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事情2


 大学からちょっと離れたコンビニが私のアルバイト先。

 火曜と木曜の午前中、田舎な上に近くにスーパーがあるため、客はほとんど来ない。

 就業中がすでに休憩みたいなのに、労働基準法かなにかで定められているため途中で十五分の休憩を取らないといけない。


「一人になる時間なんていらないのに」


 独り言を呟き、スマホに触れる。

[推し]と名前のついた画像フォルダの中には、今話題のイケメン俳優。百八十センチの長身に日々の筋トレで鍛えている美麗な身体、鼻筋の綺麗な端正な顔つき。

 もう何度も見たというのに飽きない、日々の癒し、目の保養。

 誰もいない休憩室でスマホの画面を凝視する私は、さぞ痛々しい女子大生だろう。

 これほど面食いなのに、どうして私は……


「宮川さん、休憩終わってますよ」


 声に振り向くと、半開きになっている休憩室のドアから私を見下ろしている榎本俊一と目があった。


「またアイドルの写真見てたんですか?」

「アイドルじゃなくて、今話題の若手俳優!」

「違いがわかんねぇ……」

「どっちもイケメンってこと!」

「どうでもいいけど、顔だけ見てるといつか変な男に騙されますよ」

「余計なお世話よ」

「それより、休憩時間過ぎてんで、そろそろ戻ってくださいね?」


 可愛い顔が厭らしく微笑み、再び扉が閉められた。

 足音が遠ざかったのを確認し、さっきまで榎本がいた場所に立つ。

 指を物差しにして彼の頭があった場所と自分の身長を照らし合わせると、その長さは人差し指一つ分、五センチから八センチの間くらい。

 私が百五十五だから、やはり百六十五もない。それに加えてあの童顔。

 女の子と比べても遜色ないほどに榎本は可愛い。

 私の理想とは真逆のタイプなのに……


「宮川さん!」


 名前を呼ばれ、慌ててスタッフルームを飛び出した。

 当然でしょ、だって嫌われたくないじゃない。

 好きな人の前では、いい女でいたい。


 そう、私は彼に……

 可愛顔立ちに低身長。

 イケメン好きが相手にするはずもない榎本俊一に、私は生れて初めての恋をしていた。



 週に二回、同じシフトに入っている榎本は私の偏差値では到底入れない有名国立大学の二年生だった。

 私が三年だから彼のほうが一つ年下。

 好みのタイプには擦りもしないのにいつの間にか、もっと話がしたいと思うようになり目で追っていた。

 彼の人懐っこい性格のおかげか、榎本と過ごす時間はとても楽しかった。


 言葉が尽きない。

 もっと、ずっと一緒にいたいって思う。


 そうして笑い合っているうちに好きになっていた。

 情熱的な恋というわけではないが、誰にも渡したくないという一端の独占欲はある。

 好きの種類は違うが、榎本も私を気にいってくれていると思う。私といる時の彼は終始笑顔だし、話しかける確率は榎本からのほうが圧倒的に多い。


 でも榎本の好きは友達、友情としての好き。


 断言できる、榎本の感情は恋ではない。

 だって……

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