DEATH and BIRTH
ここは普通列車、田舎の列車とだけあって車両はワンマン。私はいつも通り病院に出勤していた。いつも通りの朝。私は携帯端末を見ながら今日の予定をチェックしていた。すると、隣の女性が急にうめき声を上げ始めた。
隣の女性は優先席に座っていて、お腹が膨れている。妊婦とみて間違いないだろう。しかも出産間近のレベルだ。私は産婦人科医なので、このくらいの見立てはついた。
私はその女性に「どうしましたか?」と尋ねると、
「さっきから陣痛がひどくて…。」
苦しそうな顔をしてそう答えた。
(間違いない)
出産の兆候だ。
この路線は駅と駅の間隔が長い。次の駅まであと五十分はかかる。その駅で降りて、自分の勤める病院までは徒歩4分ほど。しかし、この状態ではとても歩けないだろう。
私は自分が産婦人科医であることを女性に伝え、とりあえず処置に必要なことを聞き出した。それから、すぐに私は自分の勤める病院へ連絡。列車が到着したら、すぐに車に乗って患者を病院まで運べるように指示しておいた。
それから、私は忙しくなった。運転手に話をつけて、いつも持ち歩いているブランケットを彼女の座席に敷いて、乗客の中から顔見知りの看護婦を見つけると、処置の手伝いをお願いした。
陣痛の間隔はだんだん短くなっている。無事に出産できるといいが…。
あと駅まで十分というところで、状態が変化した。あと少しで生まれそうだ。手は尽くした。逆子ではなかったので、とりあえずこのまま出産できたらちょうどいいだろう。私は万全の状態を保ったまま、いつでも子供を受け止めれるよう身構えた。そのとき、列車が急停止した。
その拍子に、お腹にいた赤ちゃんが出てきた。私は受け止め、すぐに赤ちゃんに異常があるか確認したが、どこも異常なし。よかった。
しかし、なんで電車は急停止したのだろうか。私は不思議に思いながら赤ちゃんを知り合いの看護婦に預け、前の運転手に確認しに行った。
運転手は顔が真っ青で、ガタガタ震えていた。私がなんで急停止したか聞くと、運転手は
「さっき…さっき、車が急に踏切を渡ってきて、そのまま…そのままぶつかって…。」
私はその言葉を聞くと、その車の中にいる人が無事かどうか、急いで電車の戸をこじ開けて出て行った。すると、そこには…。
私の呼んだ、若手の産婦人科医が病院の車の中で息絶えていた。私はその場でひしゃげるように崩れ落ちた。
電車からは、赤ちゃんの泣き声が盛大に響いていた。




