表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/13

情けないほど


 四月になって、事前に宮川さんの授業情報を手に入れていた俺は彼女に合わせて自分の講義を選んだ。

 この時間しか出れないですと店長に嘘をつき、留年ギリギリの単位と睨みあう。


 あれ、榎本も火曜と木曜の朝? また同じだね!


 嬉しそうに笑う彼女を見て、くだらない悩みが全部吹っ飛んだ。

 単位なんて上学年になって取り返せばいい、もしくは人一倍勉強して何とかすればいい。

 努力は厭わない。

 少しでも彼女の傍に居ることが出来るのなら。

 生真面目な性格、何事も手を抜かない懸命さ、人を喜ばせる愛想笑い、俺の話に大笑いしくれる単純さ。

 全てが愛おしくて、どうしようもなく彼女に惚れていると思った。



 好きだ。好きです。



 自覚すると堪らなかった。

 かなりの重症だと思う、自分でも。

 だけど、この恋が叶うことはない。


 可愛い顔してるね。と、初対面の九十%の人が言ってくる。

 彼女の嗜好とは真逆の顔つきに、低身長。

 恥ずかしい話、雑誌やネットで格好のいい男というものを研究してみたけど、いまいちよくわからなかった。

 それでも、少しでも彼女に気に入られたくて、顔の手入れや髪のセット、服のセンスなど、外見のチェックは怠らなかった。

 いつかきっと、宮川さんが俺を……

 そんな夢のまた夢を追いかけて。



 それが今、どうだろうこの状況。



 カチカチと小銭の擦れる音が耳に痛い。

 沈黙に耐えられなくて、もう何十回目かのお金の計算を始める。といっても、頭の中は真っ白で計算しているわけではない。

 何か行動しているというきっかけが欲しいのだ。


 思えばほんの十数分前、全てはあの男が現れてからだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ