第2話 加護の力と訓練
「さて、オラリア=フェルツァよ、お前をここへ呼んだ理由は知っておるか?」
先に切り出したのは、この国の王であるツオスヴェルだった。
「あ、はい、手紙に書いてあるので少しは知っていますが、所々、大切なところが抜けていたので、全ては知りません」
オラリアはツオスヴェルの質問に対し、失礼の無いよう、細心の注意をはらって答えた。
「では、具体的な内容を教えよう、モラスはいるか?」
ツオスヴェルが呼ぶと、それまでは姿が見えなかったモラスと呼ばれた女性が現れた。
「はい、陛下」
ツオスヴェルの傍らまで来ると、モラスは恭しく頭を下げた。
「詳しい説明をそこの者にしてやれ」
「はい、陛下」
ツオスヴェルの命令に対し、呼ばれた時と同じ言葉を返し、モラスはツオスヴェルからオラリアに視線をずらした。
「では、説明させて頂きます」
モラスはオラリアの方を向くなり話しを始めた…
「お、お願いします」
「まず、あなたがここに呼ばれたのは、水を司る神ウィドラによって選ばれたからです」
「次に、あなたはこれから他の国にいる選ばれし者達、いわゆる神の子と呼ばれる人達と戦うことになるでしょう……」
モラスは一瞬、言葉を詰まらせたが、すぐにまた説明を始めた。
「あなたが戦うことを嫌っているのは知っています。なので、私や陛下が無理強いすることはできません。しかし、やってもらえるのであれば、それに見合うだけの報酬を与えます」
1拍間をおいて、モラスは再び話始める。
「そして最後に、あなたがもし、この話に承諾するなら、あなたはその時からこの国の軍人になります。これで説明は終わりですが、何か質問はありますか?」
モラスの問いにオラリアは「はい」と答えた。
「なんでしょうか?」
「この国の軍人になるって言ってましたけど私、剣はともかく弓は全然使えませんよ?」
モラスは「あぁ、その事なら」と言い、質問に答えてくれた。
「弓兵は十分いるので、剣だけでも構いません」
モラスはそう答えると、何かを思い出したようにハッとし、また話し始めた。
「言い忘れていましたが、あなたはウィドラの加護を受けています。しかし、石盤に書かれている加護の力は解読が難しく、ひとつしか分かっていません。その分かっている力というのは、剣を強化することです」
「剣を、強化?」
「はい、力の内容までは分かりませんが、恐らく文字通りのことだと推測されます」
「そうは、言っても」と意見したかったがオラリアが声を出す前に、モラスが話し始めた。
「まぁ、加護については、実際に使って見るのが早いでしょう」
そう言って、モラスは兵士を呼び、オラリアを訓練所に連れていくよう指示していた。
「では、オラリア殿、ついてきてください」
オラリアは促されるまま、連れていかれた。
「本当にこれで、良かったのでしょうか」
モラスはオラリアが連れていかれるのを無言で見届け、扉が閉まると同時に口を開いた。
「あぁ、水の神盤がそう指し示したのだ、問題はない」
ツオスヴェルの悲しみに満ちた声でそう答えた……。
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「オラリア殿、ここが訓練所になります」
兵士はオラリアの方を向き、綺麗な姿勢のまま話していた。
「は、はぁ…。ところで、私はここで何をすればいいんでしょうか」
オラリアは何の説明も聞かされぬまま、連れてこられたので何をするために、ここに来たのかわからなかった。
「申し訳ない、では簡単に説明をさせて頂きます」
「まず、この訓練所に来たのは、ある設備があるからです。その設備というのは、すぐそこにある剣技訓練人形です」
「剣技訓練人形?」
「はい、この剣技訓練人形は本来ならば文字通り、剣技の訓練を行う物なのですが、今回オラリア殿にやって頂くのは、加護の力を試すことです」
この兵士は簡単に言ってくれるが、どうすれば加護の力を使えるかなど、オラリアにはわからない。
「力を試すって一体どうすれば……」
オラリアが、不安そうにぶつぶつと呟いていた。
「オラリア殿?」
兵士がオラリアに呼び掛けたが、オラリアはそれに気づかなかった。
兵士は困り果てた顔でしばらくどうすればいいかを考えていた………。