淡々と降る雨
今日も雨。
どんよりとした日々が続き、校舎内を歩く生徒の足取りも重く、会話も弾んでいない。授業にも覇気がなく、心の中で吐くため息が聞こえてきそうである。
そんな中、おれは外を見ていた。授業をする先生の声も遠くから聞こえるほど外に見入っていた。
窓の外から聞こえるかすかな雨の音、淡々と雨の滴で揺れる葉達。その静かな風景の中を車が通り過ぎる。そんな繰り返しの風景を見ていただけだった。
「今日も雨だな。」
そう言って康太も一緒に窓の外を眺めた。授業が終わったというのに笑い声の一つも聞こえない。
「そうだな。」
「もうすぐ夏休みだな。陣はどうするんだよ。」
康太は窓を見るのを止めて、陣の方を見て聞いた。
「どうするって何が。」
「何がって、夏休みどっか行くとかさ、何をするとかさ。」
「あぁ…」
康太の質問に答える言葉は出てこなかった。心の中では色々なことを思ったが口には出せなかった。
「あぁってな…」
康太もそんな答え方が返ってくるような気がしていたのだろうか。何も答えないおれに対してどこか納得しているかのようだった。
「もう明後日から夏休みだぜ?夏休みっていったら、1年の中でも最大のイベントだ。しかも、そのイベントは自分自身でどんなイベントにするか好きなように考えていいんだぜ?それなのにおかしいだろ『あぁ…』ってのはさ。」
康太の声のトーンが1段階上がった。そんなこと言われたって…『あぁ…』と答えた意味を康太は知っているはずだ。おれだって答えれるなら答えたい。
「じゃあ、康太はどうするんだ?」
「おれ?おれは…」
康太もすぐ答えられかった。そのことも知っていた。お互いに知っているのに聞いてしまうのは何故だろう。
何故かもわかってるのにそれに当てはまる言葉など見つからない。言葉にできないことを説明などできない。だから、こうやって答えられない質問を聞きあっているのだろう。
「おれは…なんでおれなんだよ。おれが聞いた質問だろ?」
康太は怒っているのだろうか。そう聞きたくなるような表情と声。でも、怒っていないことはわかっている。この話の答えなど、どこにもないのだ。
「ごめん。ちょっとトイレ言ってくる。」
そういっておれは席を離れ、トイレへと向かった。