蚊帳の外
トイレの前には多くの人が集まっていた。
「もう止めろ。いいから教室に戻れ!!!」
先生の怒鳴り声がした。トイレまであと2クラス分の距離はあったが、ハッキリと聞こえてきた。
「なんだなんだ?ケンカか?」
その声に気付いた生徒達が走ってトイレへと向かっている。
「なんか2年の後輩の子がうちのクラスの男子を殴ったらしいよ。」
「誰に?てか、2年の後輩の子がなんでうちらの階のトイレにいるの?」
「そんなの知らないよ~。」
女子がひそひそと話している。そんなことには気にせずにトイレへと向かっていた。
「陣先輩ー!!」
人ごみをかき分けて走ってくるやつがいた。誰だろうと目を凝らしていると、もう目の前に来ていた。
「どうしたんだよ平山。そんな走っておれの名前呼んで。」」
「はぁはぁ…。すいません…。ちょっと息切れして…。とにかく向こうに行きましょ。」
「おれトイレに行くから。ちょっと待って。」
「だめです。トイレは!!とにかく向こうに。」
「なんだよ。トイレに行きたいんだよ。」
「だからダメなんですよトイレは。わかりました。下のトイレに行きましょう。」
「なんかよくわからないけどな…まぁ下のでもいいよ。とにかくトイレに行ければさ。」
「ありがとうございます。さぁ、行きましょう。」
下の階はいつもと変わらない静けさがあった。上で起きていることは知らないようだ。何事もなくトイレにたどり着いた。
「なんで下の階じゃないとダメだったんだ?なんかおれとあの揉め事関係しているのか?」
平山は聞かれることは分かっていたはずなのに明らかに動揺した表情に変わった。
「まぁ…あるっちゃあるんですかね…。」
「あるっちゃあるって、なきゃ走って止めに来ないだろ普通。」
「そうなんですけど…直接は関係ないんですけどね。なんか気付いたら先輩の教室へと走っていました。」
そんな答えでは何も見えて来なかった。特に思い当たる節もなかった。疑問が心の中で渦巻く。陣はこの状況に苛立ちを隠せなくなってきた。
「あぁ、トイレに来てもなんもすっきりしねぇ。一体なんなんだと。見当もつかねぇよ。なぁ、平山ハッキリしろよ。」
「すいません!わかってます。先輩が言わなきゃ納得しないのは。」
「だったら言えよ。」
「…。わかりました。でも、これを聞いても何も行動起こさないで欲しいです。お願いします。」
「なんだよ。それ聞いたらなんだ?おれは怒るのか?」
「いや、わからないです。でも、これは白井にとっても先輩達にとっても何もこれ以上大きくしたくないんです。お願いします。」
「なんだ白井が関係してるのか。後輩がトイレで揉めてるってのは白井だったのか?」
「そうです。話ますよ。絶対に守ってくださいね。」
「わかった。」