゃんが諭した意味はなく、オラリアの瞳はキラキラと輝いたままだった。
「それじゃあ、ついておいで」
おばあちゃんは何を言っても無駄だと悟り、諭すことをやめ、貸馬車屋に連れていくことにした。
「はい!」
おばあちゃんについて少し歩くと馬の鳴き声が聞こえてきた。
「ほら、あそこだよ」
「ホントだ!おばあちゃんありがとうございます!」
おばあちゃんに礼を言うとオラリアは貸馬車屋に走っていった。
「おやおや、あんなに急がんでもいいのにねぇ」
おばあちゃんは呟きながら貸馬車屋に向かって歩いていた。
「すみませーん!馬車を貸してもらえませんかー!」
貸馬車屋に着き、店に入ったオラリアは
大声で店の人を呼ぶが反応はない。
「あれ?お休みかなぁ」
よく見ると店の中は薄暗く、人がいる気配もなかった。
「すみませーん!」
もう一度叫ぶが、返事はなかった。
「お休みかぁ。折角おばあちゃんに教えてもらって見つけたのになぁ」
ため息をつきながら外に出るとそこには、ここまで案内してもらったおばあちゃんがいた。
「店のもんはいなかったのかい?」
「はい…。お休みみたいです」
オラリアが素直にそう言うと、おばあちゃんはゲラゲラと笑い始めた。
「あっはっはっは、そりゃそうさね!ここの店には一人しか働いてないからねぇ」
「えっ!?それってどういう……」
「私がその一人だよ」
オラリアは呆気にとられていた。目の前にいるこのおばあちゃんが貸馬車屋の店主だったなど夢にも思わなかった。
「えぇ!?おばあちゃんがこのお店の人だったの!?」
「そうだって言っているだろう?」
「そんなことよりも、お嬢ちゃんは馬車が必要なんだろう?」
目の前の老婆が店主だったということに驚いて、あたふたしていたオラリアは老婆の一言によって、本来の目的を思い出した。
「あっ、そうだった。忘れてた」
「土の国までいく用事があるんだけど、馬車がなくて困ってたの」
「土の国かい?そりゃまた遠いねぇ」
老婆は店のカウンターに立つと何かをし始めた。
「土の国までなら銀貨五枚ってところかねぇ」
「銀貨五枚かぁ」
そう言ってオラリアはお金の入った袋を覗き込む。
袋の中に入っていたのは、金貨三枚と銀貨八枚、銅貨五枚だった。
「じゃあ、はい。銀貨五枚……」
「ちょっ、ちょっと待ってください!!」
最後までご覧いただき誠にありがとうございます。これからもゆっくりと自己満足小説を書いて行きますので、どうかよろしくお願いします。